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「ウェルネス産業を、新次元へ。」をミッションに掲げ、ウェルネス人口の拡大と日本が抱える健康課題にアプローチする株式会社hacomono(以下、hacomono)。同社の取締役COOとして活躍する平田 英己(Hideki Hirata)氏のキャリア形成、企業選択の軸に迫ります。
平田 英己(Hideki Hirata)
新卒で日本放送協会に入社し、約3年半後に株式会社ローランド・ベルガーに転職。中期経営計画策定や企業再生プロジェクトに携わる。その後、楽天グループ株式会社にてエンターテインメント系事業の再生を経験。2022年にhacomonoに参画し、COOとして経営業務全般を統括。同年7月より取締役に就任。
hacomonoは「ウェルネス産業を、新次元へ。」をミッションに掲げ、ウェルネス業界向けの会員管理・予約・決済に関するソリューションを軸に事業展開しています。
従来の会員管理システムは、機能がそろっているように見えても、使い勝手が充分とは言えないものも存在します。そこで弊社は、フィットネスクラブなどウェルネス産業のお客様にとって使いやすいシステムを提供することで、従業員が担う業務の効率化に貢献します。同時に、会員としてフィットネスを利用するお客様にもストレスなく使えるシステムを追求しています。
ウェルネス産業は、日ごろの運動習慣を支える重要な産業です。私たちは、フィットネスクラブなどウェルネス産業の利用率アップと、日本が抱える健康課題を解決するとともに、ウェルネス産業の持つ魅力を多くの人に伝えるための挑戦を重ねています。
2022年4月にCOOとして参画し、7月に取締役となりました。現在は中期経営計画の立案など、経営業務全般を担っています。
「業界に大きなインパクトを与えられる会社で経営に携わり、業界全体の改革に貢献したい」。そのような軸をもって就職活動をしていました。当時はまだ、経営がなにかをわかっていませんでしたが、変数が多いゲームのようなもので、複雑ですが楽しいのではないかと。五目並べより囲碁の方が面白いくらいの感覚でした。
幼い頃からエンターテイメントなど楽しいものが好きで、特にテレビが大好きだったのと、「好きこそものの上手なれ」といった言葉があるように、好きなことに携わりながら働きたいという思いもあり、放送業界を志望しました。当時の就職活動時期が、アナログ放送から地上デジタル放送へ変革を迎えるフェーズだったため、「このタイミングで放送業界に飛び込んだらおもしろそう、経営の力で業界を変革したい」と意気込み、NHKに入社しました。
実際に入社したところ、NHKは「いかに良い番組を多く生み出せるか」を重視した現場主導の会社であり、自分が求める軸と少しずれるような印象を受けました。制作現場出身の理事(役員)や局長が多く、私が若いうちから経営に携わるのは難しそうと感じたのです。
放送業界に未練はあったものの、一から経営のノウハウを身につけるために戦略コンサルへの転職を検討しました。
数社比較はしていましたが、当時高知県に住んでいたこともあり、そんなに数多くの企業にエントリーすることはできませんでした。エントリーした中で、ローランド・ベルガーの選考時に、後に社長になる水留 浩一氏(現 FOOD&LIFE COMPANIES 代表取締役社長CEO)とお会いする機会がありました。他のコンサルファームのパートナーとは少し違って、水留さんからは独特の余裕のようなものを感じ、こちらの頭の良さだけでなく人間的な面白さも見極められたような感じがしました。面接中にプライベートな質問をされたのも印象的で、コンサルとはいえロジカルさだけではなく人間的な部分を大事にする彼の印象が抜群に良かったので、ローランド・ベルガーへの入社を決めました。
全く違う畑に移ったギャップは想像以上でした。まず、ミーティング中に繰り広げられる単語の意味が分からなくて、会話についていけない。入社したての頃は、会議が終わった後に一つひとつ単語の意味を調べ、なんとか周りとの差を埋めようと必死に取り組んでいました。
