楽天で最年少役員候補だった星野貴之氏が、それまでのキャリアを捨てユアマイスターを起業するまで

2020-04-09

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前編・後編(次週公開予定)の二部構成でユアマイスター星野貴之CEOの人生にせまります。

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星野貴之(Takayuki Hoshino)
ユアマイスター株式会社代表取締役社長。楽天株式会社にて営業を担当し、全国1位の収益を創出。全社MVP、年間MVPを受賞。25歳にして九州全域の副責任者となり、26歳に社内の幹部育成プログラム1期生に選抜される。IRへ移動後、ECを中心とし決算・増資・投資家対応を担当。2016年3月MBAを取得後、2016年8月にユアマイスター株式会社を設立。

目次

  1. 楽天最年少幹部候補生だった星野CEOが経営するユアマイスターとは
  2. 楽天時代の原体験を元に産まれた事業アイデア
  3. ユアマイスター、事業選定の背景
  4. シード投資のレジェンド、インキュベイトファンド赤浦 徹General Partnerから投資を受けて
  5. スーパーマンに囲まれ育てられた楽天IR時代
  6. 最高な環境から外に出ようと思った契機
  7. 運命が変わる。クモの糸が降りてきたその時
  8. お世話になった楽天を去り、起業

楽天最年少幹部候補生だった星野CEOが経営するユアマイスターとは

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-- 星野さん、早速ですがユアマイスターの事業内容について教えていただけますか?

ユアマイスターは、物を綺麗にする、修理するなどの技術を持ったプロの職人を、お客様と繋げるサービスを展開しています。今後は、そこから派生してB to Bなど産業自体をITで変える会社にしていて、最終的にはサービス産業のIT化を促進するプラットフォームを作っていきます。

-- とても大きな野望をお持ちですね。どう攻めていくのでしょうか。

修理、クリーニングを家や車などあらゆる対象に行っていくことです。この業界はフランチャイズがトップシェアを持っています。そのフランチャイズビジネスをより発展させIT化しているような企業を目指していきます。

楽天時代の原体験を元に産まれた事業アイデア

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-- この事業アイデアはどの様にして生まれたのですか?

楽天時代、楽天市場で働いていて、現場のトップと経営サイドの両方でECをやっていた時の経験から生まれました。

ネット上で “物を買う時代” がここ20年くらいでできて、 “物を売る時代” が2014年くらいからできて、今や、メルカリが代表するような “物を売り買いする時代” です。次は、物を売った後の消費行動を考えた時、人は物を直したり綺麗にしたりするのではないかと思ったのです。

当時は、インターネット上でそのようなサービスを展開する会社が1つもありませんでした。日本も時代が追いつけば可能性があると直感しました。時代が追いついた時、新しい選択肢として “物を直す” が出てくる、と。

IT化を進めるという意味では、ただマッチングを加速させるだけでは産業自体は変わらないので、パートナーさんや職人さんの経営に携わってIT化を会社全体でサポートしていきます。それが本当のIT化であって本質的な部分だと思います。そのため、マッチングではなくITプラットフォーム化を目指してやっています。

-- マッチングだけでは産業自体は変わらないというのはどういうことですか?

楽天市場で、マッチング以外の部分にハンズオンで入っていき、産業自体を変えていった経験があるのでご紹介します。

例えば、ECを通じて売上が上がっていく中でヒト、モノ、カネの3つが発生していきます。昔はWEBページの作成やHTMLを書くことができる人があまりいませんでした。特に田舎だとそうした技術が分かる人がいないから、ITスキルのある若い人が田舎に帰ってきて再就職するんです。そして、ITスキルのある人や学習意欲のある人が会社のIT化を進めていき、読みやすいWEBページを作ったり、メールの文面を改善したりします。

そこで+α。楽天がお金の流れを変えていく。クレジットカードが伸びたり、ポイントの仕組みができたりする。物を売るだけが仕事ではなくて、表現方法を工夫するなど、皆が成長すればするほどプロフェッショナルなIT事業部が各社にできていき、企業のIT化が進んでいく。

EC化が進んでいくと全てパソコンとスマホのなかで経営が始まっていく。帳簿が全てエクセルやスプレッドシートになっていく。一人から始めてBIGになった会社もあるし、働き方がどんどんオンラインに変わっていっていた事例も見てきました。それを自分で体現しようと思いました。何より「雇用」を発生させている景色が目の前にありました。

-- 原体験があったわけですね。実際、いま世の中を変えている実感はありますか?

