「軸を持ちつつ変化を恐れない」時計の開発者からホバーバイク開発責任者へ転身した A.L.I.Technologies荒川康弘氏の決意

“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、はじめまして。for Startups, Inc.の弘中と申します。
私達が所属するfor Startups, Incでは累計120名以上のCXO支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。EVANGEは、私達がご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューにより、明らかにしていくメディアです。今回は、時計を開発する会社から転身し、未来の乗り物「ホバーバイク」の開発責任者として開発に携わっている荒川氏に話を聞きました。

荒川 康弘(Yasuhiro Arakawa)
東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻修了後、新卒でセイコーインスツルに入社。機械式時計の駆動体に関する設計に約12 年従事。その後、2018年8月よりA.L.I.Technologiesに入社。Speeder Technologies 本部本部長として、公道走行を想定したホバーバイクの研究開発に従事。

価値の高いモノを生み出すことを一番に考えたキャリア選択

-- A.L.I.Technologiesの事業内容について教えてください。

A.L.I.Technologiesは次世代のインフラを支える、エアーモビリティ社会の実現を目標に設立したスタートアップです。

具体的には、飛行機が飛んでいる領域と地上間の領域に新しいインフラを作ることを目ざしています。そのためのハードウェアや、それを支えるインフラやソフトウェアの開発事業を行っています。

領域としては、3つあります。

1つ目はドローンを社会・企業のニーズに合わせて開発・提供を行なっています。具体的には、鉄道インフラや発電設備の点検に使えるドローンの開発です。

ドローン事業をベースにエアーモビリティの実現に必要なコア技術を開発しています。

2つ目はコンピューティングパワープール事業です。

例えば、レンダリングやディープラーニングなどを行う際、コンピュータで大量の計算処理が必要となりますが、A.L.I.Technologiesではクラウドを活用して高速で計算処理を行えるプラットフォームを展開しています。

コンピューティングパワープールの技術は、将来エアーモビリティ社会が発展した時に必要となる技術です。車が空を飛ぶようになったときに、空に標識や信号などを置くことはできません。そこで、仮想的な道路をARのような形で描きます。

仮想的な道路を描く際、コンピュータで大量の計算処理が必要となります。ここにコンピューティングパワープールの処理力を利用します。

最後にホバーバイク事業です。空を飛ぶことは長い人類の歴史からするとかなり最近で、まだまだ日常生活に溶け込んでいるものではありません。だから空を飛ぶ、あるいは浮かんでいる状態をホバーバイクという形で接してもらい、エアーモビリティを身近な物にしていきたいと考えています。

ホバーバイクは地上から少し浮いた状態で移動できるため、砂漠や沼地、地雷原といった難移動帯で使うことができます。また、インフラの整ってない地域で暮らす人々の、新しい移動手段になると期待しています。

-- ありがとうございます。荒川さんのこれまでのご経歴を遡らせてください。東大の機械工学科を卒業し、新卒としてセイコーインスツルに入社された動機は何でしたか?

私が大学に入学したのは2000年。中国が改革開放路線を邁進し、急成長している時期でした。その中で私は、日本がこれから生き残るためには高付加価値なモノで勝負する必要があり、特に微細なモノ、小型化・微細化の分野で頑張っていけば世界をリードしていけると考えていました。

就職活動では大手電機メーカーなども見ましたが、セイコーインスツルがもつ超小型の機械を作る技術があれば、世界をリードしていけるデバイスを生み出せるのではないかという期待があり、入社を決めました。

-- セイコーインスツルに入りどのような経験をされましたか?

入社して時計設計部に配属になり、機械式時計のムーブメントとよばれる動く部分(車で言う所のエンジン)の設計と開発に携りました。最初は先輩に従って細部を設計することから始め、最後は何もない白紙の状態から新製品を作りあげる一連の流れを、全て責任を持って進める経験を積むことができました。

設計以外でもマーケティングから製造、営業、アフターセールスまで責任者として支援することができました。設計という仕事を軸にしながら色々な部門と密に連携して仕事することができた点も非常に良い経験でした。

時計の開発者からホバーバイクの開発者へ転身

-- セイコーインスツルで12年働いていらっしゃいましたが、どのようなタイミングで転職を考えはじめましたか?

大量生産品の時計から中級・高級時計、最終的にはトップブランドであるグランドセイコーのムーブメント開発まで任せていただきました。特にグランドセイコーの開発では既存品からの派生ではなく、0ベースで製品を作り上げるという経験ができ、やれるところまでやりきったという感覚がありました。

最先端の技術を嗜好品という形で社会に提供できることに喜びを感じていた一方で、もっと社会課題に対して貢献できるものを提供したいという気持ちが出てきたため、転職活動をはじめました。

-- 転職活動されている時に複数社からオファーを頂いたとお聞きしました。その際、どんなところに注目して意思決定されましたか?

どれだけ先端的で面白い事業なのか、そしてどれだけ本気で製品化しようと思っているのかを見ました。選考に進んだ企業の中には、面白い技術を持っていたとしても、それを製品にする際にどのようにして世の中に広めていけるかという部分が不透明で、実現が厳しそうだなと感じる所もありました。

その中でA.L.I.Technologiesは実現したい先端的な世界、壮大なビジョンが明確にあり、それに対して必要なタスクも整理されていました。ここなら実現に向けて突き進んでいけそうだと感じました。

-- 私から見ると時計とホバーバイクは全く違うモノのように見えますが、技術として相関性はあるのですか?

