成功の足がかりは「できそう」という感覚。ペライチCFO 藤本 旬 氏の未来を拓くための意思決定方法に迫る。

2022-06-08

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*2024年9月30日時点

世界の主要先進国において中小企業は企業全体の99%を占めており、近年は中小企業のM&Aも加速するなど、企業の付加価値が上がる動きも見らます。一方で、日本では各産業の企業全体における零細企業の割合が高く、海外の中小企業よりも生産性が低い状態にあります。そこで、国内全体の労働生産性を改善して国際競争力を上げるためにも、中小企業の付加価値を上げる対策が必要不可欠だと考えられています。

このような課題に対して「世界で一番カンタンなホームページ作成サービス」を通じて、中小企業のマーケティングをサポートしている株式会社ペライチ。同社のCFOとして活躍する藤本 旬(Jun Fujimoto)氏のキャリア形成の軸と過去に迫ります。

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藤本 旬(Jun Fujimoto)
カリフォルニア州立ポリテクニック大学ポモナ校ビジネス学部卒業後、2007年にみずほ証券に新卒入社してM&A関連業務や新光証券会社との合併関連業務、財務企画業務に従事。その後、米国みずほ証券に配属され、経営企画業務に従事。帰国後は、Equity Capital Marketsにて資金調達関連業務に従事。その後、EY新日本有限責任監査法人にて金融機関を中心に経営戦略、財務戦略のコンサルティング業務に従事、PwCコンサルティング合同会社では国内外のPEファンドを中心にデューデリジェンス、PMI等のコンサルティング業務に従事して、2022年1月より株式会社ペライチにCFOとして参画。

目次

  1. ペライチの事業内容と藤本氏の役割
  2. 新卒1社目にみずほ証券を選んだ理由とその後のキャリア
  3. 積極性を育んだアメリカ留学
  4. チャンスは「きっかけ」から手繰り寄せるもの
  5. スタートアップキャリアに踏み出したきっかけ
  6. 手にした未来とこれから目指す未来

ペライチの事業内容と藤本氏の役割

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本日はよろしくお願いいたします。まずは、ペライチの事業内容と藤本さんの役割について教えていただけますか?

ペライチは「 テクノロジーをすべての人が使える世界に 」をビジョンに掲げ、日本の中小企業や個人事業主の方が、もっと便利かつ簡単に自社のマーケティングができるようホームページ作成や決済ができるCMS(*1)を提供しています。

具体的には、ホームページ制作サービス「ペライチ」を提供しており、簡単にホームページがつくれるだけでなく、オンライン決済や予約システム、メルマガ配信やアクセス解析などの機能もサポートしています。

*1 Contents Management Systemの略称で、web制作に必要な専門的な知識が無くても、webサイトやコンテンツを構築・管理・更新できるシステムのこと。

私はその中で、CFOとしてコーポレート機能全般を管掌しています。経営管理はもちろんのこと、月次決算、労務管理、細かいところで言うとオフィスの備品管理に至るまで、幅広く業務を担っています。スタートアップらしく、大きな裁量を持ちながら、振り幅の大きな仕事に取り組むことができています。

新卒1社目にみずほ証券を選んだ理由とその後のキャリア

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現職で幅広い業務に関わっていますが、今に至るまでの藤本さんのご経歴について聞かせてください。

海外の大学を卒業後、日本で就職活動をして新卒でみずほ証券株式会社(以下、みずほ証券)に入社しました。約12年勤めたみずほ証券で、M&Aアドバイザリーから経営企画、財務企画などを経験した後、EY新日本有限責任監査法人、PwCコンサルティング合同会社とコンサルティング会社を2社経験しています。

意外にも国内でキャリアをスタートさせたのですね。海外で働くという選択肢はなかったのでしょうか。

当時は日本のビジネスマナーを学んでから海外に行っても遅くないのではないかと考えていました。アメリカで働くとなると、OPT(*2)のような最長1年のビザは発給されますが、その後就労ビザの申請が必ず通るわけではなく、不安定な労働環境になってしまう可能性があります。だから、就職活動では日本の企業への入社を前提に日系大手企業を受けていました。

*2 Optional Practical Trainingの略称で、学生ビザで就学している学生が専攻した分野と関連のある職種で企業研修を行うもの。一般に、学生ビザではオフキャンパスで働くことは許可されないが、条件付きで就労の申請が可能となり許可が降りれば最長1年間のオフキャンパスでの就労が可能になる。

多くの企業を見ていく中で、最終的に証券会社を選択されたのはなぜでしょうか。

漠然と将来的には経営に携わりたいと考えていたこともあり、それであればお金の流れを知っておくことが重要と考え、証券会社を選択しました。

実際に入社されてみていかがでしたか?