強く、実感します。個人事業主の方の生活が変わったとか、伸びる方は圧倒的に伸びていくので、その人の生活と会社の形態が変わることが目の前で発生している。楽天で見てきた景色と似ています。もっともっと大きな範囲で実現しないといけません。

ユアマイスター、事業選定の背景

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-- 2016年に起業されてから4年経ちますが、最初から同じ事業内容を考えていたのですか?

起業する前は違うビジネスモデルを考えていました。キャッシュバックのアフィリエイトモデルです。世の中では、Tポイントや楽天ポイントなど様々なポイントによるキャッシュバックの仕組みが生まれていました。

そこで、キャッシュバックのビジネスモデルを考えました。「ユニバーサルショッピングカート」と言って、色々なサイトも1つの買い物かごに統合されていくという考え方があります。ポイントだと様々なポイント経済圏で分かれていますが、キャッシュであれば統合できるかなと思っていました。例えば「自社を通してNIKEで商品を買ったら10%分の小切手が返ってきます」というビジネスがアメリカでとても伸びていました。その日本バージョンをやろうかなと思って考えていました。それともう1つ考えていたのが今のモデルです。

最初はキャッシュバックモデルをやろうとしていましたが、インキュベイトファンドの和田圭祐さんに相談した時に「もう1つのアイデアの方が良いと思うよ」とアドバイスいただき、今につながるユアマイスターのビジネスモデルを深掘りすることになりました。

シード投資のレジェンド、インキュベイトファンド赤浦 徹General Partnerから投資を受けて

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-- インキュベイトファンドでは色々な方とお会いしたのですか?

インキュベイトファンドGeneral Partnerの村田祐介さんにお会いしたら、「次は和田さんにも会ってよ」と言われ、次に「赤浦さんも会いたいって言っているから会ってよ」と色々な方をご紹介していただきました。

村田さんと和田さんと会った後に赤浦さんの番になったら急に出資いただくことが決まりました。赤浦さんもサービスECの市場に興味があったらしくて、すぐに意気投合しました。

-- インキュベイトファンドはハンズオン支援が有名ですが、赤浦さんとはどのような関わり方をしているのですか?

起業して3年半、週に1回必ず会って、アドバイスを受けたり、採用支援のイベントに呼んでいただいたり、様々なサポートをいただいています。もちろんファイナンスの紹介も赤浦さんが1番多いです。あとは起業家の悩みを1番聞いてくれますね。起業家を “できる気にさせてくれる” っていうのが1番大きいですね。

-- 双方お忙しい中、3年半も毎週必ず会い続けるのはとても大変ですよね。例えば、どのようなアドバイスをいただいたのですか?

「即断即決できる人は成功するから、君は絶対成功する人だと思う」というアドバイスはよく覚えています。出資の話をいただいて帰るときのエレベーターの前で言われました。

あとは「従業員に"働いていただいている"という思いを絶対に忘れるな」と言われたのも覚えています。

その他にも、電話で赤浦さんから唐突に「今まで何もできてなくてごめんなさい」と言われたこともありました。赤浦さんがいたからここまで来ることができたのに、と当時は思いました。でも今振り返れば、赤浦さんにはもっと私にアドバイスやサポートをしたい思いがあってそういう言葉になったのかなと思っています。

「君は1000億以上いくよ」と言ってくれます。自信になりますよね。実績に裏付けがあって何が根拠になるかわからないのですが、そういう事を言われると、本当にそういう可能性があるのかなって気になってきますよ。まずはその5倍の時価総額は目指したいです。

スーパーマンに囲まれ育てられた楽天IR時代

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-- 赤浦さんにそんな事を言っていただける星野さんですが、前職時代に恩師はいらっしゃったのですか?

楽天副社長の山田善久さんです。私を楽天市場からIRに引っ張っていただけた人です。私に財務やIRの知識がないところから、山田さんのチームの皆さんが全員で全て教えてくれました。時に優しく、時に厳しく。

知識がない中でも、私が組織の中で必要とされていることをやった時は、ちゃんと見てくれていて褒めてくれました。人をきちんと見てくれる方でした。そのチームで出会ったのが、弊社コーポレート担当役員の小森清孝です。いつか楽天IRの皆様のためにも、立派な経営者になって恩返しをしたいです。

