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カスタムウェアの民主化をテクノロジーで進めていくスタートアップ企業、株式会社FABRIC TOKYO(以下、FABRIC TOKYO)。同社のHead of Financeとして活躍する西田 雅俊(Masatoshi Nishida)氏のキャリア形成の軸に迫ります。
西田 雅俊(Masatoshi Nishida)
慶應義塾大学卒業後、有限責任あずさ監査法人に入所し、法定監査を実施。2013年よりエムスリー株式会社にて経理業務(国際会計基準への移行など)に従事後、2014年よりスタートアップ投資やM&A、ターンアラウンドを担当。2020年1月よりFABRIC TOKYOに参画。現在はHead of Financeとして同社の経営企画を中心に幅広い役割を担う。
FABRIC TOKYOでは”Lifestyle Design for All.”をミッションに掲げ、主にオンラインによるカスタムビジネスウェアの販売を中心に事業を展開しております。
いまはビジネスウェアを中心に展開していますが、カスタムオーダーという買い方はそれに留まらずカジュアルアイテムであったり、周辺のアイテムにも応用できると考えています。テクノロジーを駆使してカスタムウェアと汎用品のギャップを限りなくなくすことで誰もがカスタムウェアを楽しめる世界の実現を目指しています。
Head of Financeとして主にFABRIC TOKYOの経営企画機能を担当しています。例えば、来店いただいたお客様が「どれくらいの割合で購入し、どれくらいのリピート率か」を経営上のKPIに落とし込むイメージです。
ただ、私はファイナンスとは経営企画だけでなく「お金を含め何かを調達し、何かに使うこと」だと考えています。例えば会社のリソースを「明日の売上のための顧客獲得に使う」のか、「将来的な成長のための新商品のラインナップに使う」のか、もファイナンスの一部という感覚です。
実際に、「将来的な成長のために」自分の工数をいわば門外漢である商品開発の領域に思い切って投資していた時期もあります。
大学在学中に、公認会計士の資格を取得したことが始まりです。親が将来仕事に困らないよう何か資格を取ってほしいと希望していたことと、たまたま学校の近くに会計士の受験塾ができたことが重なり、会計士を目指すことにしました。
結果、大学在籍中に無事公認会計士に合格。新卒ではあずさ監査法人に入社しました。
あるプロジェクトでクライアントが関わる店舗業務のオペレーション改善に関わったことです。
改善にむけて何度も現場に足を運び、ディスカッションを重ねながら業務改善を実現したのですが、その結果クライアントがわれわれのパフォーマンスを高く評価してくださり、監査報酬アップの提案をしてくださったのです。
それまでは依頼されたことをいかにこなすか、という性質の仕事が多かったのですが、クライアントに対して付加価値を提供することの面白さを知りました。
いいえ。実はそのプロジェクトの前に「これまでの現場とは違うことをやってみたい」と上司に掛け合っていました。
今から振り返ると本格的に掛け合うというよりは「言ってみた」というレベルでしたが、自分の意思を上司に伝えることで新たな経験につながったことは私にとっては成功体験でした。この時以来、ちょっとしたことでもアクションを起こすことを意識するようになったと思います。
そのプロジェクト以降もクライアントに付加価値を提供するようなプロジェクトに参画し続けたかったのですが、監査法人では機会が少ないのでは、という当時の判断で転職を検討するようになりました。
当時は「自分自身の力でビジネスを回すことができるよう、とにかくビジネス戦闘力を高めたい」と考えていました。
その上で、2つのことを意識していました。1つ目は新しい機会が多く提供されると思われる成長領域の会社であること。2つ目は一緒に働いていく上で、切磋琢磨して成長していけるようなレベルの高いメンバーが多い会社であることです。
エムスリーはこの2つに当てはまっていたことと、入り口は経理の役回りからだったのですが、会計の知識が活かせそうなM&Aが多い会社でもあったため、活躍すればチャンスが広がるだろうと思い、入社を決めました。
経理として仕事をしていたのですが、図らずもM&Aの部門と近い距離感で仕事をするようになり、志願してM&Aの部門に異動することになりました。
ただし、そこからが大変でした。
M&Aの仕事は、投資する企業を探す、投資実行する、投資した企業の経営支援をする、というように分解できますが、私の過去の経験は投資実行フェーズで少し役に立つ程度。投資する企業を探すにせよ、投資した企業の経営支援をするにせよ、ビジネスに対する高度な知見が必要となります。
M&Aの部門はほぼ全員が30代以上でビジネスに対する知見も経験も豊富な方々ばかりという中、自分ひとりが能力的に大きく劣る状態で、そのままでは担当する案件がまったくないような状況でした。
