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「ネガティブをゼロにする仕事がしたい」投資銀行、PEを経てLITALICOのCFOを務める坂本祥二氏が語るCFO論

“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。for Startups, Incの弘中と申します。

私達が所属するfor Startups, Incでは累計120名以上のCXO支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。
EVANGEは、私達がご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。

坂本 祥二(Shoji Sakamoto)
京都大学総合人間学部卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社に入社し、東京支社及びニューヨーク本社にてM&Aアドバイザリー及び資金調達業務に従事。その後、カーライル・グループにてバイアウト投資業務を担当。投資案件の評価、買収の実行、投資後の企業価値向上施策の実行などに関わる。2015年3月、株式会社LITALICOに入社。同年10月、取締役に就任。2017年12月より、株式会社LITALICOライフ代表取締役を兼任。

障害のない世界を作る

-- 早速ですが、LITALICOの事業内容を教えていただけますか。

発達障害や精神障害をはじめとした働くことや学ぶことに困難さや障害を感じておられる方やご家族に対して、自分らしい人生を送っていくための様々なサービスを展開しています。

例えば、LITALICOワークスにて就労支援サービス、LITALICOジュニアにてお子さま一人ひとりに合わせた教育支援サービスなどを提供しています。

また、僕が立ち上げて、代表を勤めているLITALICOライフは教育分野や障害分野の専門性を活かして、そのひとりが本当に自分らしく生きていくための進路や就労等の相談に乗りながらライフプランを作成してします。また、ファイナンスの専門性を活かして、財務シミュレーションを実施し、ライフプラン実現のために、家計の見直しサポートや金融商品のご案内を行っています。

-- 坂本さんが取り組まれているお仕事について教えてください。

今やっていることは3つあります。1つ目はLITALICOのCFOとしてコーポレート領域で、経営企画、財務、人事、情報システムなどの管掌をしています。2つ目は先ほどご紹介した弊社が力を入れている新規事業LITALICOライフの責任者をやっています。最後がスタートアップへの投資で、Olive Unionという韓国発の補聴器のスタートアップやユニファという保育園向けサービスのスタートアップへの投資やその後の支援をしています。


-- 多岐にわたってご活躍されている背景を探るべく、坂本さんの過去を遡らせてください。大学ではどんなことをされていましたか?

大学時代は人生で一番勉強が好きだった時代です。専攻は哲学や社会学、人文科学で、実に様々なテーマを学びました。

たとえば、夢分析。毎日夢の記録を取るのですが、起きた直後だと原稿用紙2枚分も書けるんですよね。その記録を元に先生と分析し、自分が何に苦悩を抱えていて、何を欲しているかを検討します。

就活では先ほどの夢分析も含め、様々な手法で徹底的に自分を解剖したうえで、更に企業側も分析し、自分に1番合うと判断できる業界、職種、企業を選びました。職種や企業分析としても、1社だけじゃなくて何社も選考やインターンに行ってみて、この職種ってどういう人が活躍するのかなとか、こういう風に行った時に評価されるのかな、というのを検証していった感じです。

-- モルガン・スタンレーに入られた背景を教えてください。

まず業界と職種を選定しました。自己分析の結果、自分にとっては「自分を表現でき、思う存分やれる環境」「時間をかけて行う論理的分析能力が重要な職種」が適していると考え、一番その環境にマッチした外資系投資銀行の投資銀行業務に絞りました。

当時はリーマンショックの前で売り手市場だったこともありますが、当時投資銀行は1番ワイルドな感じで、突き抜けててもいい環境があったので、就職を決めました。

正しい評価軸で仕事をする喜び

-- そんなワイルドな環境、モルガン・スタンレーに入られていかがでしたか?

