「明確なビジョンを掲げるよりも、目の前の人の期待を超える」Micoworks VP of Product 小越 崇広氏の仕事の根底にある価値観

2024-07-11

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*2023年11月29日時点
小越 崇広(Takahiro Ogoshi)
2005年に株式会社サイバーエージェントに入社。子会社2社の取締役やメディア事業の広告配信システムの責任者を歴任。2019年からスマートニュース株式会社にて広告プロダクトの責任者として日米広告プロダクトの成長を牽引。2023年11月、Micoworks株式会社に入社し、VP of Productに就任。

小越さんのビジネスパーソンとしての転換点

まずは小越さんのこれまでのキャリアの変遷を教えてください。

新卒で株式会社サイバーエージェント(以下、サイバーエージェント)に入社し、14年間勤めた後に、スマートニュース株式会社(以下、スマートニュース)でプロダクトのディレクターをしていました。サイバーエージェント在籍中は最初の2年がセールス、その後の2年がリサーチ業務、その後はずっとエンジニアやプロダクトのマネジメントをしており、その経験が現在のMicoworksでのプロダクトマネジメントのキャリアに繋がっています。

サイバーエージェント、スマートニュースとその時の時代を代表する注目企業で働いてこられていますが、今のキャリアに至るまでに何が転換点となりましたか?

自分のキャリアに影響を与えたと思う出来事が2つあります。1つ目はサイバーエージェントの子会社で僕自身がマネジメントをして失敗をした事業の経験です。当時は若かったこともあり、有期雇用のスタッフも増えていく中で自分の島が大きくなるような感覚で嬉しかったのですが、事業自体は上手くいきませんでした。

撤退が決まった時に、有期雇用の社員たちは仕事の依頼が無いのでなんとなく気付くわけですよね。その中の1人が僕の所に来て「手伝えることがあればなんでもやりますので」と言ってくれていたのですが、その時には事業の撤退とそのスタッフの契約終了は決まっていました。でも僕はそのことを伝えられなかったんです。

その時にすごくハッキリとマネジメントに大事なのは結果だなと実感しました。チームを持つのであれば結果を出さなければいけないということを、その体験を通じて今も大事にしています。

失敗を成功に変える思考法

その失敗から得た課題をどのように成功に変えていったのでしょうか。

マネジメント始めたての時にたくさん本を読んで、その中でいくつか自分自身の血肉になった本があります。『1ページ・マネジャー』という本の中の一節に、「優れた成果は正しい目標設定から始まる」と書いてあり、今でも大切にしています。

優れた成果を出すのであれば、正しく目標設定することは重要で、仕事をはじめた最初は目標は誰かに与えられるものですが、ある瞬間から自分が宣言するものになり、さらにどこかのタイミングから自分が作るものになります。

自分が宣言しようが、作ろうが、その目標設定が経営方針とすり合っているかを正しく認識するということが大切だと思います。今思えば、子会社時代は目標設計よりも、自分の庭が大きくなる感覚に満足してたから、上手くいかなかったのかと振り返っています。

小越さんはキャリアの中で常に高い成果を宣言されてきたかと思います。宣言する怖さにはどのように対応してきたのでしょうか。

自分の会社とか自分の事業が勝負をしているドメインの中でどうなりたいかという理想像を持つことが大切だと思います。目標が高いのは誰しも嫌ですし、怖いことですが、何かを成し遂げたいから事業をやっているわけですよね。数字そのものに意味があるというよりは、どういうところを目指したいかという理想を持つことが大切かと思います。

そのような考えが出来るようになったきっかけはありますか?

最初に務めた会社が手を挙げることを認めてくれる会社だったことも大きいですね。サイバーエージェントという会社を表す良いキャッチコピーがたくさんあるのですが、ある時の新卒採用の時のメッセージに「サイバーエージェントは一生懸命を笑ったりしない」というものがありました。必死になるのってカッコ悪いとか、なんでそんなに真剣に仕事するの?みたいな風潮はあると思うのですが、一生懸命を全肯定してくれるカルチャーだったので、その影響も大きいと思います。

グローバルへの挑戦への想い

もう一つの転換点はどのようなことでしたか?

