「エンジニアリングマネージャーの存在が業界を活性化させる」タイミーVPoE・加川 申祐 氏が捉える日本のエンジニアリング業界の課題

2022-10-07

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「『働く』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」をミッションに掲げ、働きたい人と働いてほしい事業者のマッチングプラットフォームを提供する株式会社タイミー。同社のVPoEとして「エンジニアの成長を自己責任にせず、ちゃんと組織が伴走してサポートしていかないといけない」と語る加川 申祐(Shinsuke Kagawa)氏のキャリア形成、企業選択の軸に迫ります。

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加川 申祐(Shinsuke Kagawa)
学生時代よりパッケージ開発会社で勤務、リードエンジニアとしての経験を積む。その後、SIerを経てソーシャルゲーム会社へ転職。新規ECサービスの立ち上げ、オンプレからクラウドへの移行、TVCMに耐えうるアーキテクチャの構築、機械学習等の新技術導入などを経験する。2019年に決済サービスを提供するメガベンチャー企業へ転職。現在はタイミーのVPoEとして開発部門全体のマネジメント、育成・評価制度設計などを行う。タイミーへの入社の決め手は「エンジニアリングマネージャー業務に100%コミットできる環境であること」

目次

  1. タイミーへの入社の決め手は「エンジニアリングマネージャー業務に100%コミットできる環境であること」
  2. ものづくりがしたくて辿り着いた「プログラミング」。エンジニアを志すきっかけとは
  3. 技術者として卓越したい。高難易度の開発に“面白さ”を感じ、更なる高みを目指す
  4. リスクから逃げてはいけない。失敗から得たものは“逆算的思考”だった
  5. 「エンジニアが活躍する組織を作らなければ、事業の成長は止まる」マネジメントを極めるきっかけとなった経験
  6. エンジニアリングマネージャー(EM)は業界課題を解決する切り札

タイミーへの入社の決め手は「エンジニアリングマネージャー業務に100%コミットできる環境であること」

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はじめに、タイミーの事業内容を教えてください。

弊社では、すぐ働きたい人とすぐ人手がほしい事業者をマッチングするマッチングプラットフォームを提供しています。

働き手側は面接や書類選考などのフローがなく、働きたい仕事を選ぶだけですぐに働くことができ、勤務終了後にはすぐにお金を受け取れる点が特徴です。事業者側は来てほしい時間や求めるスキルを登録するだけで、希望に沿った働き手と自動でマッチングします。

スピーディーな雇用や勤務後の支払いや手続きの対応を実現するため、人事労務などの機能サポートを1プロダクトで実現している点も私たちの競争優位性だと思っております。

タイミーでの加川さんの役割について教えてください。

私はVPoEとして、エンジニアリング組織のマネジメント責任者を担当しており、その中の業務は大きく分けると3つです。1つ目が事業を大きくしていくために必要なエンジニア人材の採用。2つ目は、弊社に所属してくれているメンバーの一人ひとりが活躍できる組織構造や評価制度づくりです。

最後に、メンバーと期初に目標設定をした上で、隔週の1on1で定期的に振り返りをしていくこと。この3つが私の行っている業務です。

タイミーに入社したきっかけや決め手があれば教えてください。

エンジニアリングマネージャー(以後:EM)の仕事に100%コミットできる環境だったことと、「うちにきてほしい!」という意志を社内と私に対し言語化していただいたことに惹かれました。

私の持論ですが、EMはマネジメントに100%コミットすべきだと思っています。スタートアップだとEMがプレイングマネージャーとして振る舞う会社が多く、良い組織を作り上げることに注力しきれず苦戦している印象があります。

だからこそ、マネジメントに100%コミットできるという点が大きな決め手になりました。

ものづくりがしたくて辿り着いた「プログラミング」。エンジニアを志すきっかけとは

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ここからは、加川さんの“これまで”を振り返りながら、現在抱いている“これから”について伺っていけたらと思います。早速ですが、そもそも加川さんがエンジニアを志したきっかけはなんだったのでしょうか?

高校生の頃、ものづくりが好きだったので、クリエイティブな仕事に就きたいと思っていました。でも、クリエイティブな仕事って一定のセンスが必要じゃないですか。私自身、作曲やイラストなど一通りクリエイティブなことに触れてみたのですが、自分には圧倒的にセンスがないことがわかりまして…。

でもクリエイティブな仕事は諦めたくなくて、「プログラミングならセンスや才能がなくてもものづくりができるかもしれない!」と、IT系の専門学校を選択したのがきっかけです。実際に学んでみると、プログラミングにも一定のセンスは必要だったんですけどね(笑)。

プログラミングと聞くと苦手意識を持ってしまう人も多い印象ですが、加川さんは特に抵抗なくスタートできたのでしょうか?

実家に自分用のパソコンがあったので、昔からパソコンに触れるのは好きでした。間接的にプログラミングのようなこともやっていたので、実際にプログラミングを始めるときも特に抵抗はなかったです。スキルを発揮できる領域だったのかもしれません。

専門学校で本格的にプログラミングを学んでみて、いかがでしたか?