見た目の華やかさとは違い、地道に取り組まないといけない仕事が多く、「働くのは大変だな。」と感じたことを記憶しています。また、当時の上司のおかげもあり、電話応対やランチ、会食会場の選定など、まさに社会人としての基礎を学ぶことができました。

みずほ証券時代には、アメリカへの現地赴任も経験されたと伺いました。どのようにそのチャンスを手にしたのでしょうか。

当初は社費留学制度に応募していました。2回応募してどちらも落選してしまいまして...。そのような中、現地に行くなら、大学で勉強するよりもビジネスで揉まれたほうが勉強になるのではないかと考えるようになり、上司にその思いを伝えたところ、海外赴任のチケットを手にすることができました。

結果、アメリカには5年ほど赴任し、現地のコーポレートプラニングを日本での業務と同じように担当していました。

帰国後は、エクイティキャピタルのキャリアを積まれていますが、元々希望されていたのでしょうか。

はい。アメリカ駐在時に様々な上司の方に、自分のやりたいことについて相談に乗ってもらっていました。具体的には、エクイティキャピタル・マーケットやエクイティのトレーダーをやりたいという話などをしていました。

当時は、経験が不足していたためトレーダーにはなれなかったのですが、エクイティキャピタル・マーケットで株の調達やIPO提案を担当させてもらえることになりました。

アメリカへの赴任も、帰国後のミッションアサインについても、自分のやりたいことを積極的に発信する姿が印象的ですね。

そうですね、学生時代のアメリカへの留学生活で培った図々しさが功を奏しているのかもしれないですね(笑)。

積極性を育んだアメリカ留学

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ぜひ、アメリカ留学時代についてお聞かせいただきたいです。どのような経緯でアメリカの大学へ留学したのでしょうか。

高校時代に遡りますが、実は当初は医者を目指していました。小さい頃に祖父を事故で亡くした経験から、人の命を助ける仕事をしたいと考えるようになりました。しかし、残念ながら理系科目(特に物理)が苦手で、医者の夢を諦めてしまったという経緯があります。

そこから「自分がやりたいこと」について考え始めたのですが、家族や親戚に自営業が多く、ビジネスが身近な存在ということもあり、私もビジネスを学びたいと思うようになりました。

色々見る中で、次第にマーケティングに強い関心を持つようになりました。
そこで、海外に行ったほうが最先端のマーケティングを学べる環境があるのではないかと考え、海外の大学への進学を決めたのです。

行動力が凄いですね...! とはいえ、初めての海外生活でかなり苦労されたのではないでしょうか。

そうですね、私も高校まではどちらかというと人見知りでしたし、英語も話せないところからのスタートだったので苦労しましたね。

例えば、現地のマクドナルドで注文するのでさえ緊張していて、商品を持ち帰りするのに普通は「to go」と言うんですけど、「take off」なんて言ってしまうこともありました。それでも、思いのほか言いたいことが通じたので「これは意外とサバイブできるな」と感じ、生活の中で次第に緊張もほぐれて、現地でのコミュニケーションが段々と積極的になっていきました。

現地の方々とのコミュニケーションが印象的だったのですね。

はい、特に現地の学生の積極的な姿勢に感化されましたね。例えば大学のオフィスアワーで、必死に教授に質問をしに行くようになりました。それに、授業では360度評価が取り入れられていて、グループ内のディスカッションでもしっかり発言しないと成績がつかないので、自分の言いたいことは言わなければならない環境でした。

他にも、私は寮に暮らしていたのですが、2人部屋のルームメイトが毎日パーティーをするような人で、毎晩、音楽やお酒で騒いでいて、一度本気で怒ったこともあります(笑)。

嫌でも積極的にならざるを得ない日々のコミュニケーションが、私の積極性を育んでくれたように思います。

チャンスは「きっかけ」から手繰り寄せるもの

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これまでのキャリアでは、アメリカ時代に培った積極的な姿勢で自らチャンスを手繰り寄せているように思いますが、それぞれの意思決定のタイミングで意識されてきたのはどのようなものでしょうか。

「できそう」という感覚を大切にしています。

大きな挑戦に踏み出すという感覚ではなく「手が届きそう」、「できそうだな」という感覚で、等身大の自分にとって無理しない意思決定をしてきました。

そうすることで、私自身は元々明確にやりたいことがあったわけではないですが、積極的に色々なことに関わるうちに「これならできそう」という取っ掛かりが見つけられるようになりました。

