「一度きりの人生だからこそ、自分が本当に面白いと思えることをやる」大企業、スタートアップ、外資コンサルを経験したBALLAS COO 中西佑介 氏が語る本質的課題解決とは

2024-04-30

EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。フォースタートアップスのEVANGE運営チームです。私たちが所属するフォースタートアップスでは累計1,200名以上のCXO・経営幹部層の起業や転職のご支援*をはじめとして、多種多様なビジネスパーソンを急成長スタートアップへご支援した実績がございます。EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。

*2023年11月29日時点
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中西 佑介(Yusuke Nakanishi)
一橋大学商学部経営学科卒業。AGC株式会社(旧旭硝子株式会社)にて汎用〜高機能化学品まで幅広い製品の営業・企画業務を経験。高機能樹脂の事業マネージャーとして国内外営業・生産拠点を含めた事業推進を主導、新事業立ち上げや設備投資などを実施。その後バイオベンチャーのスタートアップCOOとして事業グロースと大型資金調達を牽引後、ボストンコンサルティンググループでコンサルとして従事。株式会社アクセルスペースでは取締役CPO/CSSOとして国内外宇宙市場での事業拡大、国内外官公庁との新規取引組成などを通じて新規事業AxelGlobe立上げを主導。2023年株式会社BALLASに入社、執行役員COOとして建設業界での新たなサプライチェーン構築に向け邁進中。

中西さんのビジネスパーソンとしての転換点

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中西さんの中でビジネスパーソンとしての転換点はいつでしたか?

まず、AGC株式会社(以下、AGC)に入社したことで大きな環境の変化がありました。配属は丸の内の本社ではなく、千葉の五井にある工場だったんですよね。毎日作業着を着て色々な方と仕事をしていました。製造、開発、関連会社の方と関わっていて、生産管理やロジスティックも担当していたので輸送会社さんとのやりとりもあります。皆さんそれぞれの仕事にかける想いがあって、経歴もモチベーションも異なるわけですね。人間関係も含めて仕事が回っていくというか、一番最初にそういった泥臭いやり方が出来たことが良い経験だったと思います。

社会人一年目にいきなり転機が訪れるんですね。その当時を振り返ってみると中西さんはどんな社会人でしたか?

僕は全く仕事が出来なかったので、色々とお叱りをいただきました。要領は良かったと思うので、形にはなるけれど細かいところがちゃんと出来ていなかったのではないかと思います。入社から一年ほどして業務を一通り学んで仕事のやり方を覚えていきました。二年半ほど在籍したのですが、最初の一年はすごく辛かったです。当時の経験があるからこそ、その後の社会人生活でも個別事案の成功失敗に影響されずに適切な自己評価”ができていると思います。

その後、ご自身の仕事について考えるきっかけはどんなことがあるのでしょうか。

工場で働いているタイミングで東日本大震災が起きて、自分たちも避難しつつも、ロジスティックだったので工場内に外部の業者さんが大勢いらっしゃって、その対応も行う必要がありました。隣の工場で爆発が起きているのに、その中に入って避難誘導をしないといけない。化学薬品も扱う工場ですので、その時に死をリアルに意識したというか。「仕事で死ぬこともあるんだ」と感じたんですね。

その時は転職について具体的に意識していたわけではないのですが、入社する前にAGCのOBの方に会う機会があって、その方がAGC退社後に外資系企業などに転職し活躍されていたので、「自分もこの会社に長くいることはないんだろうな」という漠然とした想いはありました。そこから震災をきっかけにすぐに転職を考えたわけではないのですが、死を意識したことにより「自分の興味あること、やりたいことをやるべき」なのだと仕事のあり方について考えるようになりました。

大企業に入って目の前の仕事をこなしていくうちに未来が作られるのだろうと思っていたのが、その未来は自分で作らなくてはいけない、作れるのだったらやりたいことをやろうと考える様になったのが震災後だったと思います。

初めてのスタートアップとの出会い

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もう一つ転換点を挙げるとしたらどんなことでしょうか?

AGCから転職を初めてして、スタートアップ企業に行ったタイミングです。時間軸や環境が違う中で仕事をして、「スタートアップ面白いな」と思ったことですね。よく「経営視点を持って仕事に取り組もう」という話がありますよね。それは「日々の業務が何に作用しているのか」ということを考えようという意味も持っていると思うのですが、その言葉に違和感を感じていて。「経営視点というのは、実際に経営をしなければ持てない」と思ったんです。

経営をすると日々色々な視点から物事を考えるだけでなく、その思考結果や判断が社内外のステークホルダーに常にさらされることになる。それらの反応は様々で、かつそれらの反応に対してどのようなスタンスをとるのか再度決断を迫られていく、そしてその決断にも…というループになり会社も個人も磨かれていくと思うんです。ただ単純に会社の判断に対して「俺ならこうするのにな」と考えるだけではそのループに入ることができない。そういった環境にいなければ経営視点を持つことは難しいと感じる中で、それが出来るのがスタートアップだと思いました。

AGCもとても良い会社ですし、労働環境としては全てが整っていると思います。一方でスタートアップは「自分がこれをやらないと会社が潰れてしまう」というマインドで仕事をすることになります。それが僕にとっては面白かったんですね。

そもそもスタートアップ企業に興味を持ったきっかけはどんなことだったのですか?