最初の1年間くらいは暗黒時代です。死ぬほど働いていましたが、仕事が全然できなかったです。「即戦力求む」みたいな感じだったので、当時の実力だと週に二日間は徹夜しないと無理でした。でもこれって僕が悪いんですよ。早い人とかは普通に帰ることができるのですが、エクセルの速度が人より4分の1とかだったのでしょうがないですよね。上司も厳しい方で「これを何日までに終わらせて、以上」みたいな感じでした。

1年経ったらチーム変更があって、2年目は外国人が多いテクノロジーチームに配属されました。そこは、人のいいところを見つけて任せて伸ばしてくれるチームでした。「この上司は神だな」と思いましたよ(笑) 私は、いくら頑張っても当時の新入社員が普通担当する業務はそこまで得意になりませんでしたが、当時の上司がより高度な仕事を任せてくれ、「これはこうやったらいいよ」ってHOWまで教えてくれました。そうすると、突然仕事ができるようになって、評価もされるようになり、いつの間にか仕事が大好きになっていました。

1年経った時には、もうすっかり乗せられていて、とにかく成長したい、もっとその上司やチームに貢献したい、と思うようになっていました。当時1年に1人ニューヨークに行けるプログラムがあり、そこを目指しますって宣言し、無事選出されてアメリカ行きました。

-- アメリカに行ってから変化はありましたか?

職務内容や使用する知識、スキルはそこまで変わらなかったのですが、体感としては全く別の仕事でした。それは、最終評価者である顧客が違っていたからです。当時属していたテクノロジーチームが担当していた企業のCEOやCFOが本当に優秀でした。既に成功者で、かつ博士号までもっているようなCEOやCFOが、その上で本気で地道に努力してるんですよ。日本の大企業だったら課長でも見ないようなエクセルの細かい前提まで自ら見て、圧倒的な当事者意識で、毎日フルスピードで意思決定をしていました。

僕がやっていることは日本と同じなんだけど評価されるポイントが全然違うので、使う頭や仕事の進め方は全く異なりました。資料はシャープで少なければ少ないほどいいし、会議も必要最低限。そして、企業価値向上のために重要なことを本質的に思考している。この経験から、「自分が正しいと思える土俵と評価軸で仕事をし続けよう」と思いました。それってすごく健全なことで気持ちいいことだって思いました。

-- そしてカーライルに転職されたんですね。

企業を買収し、数年かけて企業価値向上をしていくビジネスモデルに惹かれました。モルガン・スタンレーの経験も活かせつつ、今度は100%株主として投資先に関わることができます。だから、上司からの評価ではなく、会社を良くしたかどうか、という極めて鮮明な評価軸で評価されます。雑音がないビジネスモデルですし、リアルな企業経営の勉強にもなるなと思い入社しました。

ネガティブをゼロにする仕事がしたい

-- どういう経緯でLITALICOに出会ったんですか?

ビズリーチにたまたま登録したら、その直後にfor Startups,Inc. 代表の志水雄一郎さんから電話を頂きました。それまでにも何回かヘッドハンターの人たちに会ってきてたのですが、志水さんは本質的な顧客視点があると思いました。「坂本さん時間ないですよね、結論から言います。(行くべきポジションは)これとこれです。どうですか?」って数分で終わりました。

僕は当時、すごい忙しかったので、期待を超える顧客視点で接していただけたなと思いました。

最初に10社ほどリストを頂いたのですが、ちょっと話したらすぐに「LITALICO」ですねって言われて。当時はそこまでスタートアップに興味があったわけではなく、「ネガティブをゼロにしたい」という大学時代に抱いた感覚を思い出し、それでセットしてもらって最初に会ったのがLITALICOでした。当時の僕の視点からすると、ニーズにはすごいマッチしてました。

-- LITALICOに行った時の印象はどうでしたか?