やめる時も、起業の経緯を伝え、出資検討にも向き合ってくれました。「義理や恩を絶対に大切にしろ」とやめる時にも言ってくれたし、やめてからも「元気か?」とか「調子どう?」っていつも連絡をしてくれます。人との繋がりや恩というものをあらためて教えてもらいました。何もない自分にチャンスを与えてくれて、時にビジネスの難しさ、仕事の厳しさ、人間性の大事さなどを教えていただいた恩師です。弊社の経営アドバイザーの相木孝仁さんも山田さんからご紹介をいただきました。

-- 二十代中頃にして、最強のIR陣に囲まれていたのですね。

楽天副会長の穂坂雅之さんという、楽天カードや楽天銀行などの金融事業を伸ばした方と2日間だけ同行で回って、その時に最強のIRを見ました。「この価格でこの会社を買ってこれだけ営業利益が出てますけど、みなさんそう思っていなかったですよね。だから今回買った会社などもそうなりますよね」って。それで終わりなんですよ。最強の実績を元に、「これをやったんだから信じて」って最強にシンプルだと思います。自信がすごいと思いました。結果を持ってる人は本当に強いな、と思います。

最高な環境から外に出ようと思った契機

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-- そこまでレジェンド達に囲まれる圧倒的に成長できそうな環境にいたら、転職など考えないと思うのですが、どうして外を見始めたのですか?

穂坂さんと回ったあとにヨーロッパに行ったんですよ。三木谷さんとIRの上司、証券マンで。そこで中華を食べに行った時に「三木谷さんは人間ぽいな」と感じました。もちろん、伝説的経営者だけど天才じゃない。

興銀時代、孫さんの投資アドバイザーを担当していたのは三木谷さんなのですが、「孫さん俺よりすごくなっちゃったな、投資。」ってポロって言っていて、「三木谷さんでもそんな事思うんだ・・・」と思いました。彼は、興銀でナンバーワンになってハーバード大学経営大学院に行った後、31歳で辞めて起業して、20年間で今の規模まで楽天を育て上げています。

私がその時27歳ぐらいでした。私も25歳ぐらいからMBAに通っていて、4年後に役員になれるという話があったから、31歳には役員なっているかもしれない。

でも、「楽天の役員として20年間過ごして彼みたいになるか?」と考えると、絶対なれないと思いました。これだけ世間から多くの注目を浴びていて、大きいことやって、紆余曲折あって、テレビ局の買収に向けた行動、海外事業、競争環境、日本の未来を考えていくなど、成功だけでなく大変なこともあった経験が彼を強くしているんだなと思いました。

-- 経験が三木谷さんを変えた、と。星野さんから見て三木谷さんの他の人とは圧倒的に違うと思う点はどこですか?

「自分がやらないといけない」っていう責任感や、志の高さ、膨大な熱量を感じるシーンが多々ありました。中華料理を食べた後、買収されたイギリスの会社に足を運んだんです。そしたら三木谷さんは、その会社の人たちに、技術についてずっと質問してるんです。この“圧倒的な探究心”が三木谷さんのパワーの源泉であって、探究心に基づいた人と違う行動をとってきたからこそ、良い情報も、優秀な人も入ってくるのだと思います。

だから、三木谷さん以上になるには、三木谷さん以上の経験をするしかないと思いました。もっと言えば、三木谷さん以上の経験ができれば、三木谷さん以上になる可能性はあるなと思い、外を見るために転職媒体に登録しました。

-- そこで、弊社代表の志水雄一郎と接点を持ち、お話ししたのですね。その時の印象ももし良かったらお聞かせください。

志水さんと電話して、雰囲気が個性的だけど、嘘もつかないし、ニュートラルだから信じてみようと思ったんです。他のエージェントとはちょっと何かが違うな、と思いました。

それで最初、何社か回ったのですが、社長と話をした時に、なぜこの人の下につかないといけないのか、と考えたときに正直ピンと来なかったんです。

その後も何社か回っていったときに、ピンと来た会社がありました。とある上場企業で役員になるという話があったんです。素直にその時は「いいな」と思いました。そこでYahoo! JAPANの小澤隆生さんやビズリーチの南壮一郎さんと話す機会があり、相談した時に「楽天の役員やるのと一緒じゃん」と言われてしまい、そうだなって思ってしまいました。

志水さんにも、「三木谷さんと肩を並べられる起業家って、孫さんや柳井さんぐらいしかいませんが、そのような人はスタートアップにはなかなかいないと思います。自分がなるか、育てるしかないと思いますよ」と言われ、起業家を育てていくベンチャーキャピタリストはどうかと提案を受けてインキュベイトファンドの村田さんを紹介していただきました

村田さんは、山田善久さんと過去にパネルディスカッションをしていて、「山田さんと同じところに出るくらいすごい人だったら絶対に面白い!」と思って会いに行ったので、ご縁ですね。

運命が変わる。クモの糸が降りてきたその時

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-- 村田さんと会った時点では起業するつもりはなかったのですか?