AGCの中で様々な業務をやらせてもらって、同期の中ではとても恵まれた環境だったのですが、その先で何が出来るのだろうと考えていました。

漠然としたモヤモヤを抱えながらその当時は外部のセミナーや勉強会によく参加していたのでその影響もあります。セミナーで「今の日系大企業の若手サラリーマンは何も生み出していない。先人が作った土台の上で商売をしているだけだ。」といった話を聞いた時に、その通りだなと思ったんですね。

自分もAGCという大きな看板で仕事をさせてもらっているだけで、本質的に新しい価値を生み出していないなというか。自分のいる状況を言語化してもらった様な感覚がありました。自分で事業を作り、今ある市場を変える仕事をやるべきだなと思いました。その後に遺伝子や宇宙領域のスタートアップに行ってそもそも市場を創り出すところのフェーズに入社したことや、建設業界の構造に入り込みサプライチェーンを変革するBALLASへの入社につながっていると感じています。

実際にスタートアップ企業に入社されて、それまでの環境とも大きく異なると思いますがいかがでしたか?

メンバークラスで入社して、運も多分にありましたが、人員不足の部署で新しい仕事を次々と担当させてもらってという繰り返しではありました。とても優秀な方々が社内には多数いらっしゃったのですが、スタートアップならではの試行錯誤しながら仕事や会社を作り上げていく部分が多かったですね。その試行錯誤の中で課題を特定し、それを改善や型化することが出来るのではないかなと動いていました。大企業的な仕組みやフレームワークを理解している自分だからこそ、ある程度上手くいった部分もあって、周りからも色々と頼られるようになりましたね。

中西さんがぶつかった壁、その時どう乗り越えたか?

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転換点を2つ挙げていただく中で、1つ目が最初の会社、2つ目がそこからスタートアップへの転職ということで、キャリアの中でも最初の方に集中しているのですね。

これまでメーカー、ヘルスケア、コンサル、宇宙事業、そして現在の建設と全く業種が異なる会社を経験してきたので、入社する度にゼロベースで学ばせていただく面白さを感じています。その中で変化の度合いが大きかったのが一社目の大企業での現場の泥臭い仕事の経験したことと、二社目のスタートアップでのスピード感の激しい環境だったと思いますね。

逆にその経験があるから、新しい領域のキャッチアップや変化に対する恐怖心みたいなものは自分の中にはほとんどなくて。「何事もなるようになる」と考えるようになりました。

最初のスタートアップで働く中で、中西さんのその後のキャリアに影響を与えた出来事などがあったんでしょうか。

最初のスタートアップでは、スタートアップで発生するあらゆる困難には直面してきたと思います。事業課題や組織課題はもちろんですが、資金繰りを気にしながら売上を上げていくであったり、色々な課題を乗り越えてきました。大企業のような整った環境では起こることがないようなことがスタートアップでは日常的に発生するので、その経験が自分の変化への耐性を作ってくれたなと思います。

スタートアップならではの困難を多数乗り越えられてきたと思いますが、具体的に最も困難だったことを挙げるとするとどんなことがありますか?

特に印象に残っているのが、自分が入社した時は30名ほどだった会社が100数十人規模にどんどん拡大していった時に、理想のスピードと組織の成長が合っていないと感じることがありました。組織拡大に連れて色々な業務が発生するので、最初は面白いし色々なことをやりたかったので、自分でCMの絵コンテを作ったり、通販番組みたいなことをやったり、本当に色々な仕事をしましたが「このままじゃ回らないな」と感じたんですよね。自分のキャパシティが会社の成長の限界のように感じてしまって、どのように組織を作っていけばいいのかについて悩みましたね。

スタートアップがぶつかる組織化の壁をどのように乗り越えられたんでしょうか?

