EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。フォースタートアップスのEVANGE運営チームです。私たちが所属するフォースタートアップスでは累計1,500名以上のCXO・経営幹部層の起業や転職のご支援*をはじめとして、多種多様なビジネスパーソンを急成長スタートアップへご支援しています。EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。
『スタートアップで働く』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)累計1万部突破を記念し、 EVANGEとのコラボイベントを開催いたしました。100名弱の方々にご来場いただき、オンラインでの視聴者数も含めて150名を超える方々にお集まりいただきました。改めまして、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
今回は残念ながらご参加が叶わなかった皆様にも、本記事を通じてイベントの模様を覗いていただけたらと思います。
イベントの前半では、 フォースタートアップス 代表取締役社長 志水雄一郎から著書『スタートアップで働く』をテーマに、直近のスタートアップの市況についてお話しさせていただき、その後、SmartHR 取締役COO 倉橋氏、タイミー 取締役CFO 八木氏、 ココナラ 代表取締役社長CEO 鈴木氏にご登壇いただき、豪華トークセッションを実施いたしました。ゲストの3名からは、スタートアップを選択した際の価値基準、働き方の魅力、報酬や待遇についての考え方、キャリア形成のアドバイスなど、様々な観点でご意見をいただき、会場からも質問が殺到しました。
当社志水からは、産・官・学・民が連携した強力なスタートアップの創出に向けて、解決すべき課題として日本の国際競争力の低下や、時価総額ランキングにおける日本企業の低迷など、データをもとにした日本の現状分析をお伝えしました。
かつて1989年ごろ、世界時価総額ランキングを見ても日本は世界のトップに君臨し、大半が日本企業で占められていました。上位50社で見ても6割が日本企業が並び、まさに世界を席巻していたのが当時の日本の企業群でした。
一方、現在は世界トップ20の中に日本企業は含まれません。上位100社で見ても、1社か2社しか含まれないというこの状況は危機的であり、見過ごせるものではありません。現状を打破していくために、国家政策としても「スタートアップ育成5か年計画」が宣言され、日本経済の中心地をスタートアップが担っていくことが期待されています。
経済産業省から『スタートアップ育成に向けた政府の取り組み-スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する』が発信され、雇用創出・所得拡大・国の財政を支える成長ドライバーになりうると評価されています。ますます日本のスタートアップが活況を見せていく兆しと捉えてよいでしょう。※1
これは決して極端で難しい話をしているのではなく、かつて焼け野原となった戦後の日本の復興を支え、その後日本を代表する企業として世界に躍進していったソニーやパナソニック、トヨタなどの企業と同じように、新たに挑戦をして急成長する企業を我が国はもう一度産み出さなければならないということです。
その実現に向けて、金銭的な投資も重要ですが、何よりも社会を変えていくためにリーダーシップを発揮していただく人材が必要不可欠になる。ぜひ皆さんにはそのポジションを担って欲しいと思います。
スタートアップ企業に就労する人口は増加の傾向にあり、懸念に上がりやすい年収面についても、実は上場企業の平均よりもスタートアップ企業の方が高い水準であるというデータも出てきています。※2
伸び盛りのスタートアップ企業における優秀な人材の獲得競争は、時にGAFAMなどの外資系大手企業とも競うことが多く、この点はまだまだ日本のスタートアップ企業も改善していくことが期待できると考えています。
※1参照:経済産業省 『スタートアップ育成に向けた政府の取り組み-スタートアップの力で 社会課題解決と経済成長を加速する』
※2参照:スタートアップ年収、上場企業を7%上回る 650万円 NEXTユニコーン調査(2022年12月13日, 日本経済新聞)
ゲスト3名からは、スタートアップでは大企業とは異なり、自分のアイデアをダイレクトに、そしてスピーディーに形にすることができ、その過程で自分自身の成長を実感できることが魅力として挙げられました。
また、フラットな組織でミッション・ビジョンへ忠実に向き合い、そのために立場を問わず自由な発想ができることも重要なポイントとのこと。
SmartHR倉橋氏は、スタートアップでの挑戦を決断したきっかけとして、前職で新規事業の立ち上げ・推進に注力した経験があったそうです。マーケットトレンドに沿って新しい事業を自らの手で推進していく躍動感と面白さから、ご自身のキャリアの方向性を見つけられたようです。