ただ、経営に携わりたい思いを一貫して持っていた自分にとって、それを叶えられる環境に身を置けたのは正解でしたね。優秀な人材が多方面から集結した戦略コンサルに飛び込み、頭の切れる人に囲まれながら働くことで、圧倒的な成長を実感できました。その程度を例えるなら、半年前に作った自分のアウトプットが稚拙に見えるくらい。本当に毎日が刺激的で、充実していました。
当時のローランド・ベルガーが大事にしていた欧州的な「ミドルアップダウン」の戦略策定・実行のアプローチは、今の私の経営スタイルの土台になりました。
ミドルアップダウンとは、当時のアメリカの大企業などに見られるいきなり戦略を現場に落とし込むトップダウンのアプローチではなく、また当時の日本の大企業によくあった現場主導で会社を動かすボトムアップのアプローチでもなく、会社の性質や現場の能力・雰囲気を汲み取ってトップが作った戦略を現場が納得する形で落とし込むアプローチです。また、そのプロセスに企業のトップだけではなく現場をよく知るミドル層も巻き込んで戦略策定・実行をしていきます。
現場を活かす経営戦略を構築するミドルアップダウンは、現場やカルチャーを大事にする日本企業にフィットするアプローチだと思いますし、将来的には日本企業の経営をしたいと考えていた自分にとっても、このアプローチを学べたのは貴重な経験になりました。
ありませんでした。先ほども話したように、いずれは日本の事業会社に経営の立場で貢献したい思いがずっと根底にあったからです。
また、当時の戦略コンサル業界にはマネージャーを1年間経験すれば一人前という考え方があり、私もマネージャーを経験し、それなりに経営を学べたという自覚がありました。この先、戦略コンサルで上を目指すとなると、社内の売上を立てるための営業活動をメインに行わなければならず、私がやりたいのはセールスではなく、事業会社の経営そのものだったので、必然的に外の世界を見始めるようになりました。
はい。楽天は日本企業でありながら、スピード感も意思決定も非常にはやい。ローランド・ベルガーでも常にスピード感を持って仕事をしていたため、楽天でも同じような感覚で働けそうと思い、入社を決めました。
本当に楽天を選んで良かったと思っています。ずっとこだわってきた「経営の仕事とは何たるか」を、三木谷 浩史氏(楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長最高執行役員)から教わった感覚です。
当時、業績不振だった事業を立て直す大きなプロジェクトを担当したのですが、社長室に私専用のホワイトボードが置かれ、そこで三木谷さんと毎朝ハドル(10〜30分程度の短時間で行う議論)を実施しました。その中で、事業の長いバリューチェーンを頭からお尻まで、1個1個の要素のあるべき姿や、それを実行するチームの動かし方など、経営に必要な基本的なことを三木谷さんから直接教わることができ、それは本当に貴重な経験でした。あの時の経験がなければ、その後の仕事は全く上手くいかなかったと思います。
戦略を作る仕事とエグゼキューションは全く別物で、後者を三木谷さんから学べたのは本当に良かったと思いますし、両社の経営手法の違いを経験できたことも大きかったです。
ローランド・ベルガーで担当していた中期経営計画策定や企業再生と異なり、当時の楽天は大きな戦略的意思決定の質の高さで勝負する事よりも、小さな成功を積み上げるオペレーションの質の高さで勝負する事が多い「オペレーショナル・エクセレンス」の会社だったと思います。ローランド・ベルガー時代とは異なるアプローチを経験できて、経営のスキルの幅が広がったことを実感しています。
楽天には10年ほど在籍していたのですが、長く同じ組織にいると自分の成長が遅くなっているように感じたからです。また、私が長く在籍することは組織にとってもプラスにならないと考えました。
私が中心となって考えた戦略や事業運営に長く浸かっていると、施策や組織が偏って柔軟性が低くなってしまい、結果として戦略そのものの自由度も下がっていくと思います。別の経営者が新たな知見を加えて事業を牽引し直したら、事業がこれまでとは異なる成長を遂げられるようになるだろうと考え、転職を意識するようになりました。