結局は人が全てだなと思い、組織をどう拡大していくかを考えるようになりました。

そこから人事にもコミットするようになり、CFOやCHROという立場の方が入社して如実に組織が変わったんですね。例えばCFOが入社する前は既存の投資家とのコミュニケーションも僕がやっていたのですが、専門知識が無くて厳しい部分がありました。その方が入ってからは自分がピッチやプレゼンに専念出来るのですごくありがたかったですし、そうやって業務をプロフェッショナルの方と一緒に出来たということが印象深いですね。

プロフェッショナルな人材を組織に迎え入れる際に中西さんが大事にされているポイントはありますか。

過去の失敗の分析やそこから見出した再現性は大事にしています。

過去のスタートアップで採用したCFOの方は、以前の会社でレイオフなどの経験もお持ちで、様々な厳しい状況を乗り越えてきたからこそ一緒に考えられることが多かったと振り返って実感しています。失敗していないと再現性が無いと思うので、面談でも「過去の失敗」について質問をすることは多いですね。「その状況に戻れるとしたら、今だったらどういうアプローチをするのか」とか。

面接で感じる数パーセントの違和感が後々にミスマッチングにつながっていくと実感していて、BALLASでは面接の段階でバリューへの共感やカルチャーへの一致をしっかりと見ています。そこがすごく大切だと思っていて、今は人数が少ないですけれど、これから100人とかスタッフが増えていっても大切にしていきたいですね。

当初は馴染みがなかった建設業界のBALLASに入社を決めた理由

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BALLASとの出会いや印象についてお聞きしたいです。

最初は興味があまり無いジャンルでした。建設業界とも馴染みが無かったですし、建設のDXをやっている会社だなというくらいのイメージでした。ただ、何かのきっかけで代表の木村の話を聞いて、面白そうだなと。僕が今まで出会った年下のビジネスパーソンの中でも群を抜いて優秀だなと感じました。BALLASの素地になっている資料も全て木村が考えているのですが、この業界の課題を考え抜いているなと。

先ほどスタートアップに転職する際に感じた、日本企業の課題についてお話ししましたが、建設業界が抱えている課題って日本の縮図だなと思っています。日本の就業人口がどんどん減っていく中で、労働生産性は依然として低く、従業員や後継者不足で多くの町工場が廃業していくが、市場として非常に大きいという。それを「SaaS」的な観点で局所的に効率化するのではなく、本質的に最適化しようとリアルな部分も含めてアプローチしていることが面白いなと思いました。

BALLASがやろうとしていることが、建設業界だけに閉じているのではなく汎用性があるなと感じたことも大きいです。建設業界だけに閉じる事業やニッチな領域を攻める事業であれば興味は持たなかったと思います。

最後に中西さんにとってスタートアップで働く意義を教えてください。

冒頭でお話しした通り、今の日本は選ばなければ何不自由なく生きていける社会だと思います。そんな恵まれた社会だからこそ、自分が面白いと思うことをやった方が楽しいんじゃないかという思いが自分には強くあります。
自分が面白いと思えるテーマで、本質的な課題を解決することを考えるのであれば、スタートアップ企業は最適な選択肢だと思いますし、「日本の縮図」である建設業界の課題解決をするBALLASでの挑戦を選択したことに繋がるんだと思います。

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中央は中西佑介氏。左はフォースタートアップス河野温人、右は同 上遠野 元太

編集後記

BALLASとのご縁を繋いだフォースタートアップス上遠野・河野が中西さんと会食をした際に、中西さんは「常に探究心と好奇心を持って行動をされている」というエピソードを伺いました。

多種多様な分野に興味をもたれていて、イスラエル軍の柔術を体得したり、厳しい食事制限で自分を律したり、最近は「社員にお寿司を振る舞えたら良いですよね」と寿司を握る技術にも関心があるとのこと。

メーカー、バイオ、宇宙を経て、今は建設産業に身を置く中西さんの原点には、あくなき探究心と知的好奇心があり、その根底には、一度しかない人生で自分が面白いと思ったことにはまず挑戦するという信念を感じました。

中西さんをご支援したヒューマンキャピタリスト

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上遠野 元太(Genta Kadono)
シニアヒューマンキャピタリスト
フォースタートアップス株式会社 タレントエージェンシー本部
法政大学社会学部卒業後、株式会社クイックに入社。人材紹介部門に配属。営業としてキャリアをスタートし、マネジメントや新卒採用に従事。2021年4月フォースタートアップスへ入社。バッググラウンドを活かし、ビジネスサイドやHR職種のハイレイヤーをメインに支援。2022年8月にシニアヒューマンキャピタリストに昇格。現在、アーリーからレイターフェーズまで幅広い事業フェーズの企業担当として事業成長に寄与しながら、新卒中途社員の育成やオンボーディングに従事。
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河野 温人(Haruto Kono)
ヒューマンキャピタリスト
フォースタートアップス株式会社 タレントエージェンシー本部
慶應義塾大学 法学部政治学科卒業後、ソフトバンク株式会社に入社し営業としてキャリアをスタート。2023年にフォースタートアップスへ入社。現在はヒューマンキャピタリストとして、シード期からポストIPO期のスタートアップへの採用支援にあたり、CxO/ハイレイヤーポジションへの支援実績を持つ。
EVANGE - Director : Kana Hayashi / Creative Director : Munechika Ishibashi / Interviewer : Akinori Tachibana / Writer : Kozue Nakamura / Editor:Daisuke Ito / Assistant Director : Makiha Orii / Photographer : Shota Matsushima
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