SmartHR倉橋氏は、念入りにリサーチを重ね、比較検討をしたうえで、スタートアップでのキャリアを選択されたそうですが、ココナラ鈴木氏は対照的に、初めての転職活動においてご縁に導かれるように現職を選ばれたとのことで、「自分はスタートアップに参画するんだ」ということを必要以上に構えすぎない姿勢の重要性について言及されました。「まずはカジュアル面談形式で起業家と対話して、作りたい世界観に自らがワクワクできた。同時に今後の伸びしろを考えると、自分の介在価値を強く感じられる点も面白いと感じたことが決め手だった」というお話しをいただきました。
新卒では大手企業へ進み、1度目、2度目のどちらの転職においてもスタートアップを選択されたのがタイミー八木氏。キャリアを選択する際には「自らの人生を投じて、社会にとって最も大きな影響を残せる方法は何か」という視点で考えられているそうです。その結果、ボードメンバーとして、社会の仕組みを大きく変えられるダイナミックな挑戦というストーリーに惹かれ、タイミーにご入社をされました。
起業家や経営陣のスタイルによって違いもありますが、重要な意思決定も含めて「任せてもらえる」という裁量の大きさというポイントが挙げられました。予算決めにまつわる判断、プロダクトの方向性、事業開発上の戦略等々、大企業の中で細分化された役割を担うのみでは味わうことができなかった経験ができているというエピソードには、参加者から共感の頷きが多く見られました。
COO候補として入社され、現在は代表取締役を務めるココナラ鈴木氏からは、「大企業の中にいた頃は自分が『上場企業の代表取締役』という肩書きを背負う日が来るとは想像もしていなかった。セレンディピティのような様々な出会いとチャンスが重なって今がある。筋書き通りではないキャリアに転じていく面白さは、スタートアップならではだと感じる。」というお話も。
SmartHR倉橋氏からは「どうしたら社会がよくなるか、ユーザーの方々に喜んでもらえるかという本質的な仕事に集中できる気持ちよさは、なかなか他の環境では得られ難い。残された人生が誰しも限られている中で毎日しっかりと正しいことに向き合えているという感覚があり、とても楽しい」という意見も挙げられました。
タイミー八木氏からは、スタートアップの面白さだけでなく、入社後のハードシングスについてもリアルな体験談をお話しいただきました。CFOというロールでありながらも、会社の成長のために必要なことは全て現場に飛び込んで支え、時には危機管理広報対応の推進を担ったり、インシデント対応の基盤を構築されたりと、ファイナンス面だけではない職掌範囲に会場からは驚きの声が多く集まりました。八木氏は「日々新しいチャレンジが舞い込んでくるので、むしろ経験値が溜まっていく面白さがあります」とコメント。
スタートアップでは急成長を味わえる反面、それを整えていく過程では乗り越えなければならない壁もさまざま。そんな時も前向きに捉え、挑戦を楽しめる姿勢が必要だということが伝わってきました。
リクルートで10年近く経験を積まれたココナラ鈴木氏からは「スタートアップでは、失敗に対して大企業のような保険はない。大企業では失敗しても異動という選択肢があったり、むしろ失敗経験が重宝されたりするシーンもあったように思う。一方でスタートアップでは背水の陣で挑まなければならないこともあるので、勝負所に強くなる。そして何より驚いたのは、社員が30人くらいの時は会社としての社会的信頼がなく、CM広告を打とうと思っても、なかなか最初は取引してもらえないことすらあった。今までは会社のブランドで仕事ができていたんだということを痛感させられた。スタートアップでは、自分自身がその信頼を構築しなければならない。だからこそ成長できる側面もある」という実体験のエピソードをお話しいただきました。
SmartHR倉橋氏からも共感が寄せられ、「大きな組織にいた時は、自社のバランスシートを気にしたことがなかった。でもスタートアップでは日々預金残高の金額まで確認する。自分たちの全力を投下して攻めているんだという環境が、組織全体をビジョンの達成に向けてコミットメントさせる。やはり自分自身の身の入り方が違いました。本当に楽しいです」とコメント。
タイミー八木氏からは、決められたルールの中で働くのではなく、自らやり方やルールを創っていくことができるという違いについて触れられました。「大企業では積み重ねた歴史の分だけ、マニュアルや規則が様々ありますが、スタートアップではそのマニュアル自体ゼロから作るという考え方を持たなければならない。大企業の中ではマニュアル主義が強く、そこから逸脱すると減点されるようなプレッシャーもあった。今は本質的なルールや方針を考えることができる。そんな価値観の表れとして、服装や格好の基準も考え方が全然違う。スタートアップでは規則通りの服装を守ることよりも、本質的に示唆のある、顧客に価値のある正しいこと伝えられているか?という点の方が大事。そこが守れていれば、服装をルールで縛るようなことはない。自分は大手企業にいた際にも、なぜ毎日スーツを着なければならないのか?と疑問に感じていたタイプだったので、とてもこの価値観が水に合う」という八木氏のお話に、ココナラ鈴木氏からも強く共感が示されました。