「同じような規模の会社で経験を積んでも、自分の成長は100%加速しない」と思ったのがきっかけです。当初は、前職と同じような規模の会社を視野に入れていたのですが、例え失敗してもいいから、何か違う経験をしたほうが成長につながるのではと考えるようになりました。
また、今までを振り返ると、新卒でNHKの入社を決めた時も、ローランド・ベルガーや楽天を選んだ時も、優秀な人に囲まれて働くことへの潜在的な憧れを抱いていました。部活でも受験でも仕事でも、自分の成長はいつも優秀な人たちに囲まれる事で実現してきたと感じています。
転職活動中に別エージェントから中堅のスタートアップを紹介して頂いた時に、ふと自分の周囲の優秀な人たちが何人もスタートアップに転職していた事を思い出しました。優秀な人たちが集まっている業界といえば、学生の頃は商社やマスコミや外資金融・コンサルでしたが、今はスタートアップもその一つになっていると思います。“今”優秀な人が集まっているスタートアップであれば自身の成長をさらに加速できると信じ、次の挑戦のフィールドに定めました。
決め手は2つあります。まず1つ目はhacomonoが掲げているミッションに共感し、経営陣が描いているビジョンを一緒に実現したいと思ったからです。私もスポーツが好きなので、経営を通してウェルネス業界やhacomonoの発展をエンパワーしていきたいと思いました。
そして2つ目は、CEOの蓮田をはじめ経営陣に惹かれたからです。蓮田の人柄や「人本主義」の経営スタイル、CTOの工藤のビジネスの理解の深さに触れて、彼らと一緒に働けたら成長できて楽しいと思い入社を決めました。
タスクを投げるのではなく、イシューを渡し「考えてもらう」ようにして、皆が戦略にコミットできるよう意識しています。少し具体的に言うと、例えば「〇〇をやっておいて」と作業の指示だけしても、指示を受けた側はその作業しか実行しません。そうではなく、私は解決したい問題と解決策検討の視点や仮説を伝え、現場のメンバーが具体的な解決策を自分で考えて納得感を持って実行するような方法をとっています。
hacomonoのように小さい組織で長いバリューチェーンをカバーする事業には、私が好きなミドルアップダウンの経営スタイルが合うと思います。現場に近いミドルのメンバーを戦略策定に巻き込み、現場の強さを最大限に活かす戦略を作る。ミドルや現場を強化するためには、各々が当事者意識を持って戦略策定・実行にコミットすることが大切だと思うので、このスタイルをhacomonoでも重視して取り組んでいます。
今掲げているミッションを実現するために、戦略実行や事業規模拡大などを通して、hacomonoを社会に対してより影響力のある会社に成長させていきたいです。
今のhacomonoの事業規模で「ウェルネス産業を良くしたい」と言うのはなんだか少しおこがましいとも感じます。会社としてもっと大きくなり、影響力のある会社ともご一緒させて頂いて、それでウェルネス業界全体や社会に貢献できるようになれたら良いなと思います。
今立案している戦略や事業計画が実現すれば、きっと新たな成長を遂げるフェーズに突入できますし、影響力のある組織を巻き込む体制も作れると思っています。まずはその状態にhacomonoを引き上げていくのが、私の使命です。
一番は掲げているビジョンに共感してくれる人。また、特定の領域を極める職人肌の人より、変わり続ける組織の中で色々な仕事に取り組む意欲の高い人が合っていると思います。共に働く仲間を尊重しながら、チームプレイを楽しめる人だとなお嬉しいです。
そして、個人的に大切にしたいのが「自分で考える」ことです。hacomonoはまだまだ小さい会社で、これからの急成長の中で戦略やオペレーション、個人個人の役割もどんどん変わっていきます。自らの頭で考えて、組織と一緒に成長していけるような人と、一緒に働きたいです。
EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Yuko Kondo / Editor : Hanako Yasumatsu / Photographer : Takumi Yano