とにかくビジネスモデルに関するピッチをひたすら聞きながら業界全体におけるユニークさを考え、勉強や経営者とのディスカッションを繰り返しました。
エムスリーが事業展開する医療という産業は事業構造もマネタイズポイントも非常に複雑でしたが、その分全体像を理解できれば大きく前進できる感覚もあったためです。
その甲斐もあり、何社か投資実行して経営支援するまでに至ったのですが、今から振り返ってもこの時は本当に必死に毎日を過ごしていました。ただ、追い込まれている時が成長のチャンスとよく言いますが、自分なりにビジネスに対する見方が養われたターニングポイントとなる期間だったなと思います。
投資する側よりも、投資いただいたお金を使って事業を成長に導く側の方が今の自分に必要な経験であると思うようになったためです。
エムスリーで、とあるリハビリ関連企業の経営支援に入る機会があったのですが、出店計画や来店客数を鑑みた人の採用など不確定要素が多い中で、お金を含め今ある資源をどう使っていくかを考えていく仕事に魅力を感じ、「会社の経営に関わるような仕事をもっとしていきたい」と思うようになりました。
しかしながら、エムスリーでは経営支援はあくまでM&Aという仕事の一部。だったら時間を全部事業会社側で使う、というキャリア設計もありえるなと考え、転職を検討することにしました。
1つ大きかったのはビジネスモデルです。実は昔からアパレルが好きで、それまでも何度かアパレル領域への転職を検討したことがありました。
一方で、服が売れるかが不確定要素が強いデザイナーの感性への依存度が大きいことや、在庫を持つこと、店舗コストが重いことによる固定費の負担が大きいことから、ビジネスとしては難しい業界だという認識があり転職先として選ぶことはないままでいました。
それに対してFABRIC TOKYOは、不確定要素が大きいデザインで在庫が発生する大量生産モデルから、ベーシックなアイテムの中での「特注量産」。不確定要素を限りなく小さくしたコスト構造になっており、ビジネスモデルとしての可能性に魅力を感じました。
最終的には私自身の、アパレルで勝つための仮説を正解にしたいという想いが一番大きかったと思います。
ベンチャー投資も近いものがあると感じているのですが、意思決定する上で一定ロジカルなフィルタを通して投資先を決めたら、投資委員会を通すためになんとかベストなストーリーを作ります。
FABRIC TOKYOを転職先として選ぶにあたっても同じで、ある意味アパレルに対する否定要素も含め徹底的に代表の森と対話しました。その中で同じ未来を見ていることが確認でき、「あとは自分がどう正解にしていくか」だと思い、参画を決めました。
資金調達です。私自身それまで資金調達の経験はありませんでしたが、M&Aで投資をする側と投資される側を経験してきたこともあり、資金調達のストラクチャーは理解していました。
一方で、資金調達をする上で不足していたのが、出資してくれる会社を探し、会社の魅力を伝えること。言わば営業活動の経験でした。
その不足が補えたのが、入社直後に経験した自社開催のイベントでスポンサーを募るための営業活動です。やってみて感じたのですが、スポンサー集めは必ずしもその時点で価値が明確になっていないことに対してアピールしてお金を投資してもらうという意味でスタートアップの資金調達にとても似ています。
そのときの経験が活き、その後無事資金調達を果たすことができました。資金調達というと、投資銀行出身のCFOが担当するイメージが強いかもしれませんが、M&Aと営業の経験が役にたつということは私自身の体験による学びです。
FABRIC TOKYOが目指していることにも通じますが、誰もがカスタムウェアを楽しめる世界を実現させたいです。
私自身、カスタムが好きで身につけているアイテムもカスタム品が多かったりしますが、入手ハードルが同じであれば本当は誰もが汎用品よりもカスタム品の方が長く愛せて使え、結果的に商品としてのLTVも大きくなるはずです。
それができていないのは、サプライチェーンの課題など様々な理由によってまだまだカスタムウェアにハードルの高さが存在していることだと考えています。
FABRIC TOKYOも現状では注文からお届けまで、一定のお時間をいただいているなど、ハードルの高さをなくしていくために改善しなければいけないポイントはまだまだたくさんある状況ですが、今ある障害のひとつひとつをテクノロジーの力で解決していくことで、カスタムウェアをより多くの人が楽しめる世界を実現していきたいですね。
EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Karen / Editor : Akinori Tachibana, Hanako Yasumatsu / Photographer : Takumi Yano