もちろんビジョンには惹かれましたが、加えて実がある会社・経営者だなと思いました。カーライル時代は職業柄経営者と直接お仕事することが多く、経営者の裏表を嫌というほど見てきたので、逆面接のような感じでこちらが聞きたいことを2時間くらい聞きました。

この意思決定の時にどんな数字使いましたか?ビジョンを体現するためにどんな制度やってますか?それに矛盾する出来事最近何がありましたか?それをどういう風に対応しましたか?とかその時1番障害だったこと、自分の1番のミスはなんですか?など、根掘り葉掘り聞かせてもらいました。

今まで、頭が非常に良かったり一見バランスが取れている経営者でも、過去の意思決定に一貫性やリーダーとしての覚悟がなかったりすると、どこかで崩れていった様を見てきて、実際やった意思決定と行動が一貫性と覚悟を持って行われているかが重要だと思っていました。

もちろん今も当時も若くて未熟なところもありますが、一貫した素直さや合理性がある社長だなと思いました。この環境であれば、僕もビジョンを真っ直ぐに、楽しく、信念を曲げずに働けるなと思いました。

-- 金融から教育へとガラリと事業体は変わりましたが、LITALICOに来て働き方は変わりましたか?

新しく学んだ知識やスキルは非常に多いですが、働き方の本質的なところは変えていません。前職でも様々な業界の方と仕事をしていたので、その人のメンタルモデルにあったコミュニケーションをしていくのは当然必要と思っています。今の会社でも、人それぞれちがうので、この会社だからこう、というよりは、それぞれ持っている知識や背景や信じているものに合わせてコミュニケーションをしていくことを心がけます。

経営という視点でも同じです。基本とする哲学を全ての基軸にするマインドだったり、リターンのあるところに集中投資をしていく発想だったり、何か目標を設定して目標と課題のギャップを考えて、その課題を埋めるための仕組みを作るという発想だったり。
表層的なことに左右されすぎず、大事なことは本質的に変えない、ぶれないことが大切と考えています。

-- LITALICOに入社した時CFOとして任されていたミッションってありますか?

今はちゃんとありますが、入社した当時はなかったです。全部自分でこれやりたいとか、これやるべきだと主張して仕事を作っていました。本当に放置で、誰にも紹介されないし、座る場所もないしPCもないし、周りの社員からすると誰?みたいな感じでした(笑)。

よく分からなかったので、とにかく現状を理解しようと考え、1ヶ月半くらい拠点を回って各事業の業務を自分でもやってみたり、全部署の社員と飲みに行ったりしてました。

投資銀行、PEの経験から考えるCFOの在り方

-- 投資銀行に勤めている方に、CFOのキャリアに興味があるって方が増えてきています。どんな人がCFOにフィットすると思いますか?

多くの方が勘違いをされている点ですが、投資銀行で得られるスキルセットは、CFOとして求められるスキルセットの共通点は殆どないと思います。みんなファイナンスと言いますけどファイナンスにも山ほど種類がありますし、ファイナンス以外にも山ほど求められますので、スタートアップのフェーズにもよりますが、投資銀行での経験はほぼ活用できないと思います。

ただ、僕は投資銀行出身の方々には素晴らしいCFO候補者が沢山おられると思っています。自らに課す努力の基準値をとても高く設定している方が多いからです。

100点をつける時の100点の意味する絶対値、頑張りますって行った時の頑張るの基準が高い人が他業種と比較して多いと思います。スタートアップは、つらい環境でやり抜くことや自分で仕事を作り出していくこと、自分で学びながら業務を進めていくことが求められますので、自らに課す基準値が高いことは極めて重要です。ただ大手のファイナンスの一部をやるのと、スタートアップのCFOをやるのは全然違うので、1から学ぶことにはなります。

手前味噌ですけど投資銀行部門の方よりも、プライベートエクイティファンド(以下PE)の方が、CFOの業務との親和性が高く成功確率が高いと思います。自分がプロジェクトリーダーで弁護士、会計士、コンサルタントなどで構成されるチームを組成してその舵取りを行うのがPEです。今しているCFOの仕事と似ていて、指揮者として、いろんな専門家の強みを引き出し、統合していく仕事です。

あとは経営者と働くことに慣れてることも大きいと思います。PEは経営者の天才性・能動性をどう引き出していくのかを考えないといけない仕事です。

-- 坂本さんはPE時代に様々な経営者と働かれていらっしゃいますが、良い経営者の共通点を教えていただけますか?