モデレーターの志水から「ご自身が転職する際のお話しに加えて、現在は経営者として採用する側の立場に立つこともあると思うので、大企業や外資企業との採用競合事例なども、ぜひお話しいただきたい」という問いかけから始まり、待遇・報酬への考え方について様々な視点での意見をいただきました。
会場からの質問では「年収が大幅に下がってしまうのはやはり怖いと感じる」という意見が多い一方で、ゲスト3名とも「挑戦をやめるほど強い不安を感じたことはなかった」とのこと。その理由として、「大企業に残り続けてもそもそも大幅な昇給やアップサイドは期待できない。不確実性は伴うが、ストックオプションなども加味すれば、ハイリターンが期待できるのはスタートアップの魅力のひとつだと思う」という意見や、「スタートアップで仮に失敗したとしても、その経験で強くなった分、求めてくれる大企業や他の会社は必ずある。働き口がなくて収入に困るようなシナリオは、なかなか起こり得ないのでは」という意見も寄せられました。
また、年収を重視するなら、スタートアップのフェーズの違いに着目するのも大切な考え方であるとのアドバイスも。アーリーフェーズの企業群は比較的年収水準が低くなりがちだが、今回ご登壇された3社のようなレイターフェーズ以降のスタートアップになると、人事制度も整備され、できるだけ現年収水準を維持したオファーを提示するケースが増えているとのこと。著しく現年収が市場平均から逸脱していない限りは大きな差分にならない場合も多いようです。この点はモデレーター志水からも「NEXTユニコーン調査」(※3)を参考に、スタートアップで働く方々の平均年収金額が、上場企業在籍者を7%も上回ったという事例も触れられました。
※3 スタートアップ年収、上場企業を7%上回る 650万円 NEXTユニコーン調査(2022年12月13日, 日本経済新聞)
SmartHR倉橋氏は、実際にスタートアップで活躍している方に共通する点として「学ぶ力がある人」「本質思考ができる人」「過去の成功体験に縛られずにアンラーニングできる人」「既存のルールや常識に対して無邪気に疑問を呈することができる人」というポイントが挙げられました。SmartHR社での事例として、過去のやり方の踏襲だけではなく、お客さまにとってどうあるべきか?という本質的な思考に則って、社員から社内ルールの改定を提案され、スピーディに経営会議で決議したという事例もご紹介いただきました。
タイミー八木氏からは、「役職に捉われずに自ら現場に飛び込んでいく主体性のある人」という人物像も挙げられました。中でも会場から驚きの声が上がったのは、八木氏は取締役である現在でも、自らタイミーのワーカーとなりスキマバイトを行っているというエピソード。それが決して珍しい話ではなく、他の社員の方もワーカーとして体感した課題をプロダクトの改善に活かしているとのことで、顧客の課題を深く知り、能動的に貢献しようとする姿勢の重要性が述べられました。
ココナラ鈴木氏からは、「スタートアップは今までにないマーケットを開拓するというフェーズにあるため、正解は確立されていない。考えることは大事だが、机上の空論では道は拓けない。まずは実行してみて、失敗をまた次のアクションに活かしていく、そんな推進力を持っている方が活躍している」とスタートアップの環境で必要な実行力について触れられました。
ゲストの話を受け、モデレーター志水からは「どのスキルもスタンスも非常に重要。だが、今後は特別なスキルがある人だけがスタートアップで働くのではなく、どんな人でも活躍の場所があるような環境にしなければ、スタートアップという労働環境がなかなか民主化されない。より多くの人がスタートアップの一員になれるような場所作りがしたい」と締めくくりました。
モデレーター志水から「本日のゲストの皆様はバックグラウンドも現在の業界も異なるので、それぞれの視点からご意見をいただければ嬉しい。」とアナウンスがあり、ディスカッションがスタート。
SmartHR倉橋氏より「スタートアップを選ぶ際のリスク許容度は、自分自身に合っている企業を選ぶのが良いと思う。起業初期のアーリーフェーズに入ることだけが挑戦ではない。レイターフェーズの企業や上場後のスタートアップも、挑戦できることはたくさんある。そして、その会社が作ろうとしている世界観に強く共感できることが大事。挑戦する以上、一筋縄ではいかないこともあるが、どんな世界を作るために頑張っているのかというビジョンが支えになる。キャリアアップのスピード感としては断然スタートアップの方が早くチャンスがあるし、まずは気になる企業に会いに行ってみるのも良いのでは」とキャリアの選び方におけるポイントをいただきました。