自動車とホバーバイクほどの相関性はありませんが、時計とホバーバイクは扱うのが「機械」という意味で相関性がありました。

設計で重要となる技術は異なりますが、元となる考え方は同じです。例えば、現状を把握して課題を明確にして、開発のプロセスを実行していく、といったメタ的な部分は時計もホバーバイクも同じです。技術的な部分は、基礎を理解していれば勉強してキャッチアップするバイタリティである程度カバーすることが可能です。

私はA.L.I.Technologies入社当初からホバーバイクの開発プロジェクトに参加しました。当時は、年度内でホバーバイクを形にし、一般の方へ向けて公開するという目標がありました。そこへ向けて現状でハードウェアに何が必要か考えて、ひたすら設計・シミュレーション・製作・実験の繰り返しをしていました。

私自身、ホバーバイク開発に必要な空気力学の知識などは持っていなかったので、論文など読んでキャッチアップしながら取り組みました。

スタートアップで働くには、コミュニケーションが何より大切

-- 前職と比較して今、働き方はどのように変化しましたか?

A.L.I.Technologiesに入社してからは、特にコミュニケーションを意識して仕事をするようになりました。

セイコーインスツルは垂直統合型(※)の会社で、さらに入社時から大多数が同じ文化の中で育ってきて、共通の価値観や思想を持っていました。そのため、意識しなくともコミュニケーションがうまく成立していました。

一方で、A.L.I.Technologiesでは異なるバックグラウンドを持ったメンバーが集まっています。さらに、社外の方と仕事をすることも多いです。それゆえ、相手のことを考えて前提条件を鑑みて伝わるように意識しながらコミュニケーションを取るようになりました。

研究開発は一日誰とも話さず黙々と進めるイメージがあるかもしれませんが、現職では社内はもちろん、社外の方とのコミュニケーションも頻繁にあります。この点もスタートアップの特徴かもしれません。

※垂直統合型とは製品の開発から生産、販売にいたるまで上流から下流のプロセスをすべて一社で統合したビジネスモデルをいいます。

-- 荒川さんがA.L.I.Technologiesで成し遂げたいことはありますか?

私自身の直近のミッションはホバーバイクを一般の方々に広めていくことです。

長期的には「エアーモビリティだったら日本」と言われるところまで成し遂げたいです。

そのために重要となることは、日本の技術力を使って高付加価値なモノを作り続けることだと思います。エアーモビリティで言えば、インフラからその上で動くハードウェアに至るまで新しい技術を投入し、高付加価値なものを生み続けたいです。


変らない軸を持ちながら変わることを恐れない

-- 今までお仕事される中で大切にされてきた価値観、軸はありますか?

何事にも積極的にかつ丁寧にチャレンジすることです。

時計であれば、100年以上も開発されてきた歴史がある中で差別化するために、加工技術や製造技術の限界に挑みながらも、ブランドにとっての相応しさを保った新しい製品開発にチャレンジし続けてきました。

ホバーバイクは全く新しいモビリティであることから、理想的な形態を模索している段階です。選択肢が多数ある中で、有限のリソースを駆使して開発の方向性を見極めていくことは大きなチャレンジです。積極さと丁寧さのバランスが求められます。

チャレンジしながら、臆さずに一つ一つ丁寧に考え、未確定要素を一つ一つ潰しながら開発していくマインドはどんな分野でも通用すると思います。

-- スタートアップはどんな人にオススメですか?

軸は持っていながらも自分が変わることを恐れない人です。

自分自身が積み上げてきた軸の部分はしっかりと持ちながらも、新しい会社や状況において、「前職ではこうだった」という「べき論」を語るのではなく、最大限の成果を生み出すために何ができるか柔軟に考えることがスタートアップでは大切です。

もう一つ、コミュニケーションを取ることを厭わないこともスタートアップでは重要です。

大企業では環境が整っており、仕事の流れも確立されているので、細やかなコミュニケーションをそこまで重視しなくとも仕事は回っていきますが、スタートアップではそうはいきません。

私自身も小松会長に「コミュニケーションが足りない」と指摘を受けることがあり、絶賛改善中です(笑)。

-- 最後の質問ですが、どんな方とA.L.I.Technologiesで一緒に働きたいですか?

繰り返しになりますが自分の培ってきた技術に自信を持っている方です。A.L.I.Technologiesはバックグラウンドも様々で、得意とするスキルも異なるメンバーが集まっています。自分の得意な分野に対して他のメンバーに質問やアドバイスを求められた際、自信を持って応えられることが大事です。
そして、まだ世の中にないものをチームで試行錯誤しながら開発しているので、そういった部分を楽しみながら一緒にチャレンジして頂ける方とご一緒したいですね!

・・・

EVANGE - Director : Kanta Hironaka / Creative Director : Munechika Ishibashi / Assistant Director : Yoshiki Baba / Assistant Writer : Ryosuke Ono / Photographer : Jin Hayato

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EVANGEは、ニューエリートをスタートアップへ誘うメディアです。スタートアップの第一線で活躍されている方々の人生に迫り、「働き方の軸」を明らかにしていきます。

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