点でみると表面的に不格好だが、線で見ると実は極めてバランスが良い人が多いと思います。長期的に企業価値を向上させ、ビジョンを達成していくという観点で社長を見ていくと、優秀な社長は、10戦中1勝しかしなくても、最後に圧倒的な勝利をおさめるためにはどうしたらいいかという本質的な成果志向をもっているんです。一般的なサラリーマン社会やプロセス重視の考え方だと10戦して9勝してる人を優秀だって評価しがちなんですよ。ただ本当に結果にこだわってくると不恰好になっていく。ミスすることを怖がってる人がミスをしないだけなんですよね。

アドバイザーだけやってると不恰好なことへの許容度が減っていくと思います。どうしても綺麗なことを評価しがちになってしまいます。

経営者はそもそも不恰好なんだという心持ちを持つと心穏やかになります。

スタートアップ以上に未来予測する必要がある教育

-- 話は戻りますが、LITALICOライフを立ち上げられた経緯はなんですか?

もちろんネガティブをゼロにしたいということが軸ですが、それだけでなくもっと複雑です。

一つの理由だけ挙げると、ビジネスとして更なる高みを目指すうえでやるべきだって思ったことがあります。CFOって機能的に捉えると色々あるんですけどファイナンスが重要な局面もあれば、エクゼキューションが大事な時もある。その時に1番リターンが高いところに自分を1つの道具として投下していくことが大事だと思います。

ベースの企業戦略や管理会計や人選などインフラ作りにはまだまだ課題はありますが、東証一部を経て、自分が最も貢献できる領域は何か、と考えたときに、マーケットサイズが大きく拡張性があり、かつうちのビジョンにまっすぐ向かっているような、次の10年の成長を牽引するような事業を創りたいと思いました。

-- LITALICOで、坂本さんが今後成し遂げていきたいと思うことはなんですか?

20年後の社会に寄与するような事業を創りたいです。
全ての生まれたばかりの子供は20年後くらいに就職するんですよ。20年後の社会ってどうなってるかって考えると必要な教育って今提供されている教育とは絶対に違うはずです。むしろスタートアップ投資以上に未来を予測する必要があるのが教育なんですよ。

でも全然見通しないですよね。じゃあ昔みたく、有名進学塾から進学校に入学したエリートたちが勝ち組かというと、彼らですらそのキャリアが適切だとは思ってないです。こういう時代においてどういう教育をしていくべきか、親も困っているし、教育業界の人も考える余裕がない。今は自分で考える力やプログラミング力が必要だっていうけど、ではその先どうしたら良いのか。

これが社会の課題だと思っていて 、皆が当たり前に、21世紀に合う教育が何なのか、特に自分の子供に合っている教育は何なのか、を考え、実行できるようにしていきたいです。

学びに困りごとのある発達障害児と特性を活かしている天才児って紙一重で、例えばグーグルの創業者やアマゾンの創業者などが受けたモンテッソーリ教育は、元々知的障害児向けの教育が始まりなんです。だから、障害に対しても、障害をどうなくすかというよりは、どのようにそのひとりの強みを見つけ、伸ばし、マッチングさせていくか、という視点で捉えています。誰もが、自分のちがいを見つけ、それをきたる未来の社会のニーズとマッチングさせられるようなシステムを作っていきたいです。

・・・

EVANGE - Director : Kanta Hironaka / Creative Director : Munechika Ishibashi / Assistant Director : Yoshiki Baba / Assistant Writer : Ryosuke Ono / Photographer : Jin Hayato

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