自分の思い通りにプログラムが動いたときは楽しかったです。また、専門学校の中で同級生に教える場面も多かったのですが、自分が教えたことで友達のできることが増えていく姿が嬉しかったことも記憶しています。

技術者として卓越したい。高難易度の開発に“面白さ”を感じ、更なる高みを目指す

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専門学校を卒業後、新卒でSCCに入社されていますが、実際に入社されていかがでしたか?

すごく面白かったです。当時は、銀行のプロジェクトに携わっていて、シングルサインオンという統合認証基盤のパッケージを開発し、オンラインバンキングに導入していました。

コンピューターの基礎的な部分の知識が必要になる仕事だったので、学ぶことがとても多かったですね。また、難易度が高かったのでうまく動いたときの感動が大きかったことを覚えていますし、自分が作ったパッケージが既存のものよりもパフォーマンスを発揮するのもすごく嬉しかったです。

「面白かった」とのことでしたが、具体的にどんなところに面白さを感じたのでしょうか?

そもそも開発難易度が高いパッケージシステムの精度をより高く開発する必要があったので、同種のメジャーなパッケージと実装を比較しながら、「どうすればパフォーマンスを出せるのか」を考えることが面白かったです。

より良いものづくりをするために何が必要かを競っていたというか、難しいパズルを解く面白さに近かったように思います。

2社目のシャムロック・コンサルティングでもシステム開発に携わっていたと伺っています。

同社では、官公庁向けのシステム開発に関わりました。責任の重い領域を扱う仕事で、とても貴重な経験ができたと感じています。

そのような貴重な経験をされている中で、なぜご転職を考え始めたのでしょうか?

経験としてすごく面白い部分はありましたが、実際のコーディングにはあまり触れられておらず、技術者として卓越していける環境に身を置きたいという気持ちがだんだんと大きくなっていたこともあり、toCサービスを提供している企業への転職を考え始めました。

リスクから逃げてはいけない。失敗から得たものは“逆算的思考”だった

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その後転職されたクルーズは、いかがでしたか?

クルーズでの経験は、自分のエンジニアの価値観が変化した転機だったと思います。

サービスがものすごく成長していた時期で、テレビCMを打つことが決まっていました。ただし、当時はまだ物理サーバーで、テレビCMによる高トラフィックに対応するために、システムのクラウド移行とテレビCMに耐えられるようなシステムアーキテクチャを変更する必要がありました。

そしてテレビCMの放映当日を迎えたのですが、結果的に6時間ほどサービスがダウンしまして…。今振り返ると、当時私がやっていたのは「”今のシステム”が、負荷に耐えるためにはこういう作り方がいいよね」という作業だったのです。でも本当は、”テレビCMに耐えられるシステムアーキテクチャ”を定義し、「今の状態と理想の状態のギャップを埋めるにはどうすればいいのか」という逆算的な考え方が必要でした。

なるほど。サイトダウンの経験から逆算思考の重要性を知った...ということでしょうか?

当時の私は「リスクが大きいからやらないほうがいい」「ちょうどいい落とし所を見つけよう」と判断していた部分がありました。でも、その経験から“リスクを取ってでもやるべきこと”を判断できるようになった。それが大きな価値観の変化だったと思います。

根本にある課題をうやむやにしていると、いつかどこかで問題が起きる。だからこそ、リスクを取ってでも解決すべき課題を判断し、理想の状態から逆算して実行することが重要です。

「エンジニアが活躍する組織を作らなければ、事業の成長は止まる」マネジメントを極めるきっかけとなった経験

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次なる挑戦の場として入社されたGameWithでは、どのような業務を行っていたのでしょうか?

もともとはプレイヤーとして入社したのですが、会社が上場したタイミングで技術部門の部長の打診をいただき、だんだんとマネジメント業務にシフトしていきました。

実際にマネジメントを担当してみていかがでしたか?

これまでマネジメント経験がなかったので、初めは何をしていいのかすら分かりませんでした。

でも、上場後に退職者が一定数出てきたこともあり、いよいよ採用に力を入れていかなきゃいけないフェーズになりました。そんな中で、現状はメンバー一人ひとりが活躍できる環境ではないことに気づき、そこからマネジメントに注力していきました。

GameWithでマネジメントキャリアに踏み出した加川さんですが、メルペイに転職されています。その理由を伺ってもよろしいでしょうか?

当時、GameWithの成長が停滞してきたタイミングがあり、組織のほころびみたいなものが段々と目立ってきたのです。それに気づいたときには、すでに組織が円滑に回らなくなっていました。芽が小さいうちに摘むべきことを放置していると、組織が大きくなったときにダメージが出てきますし、立て直しにも時間がかかる。

その状況を目の当たりにし、エンジニアが活躍できる組織、エンジニアが楽しいと思える環境を作らなければ、プロダクトからクリエイティビティが失われ結果として事業の成長も止まってしまうので、一人ひとりを活躍させるマネジメントが重要なんだということをひしひしと感じました。

ただ、今の環境で自分のできることは何かと考えたものの、当時の自分では策が思いつきませんでした。マネージャーとしての限界を感じ、もっとマネジメントスキルを強化していきたいと思い、EM(Engineering Manager)としてメルペイに転職することを決意しました。

なるほど。マネージャーとしてのキャリアを見据えての転職だったとのお話しでしたが、実際に働いてみていかがでしたか?