起業しようとは、起業するまで思っていませんでした。そもそも出資を受けるとは思っていなかったです。シンプルにディスカッションをするのが面白かったんですよね。

ただ、最終的には赤浦さんから「1億出す」と言っていただけました。実はそのミーティングの、オフィスに入るドアの前で、頭の中に直感で、「運命が変わる」って啓示が降りてきたのが大きかったです。

その感覚がEXILEのHIROさんの『Bボーイサラリーマン』に出てきた「くもの糸が見えてきた、これが絶対逃してはいけないくもの糸だ」という表現と重なったんです。それでミーティング行ったら出資の提案を受けたので、これは自分の運命を変えるタイミングだと思いました。

2秒ぐらい走馬灯のように真剣に考えました。実力のある有名な人が「一緒にやりませんか?」と言ってくれている。私にないものを持っている人が支援してくれる。彼にないものを私が持っている。信頼して一緒に歩むことができれば、成功する確率が高い。

何より失うものは楽天でのキャリアだけであること。やってみようと思ったことがないことが、目の前に選択肢としてあって、これが今後またあるのか?と考えた時にないと思いました。だったらやるしか無いと腹を括りました。

そのミーティングで、赤浦さんからは「チームを作れ」と言われました。

「会社の形、姿、事業の形はいくらでも変わるけど、良いチームがあれば必ず成功する。お金の心配は一旦大丈夫だからチームを作れ」と言われました。今でも大切にしている言葉です。

-- 運命、ですね。それにしても、赤浦さんの名言が凄まじい。赤浦さんの言葉を受けて、星野さんはチームについてどう考えたのですか。

私は、自分が得意なもの、不得意なものについて、楽天時代に自己分析して分かっていました。そのため、自分の不得意な仕事を得意とする人とチームを組もうと考えました。

例えば楽天時代、マネジメントを100%やり切れたという自信がなく、苦手なタイプだったので、マネジメントができる人と組みたいと思いました。その時に、ユアマイスター現取締役の高山武佐士さんが楽天時代、私が誰にも認められてない中で信じて育ててくれたことを思い出しました。自分は自分みたいなタイプを育てられないなと考えていたのでバランスが良いと思いました。

赤浦さんとのミーティングの帰り道に、高山さんに「1億円出資いただけることになったので起業しようと思うのですが、一緒にやりませんか」ってチャットツールViberで誘いました。そしたら「いいよー」と返事がきたんです。何をやるかまだ言ってなかったんですけどね(笑)。

お世話になった楽天を去り、起業

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-- あまりインタビューで語られることも無いと思うのですが、役員候補だった星野さんは、辞める時大変じゃありませんでしたか。

楽天の決算が終わるまで波風立てちゃいけないと思ったので、5月の決算発表が終わった翌日に上司に「辞めようと思います」と言いました。その時たまたま山田さんが通って話を聞かれました。

上司はその後にとても怒られたらしいんですよ。「楽天市場から引き抜いて、役員として育てると決まっていたのに、辞められたら困る」と。

その後に私は山田さんと話した際に、山田さんからは「俺もお世話になった興銀を辞めたから。気持ちはわかる」と言っていただきました。私は申し訳なさすぎて泣いていました。興銀を辞めることができるなら、自分はすんなり辞められると思ってしまっていましたからです。

山田さんは(今は楽天モバイルを管轄されてますが)当時はCFOだったので、「楽天から出資するよ」という話もその時はしていただきました。

しかし、山田さん経由で三木谷さんに話をしたら「お前らで解決しろ」って言われたらしく。山田さんからは、「星野、自分で決めろ」と言っていただきました。それで、私はゼロからやる事を選択した。「じゃあちゃんと報告しに来いよ」と言っていただきました。今でも、私にとって山田さんは尊敬する方です。いつか「よく頑張ったな。辞めてよかったな」と言っていただくようなレベルまでいきたいです。

・・・

後編の記事を読む。

EVANGE - Director : Kanta Hironaka / Creative Director : Munechika Ishibashi / Assistant Director : Yoshiki Baba / Assistant Writer : Ryosuke Ono, Ryohei Watanabe / PR : Hitomi Tomoyuki / Photographer : Jin Hayato

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