ココナラ鈴木氏からは「ぜひFollow your heartの考え方を大切にしてほしい。論理的に考えることも当然大切だが、自分がワクワクすることに正直に従うべきだと思う。自分もココナラに出会った時に直感的に、ここが自分の場所だと感じる感覚があった。自社の仲間たちの多くも、同じようにワクワクして心が惹かれるからという想いを大切にした結果、ココナラを選んでくれている。自分自身、うまくいっている時もそうじゃない時も含めて毎日本当に楽しめているので、皆さんにもぜひスタートアップというキャリアをおすすめしたい」という熱いメッセージをいただきました。
タイミー八木氏から「自分の人生を何に投じるのか、後世に何を残したいか、自分はそんな軸を大切にして進路を決めた。大きなテーマにしっかり向き合ってみると、例えば少しの年収の差などは小さな問題に見えてくる。スタートアップは山あり谷ありだが、乗り越えたらいつの日かそれが仲間との笑い話になる日が来るし、その経験を通じて自分も成長している。本当にスタートアップはいいこと尽くしだと思う」と参加者の背中を押していただきました。
以上、イベントレポートをお届けいたしました。
スタートアップで今まさに活躍中の皆様、キャリアをご検討中の皆様、それぞれにとってお役に立てることを願っております。
倉橋 隆文(Takafumi Kurahashi)氏
SmartHR 取締役 COO
紹介記事:https://evange.jp/articles/kurahashi-takafumi
1983年生。東京大学理学系研究科修了。2008年よりマッキンゼー&カンパニーにて大手クライアントの経営課題解決に従事。その後ハーバード・ビジネススクールにてMBAを取得。2012年に楽天株式会社に転職し、社長室や海外子会社社長などのポジションで事業成長を推進。2017年7月よりSmartHRに入社、取締役 COOを務める。
八木 智昭(Yagi Tomoaki)氏
タイミー 取締役 CFO
紹介記事:https://evange.jp/articles/tomoaki-yagi
2008年に新卒で入行した三菱UFJ銀行において、商銀・信託・証券等のグループ総合取引やストラクチャードファイナンス、シンジケートローン等を中心とした法人営業業務に6年超従事。その後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投資銀行本部にてテクノロジー/インターネット /ソフトウェア/フィンテック業界における上場・非上場企業のIPO、M&A、Debt Financeを中心とする投資銀行業務に従事。SaaSベンチャー(アペルザ)で1年弱ほど、事業推進、ファイナンスを主導した後、タイミーに参画。現在は取締役 CFOを務める。
鈴木 歩(Suzuki Ayumu)氏
ココナラ 代表取締役社長 CEO
紹介記事:https://evange.jp/articles/suzuki-ayumu
小学校5年生から中3までマレーシアで生活。早稲田大学法学部卒業。2006年リクルート入社、FromA、就職ジャーナル、ゼクシィ、広告代理事業の事業開発、Recruit USA(ホールディングスの海外経営企画)に携わり、商品企画、営業、事業開発、経営企画を幅広く経験。2016年より株式会社ココナラに転職、現在は代表取締役CEOを務める。
< モデレーター >
志水 雄一郎(Shimizu Yuichiro )
フォースタートアップス 代表取締役社長
株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)にて転職サイト「DODA」(現doda)立ち上げなどを経て、2016年に株式会社ネットジンザイバンク(現フォースタートアップス株式会社)を創業、代表取締役社長に就任。2016年に国内初「殿堂」入りHeadhunter認定。2019年より日本ベンチャーキャピタル協会ベンチャーエコシステム委員会委員、2020年より経団連スタートアップ委員会企画部会/スタートアップ政策タスクフォース委員に就任。2021年に公益社団法人経済同友会入会。2022年に一般社団法人関西経済同友会に入会。2023年『スタートアップで働く』(ディスカバー・トゥエンティワン)を出版。
『スタートアップで働く』特設サイト
https://www.forstartups.com/pr/book-shimizu-yuichiro
<主催>
フォースタートアップス株式会社
フォースタートアップスは、「(共に)進化の中心へ」というミッションを掲げ、「for Startups」というビジョンのもと、国内有力VCとの連携による起業支援や、スタートアップ企業の組織構築を含めた人材支援を中核に、戦略的資金支援も行うハイブリッドキャピタルとして成長産業支援事業を展開。また、成長産業領域に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB」を中心とした産官学共創モデルによるスタートアップエコシステム構築にも取り組んでいます。
タレントエージェンシーサービス(起業支援・転職支援)
https://www.forstartups.com/services/talent-agency