まずは「できそうなこと」からチャレンジしていくことで、可能性を広げられるということですね。

そうですね、「できないこと」に永遠にチャレンジすると思うと凄く嫌になるじゃないですか。留学当初の英語もそうですし、みずほ証券でのM&Aや経営企画での業務でもそうですが、少しずつできるようになったことから、「意外と向いているかも」と手応え的なものを感じながら、進んできました。

まずは「きっかけ」を見つけて徐々にできることを増やすこと、そうすればできるだけ苦手意識を持たずに前に進む事ができると思います。

そして、最終的にはその中でどこに力をかけたいか、選んでいくことで、自分にとって意義のある挑戦が生まれると考えています。

現在キャリアに悩んでいる方々に対してメッセージを送るとしたらどのようなことを伝えたいですか。

キャリアで悩む人に言えることは、悩むことに時間を費やすよりも、引っかかりがあるところや、興味のあることから取り組み、徐々に自分の可能性を広げるのが良いと思います。

目の前のハードルを徐々に下げながら、自分の理想のキャリアへの可能性を狭めずに前進することが大切です。また、一定のイメージで仕事を選ぶケースもあると思いますが、前提として、将来何をしたいのか理想を持っておくことは大事だと思います。例えばコンサルティングファームに行くにしても、5年や10年とキャリアを見据えて入るべきだと思います。

この2点を心がけることで、きっと後悔のない選択肢や結果に繋がると思いますし、見えてこなかった自分の可能性にも気付ける様になると思います。

スタートアップキャリアに踏み出したきっかけ

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積極的なスタンスでチャンスを掴まれてきた藤本さんですが、改めてスタートアップに挑戦することになった背景を教えていただけますか。

最終的には、タイミングが後押ししてくれたと思います。もともと経営に携わりたいという思いもあったため、スタートアップの選択肢も考えていました。ただ、まずはコンサルで5年ほど経験を積もうと考えていたので、すぐにスタートアップにいくつもりはありませんでした。

そんな中、PwCでチーム再編が起きたことをきっかけに改めてキャリアを考えた時に、「40歳を前にして挑戦するならこのタイミングかもしれない」と思えたことが、スタートアップの世界に飛び込むという決断を後押ししてくれたと思います。

どのようなスタートアップを探していたのでしょうか?

1つはマネジメントに近い立場であること。2つ目は裁量が大きいことです。

私のこれまでのキャリアを考えた上で、マネジメントに近いポジションとしてはCFOが狙いやすく、また、アーリーフェーズの企業であればファイナンスだけではなく管理部門全体を管掌できるため、より裁量が大きいケースが多いのでは、と期待していました。

フォースタートアップスの六丸直樹(執行役員兼タレントエージェンシー本部GM)が藤本さんのキャリアチェンジをご支援しましたが、当初の印象はいかがでしたか?

スタートアップと一口に言っても、いろいろな企業があるんだなと思いました。六丸さんにご紹介いただきながら、この企業は自分に合ってる、合ってないというのをお伝えしながらご相談していきました。やっぱり1社1社特徴が全然違うので、各社と面接をしているなかでも面白さがありましたね。

なるほど、その観点でペライチはどう魅力的に写ったのでしょうか。

ペライチは企業フェーズが浅く、CFOとしての期待役割に管理部門全体の管掌も含まれていましたので、私の志向にとてもフィットしました。

また、ペライチではビジョンに「テクノロジーをすべての人が使える世界に」を掲げており、社会貢献性の高い意義のあるプロダクトを展開している点にも関心をもちました。

手にした未来とこれから目指す未来

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ありがとうございます。それでは最後に藤本さんがこれから取り組みたいことについて教えてください。

社員が120%のパフォーマンスを発揮できる体制を実現したいと考えています。わかりやすいところだと、まずはマニュアルや業務フローの改善を進めていきたいです。それぞれの業務を整理して効率化していくことで、会社として注力したいことに全力で取り組むことができる環境を整えていきたいと思っています。

一緒に働きたい人に関してはいかがでしょうか。

自分から能動的に課題設定をして解決していける人と、一緒に働けたらいいですね。その場しのぎではなくて、問題の本質的な課題を認識して解決していける方はとても魅力的だと思います。

EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Daiki Himeno / Editor : Koki Azuma / Photographer : Hideaki Ichikawa

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