メルペイでは、新機能開発プロジェクトを担当している部署に所属していましたが、熾烈な市場環境なこともあり現場の状況は一定苦しく、組織的・技術的負債がたまっていました。

そんな環境下でのマネジメントは難しく、また組織規模もこれまでの会社と比較して大きく、階層化も進んでいたので、私が組織全体に変化を起こすことはあまりできませんでした。目の前の課題を解決するために局所最適な意思決定をすることもありました。

業界でみても非常に優秀なエンジニアが多数在籍し、成長や技術プレゼンスを高めやすい環境が整備されているのにもかかわらず、継続的に組織の負担がかかってしまっている。すごくもったいない状態だと感じましたし、そこに対する改善をやりきれない自分に対して無力さも感じました。GameWithとメルペイでの経験は、マネジメントの重要性と難しさを強く認識させられる出来事でした。

そこから、メンバー一人ひとりに真のパフォーマンスを発揮させるマネジメントができるようになりたいという想いがさらに強くなっていきました。

エンジニアリングマネージャー(EM)は業界課題を解決する切り札

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その挑戦の場が、タイミーだった。

冒頭お話ししたようにEMに100%コミットできる環境であったことが決め手ではありますが、ビジネスとしても急成長しています。そういった、ビジネスが上手くいっている環境でないと、将来的に様々なことが制限されていってしまいます。

その点、タイミーはじっくりとやるべきことに向き合える環境でありますし、今の事業規模からするとエンジニアはもっと人数がいてもおかしくないです。

だからこそ、これから採用していくにあたってのストッパーはないですし、各エンジニアに様々な打席を用意できるので、EMとしての腕の見せ所でもあるかなと考えています。

タイミーには、弊社のヒューマンキャピタリスト中田 莉沙が転職支援をさせていただきました。

以前ご支援いただいていたこともあり、私の志向を把握した上で企業様をご紹介いただきました。カジュアルにコミュニケーションが取れ、「ここに行くといいよ」という悪い意味での押し付けがなかったため、とても活動しやすかったです。

現在、タイミーでVPoEとして働いてみていかがでしょうか?

正直、大変ですね(笑)。もともとタイミーもプロダクトマネージャー兼EMが2人いたのですが、EMの責務を私がまるっと引き受けたこともあり、マネジメントをするメンバーの人数が多く、難しさを感じる部分は多いです。

かなり多忙な毎日を過ごしているのですね。これから取り組んでいきたいことを教えていただけますか?

日本のスタートアップにEM専任の方をもっと増やしていきたいと思っています。

私は、エンジニアの給料が相対的に高い一因はリスクが大きいからだと思っています。自分が今注力している技術領域が明日には廃れてしまうかもしれない。そんな環境の中で、常に学び続けることはある意味「先行投資」です。

所属する組織の選定を間違ってしまった瞬間から自分の実績やキャリアにズレが生じてきます。また、学び方を間違ってしまうと、効率の悪さから業界の成長スピードに追いつけなくなる可能性もある。だからこそ、エンジニアの成長を自己責任にせず、ちゃんと組織が伴走してサポートしていかないといけないと思うのです。

その役割を担うのがEMである。

まさにです。ただし、実際専任EMのポジションを用意しているスタートアップは少ない。そうなるとスタートアップに所属する多くのエンジニアの将来は自己責任になってしまうため、一部の人だけしか這い上がることができず、結果中間層の空洞化が起きてしまいます。これは業界全体の課題でもあります。

なので、私自身がEMとして成長していきたいというのはもちろんですが、EMの必要性を広めて、EMを担える人材を増やしていきたいです。

エンジニア業界の課題を解決するためにもEMは必要不可欠ということですね。最後に、加川さんは今後、どのような人と働きたいですか?

タイミーには学習意欲や成長意欲の高い人に入ってほしいと思っています。タイミーで機会を得て、どんどん成長していってほしいです。そういう人が入ってくれると、EMとしてサポートのしがいもあります。

あとは、本来あるべき状態を目指していきたいと思える人でしょうか。例えば、メガベンチャーなどでシステムのスケールを目指して結果を出してきた人でも、きっと心残りはあると思っています。「あのときこうしておけばよかった」「もっとこういうシステムにしておけばよかった」みたいな。

タイミーはこれからシステムをスケールに耐えうる状態に変化させていくため、その辺りの答え合わせをできる環境にあると考えています。自分の再現性を試す場としても良い環境を提供できるはずです。

また、私と同じように組織をよくしたいと思っている人が入ってくれると嬉しいです。マネージャーとしてのスキルも育める環境にするつもりなので、ぜひ一緒に勉強していきましょう。

EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer:Tomoda / Editor : Koki Azuma / Photographer : Takumi Yano

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