これは偶然なのですが、僕の最初の会社でのキャリアは全て広告に関わっていました。広告の営業、広告スタッフのマネジメント、 広告の開発組織のマネジメントなど8年間ほど広告のプロダクトマネージャーをやらせていただいたのですが、広告のプロダクトって、エンジニアリングとマシンラーニングが非常に重要で、その分野のタレントを採用することが大切です。

大変な苦労をしてアルゴリズムのエンジニアを採用しても、競合調査で海外の会社について話をした時に、アルゴリズムは100人ほどのエンジニアが作っていますよという話を聞いて、これは日本だけで採用をしていたら勝てないなと思いました。

個人的には本当にプロダクトで勝負するんだったら、もっとダイバーシティのある採用をしなきゃいけないなと考えはじめた時に、スマートニュースがそれを行っていました。プロダクトマネージャーとしてキャリアを伸ばすのだったら、そこにチャレンジしないとダメだと思いました。世界で勝てるプロダクトを作るのだったら、組織がグローバルでなくてはという思想が明確になっていきました。

マネジメントの失敗からの学び

これまでのキャリアで感じた失敗と、そこから学びを得たことはどんなことですか?

僕はエリートではなかったので、失敗はたくさんあります。マネジメントの話でいうと、最初にマネジメントをしていた子会社でCTOの方が退職されることになりました。

その方はとても優秀で誰からも信頼されていたのですが、彼自身は技術者としてもうちょっとチャレンジしたいとずっと言っていました。エンジニアとしてそういう欲求はあるだろうなと、技術的欲求は正当だなと理解しつつも、本心ではその方に辞められては困るなと思っていました。でもある日「辞めて他の会社に行きます」という話を聞きました。軽々しく言っているわけではなく、ほとんど意思決定した状態で、最後の最後、報告しますという感じでした。

その時にすごく反省をしました。彼は本当に優れたエンジニアだったので、挑戦したいという気持ちを応援するべきだったと今は振り返ります。他の部署で活躍して、また戻ってきてくれたかもしれないし、彼のキャリアのことを考えてもその方がプラスだったのに、自分が怖いから彼を引き止めていただけでした。会社全体の視点で物事を見れていなかったと、大きな反省をした出来事でした。

自分目線から会社目線へ引き上げていった出来事だったのですね。

僕は、会社への所属意識は強い方だと思います。自分が所属している場所が上手くいくことが一番良いことで、自分の活躍をまず考えるよりも、その方がチームもまとまると考えています。

Micoworksとの出会い

Micoworksとの出会いと、入社のきっかけはどんなものだったのでしょうか。

スマートニュースでは、海外のメンバーの方の採用にも携われましたし、色々な経験が出来て良かったのですが、プロダクトリーダーとしてもう少し経営に影響を与えたいなと思いました。でも僕の役職はディレクターなので、決まったことに対しての方向性を示すのが役割と思っていたので、スマートニュースでVPを目指すのも、 他の会社でVPになるのも、僕の中ではイコールでした。Micoworksは、プロダクトを見るシニアリーダーがいない会社だったので、ジョインするのであれば、そういった立場で関われるかなと思ったことがきっかけでした。

Micoworksを選んだ理由は3つあって、1つ目は開発をグローバルで行うこと、2つ目は経営者との相性、3つ目は自分自身が興味を持ちインパクトが出せるかでした。

まずは、社長の山田が海外を明確に意識をしていて、英語の勉強に本気で取り組んでいたのですが、そういうところに経営者の意識って現れると思うんですね。いかに完璧な戦略があっても、実行が伴わないと意味が無いと思っているのですが、彼自身がフィリピンのオフィスを訪れているなど、本気度が感じられました。

3つ目に関しては、今Micoworksでやっているカンバセーショナル・コマースという分野自体が、僕がずっといた広告の世界と隣接していて、共通言語もあるのである程度勝手も分かりつつ、うちにはカスタマーサクセスのスタッフがたくさんいて、このノウハウをいかにオートメーションに活かすかで成果がさらに変わるなということを感じました。

すでにこれだけ成果が出ているのだから、システムを磨き込めばもっと成長出来るだろうと。最初に取締役を務めた子会社がオペレーションの会社でしたので、その時の経験も生きるだろうし、新しい分野ですが自分も貢献出来るだろうなと思いました。

自分自身のキャリアのビジョンは今までも無かったし、多分これからも無いと思います。Micoworksで求められることを最大限やって、僕の頑張りと共に会社も大きくなっていけたらと思います。僕らがやっていくのは、マルチプロダクト、マルチリージョンで、それはとても大変なことだと思いますが、この会社にかけてみようと思えました。先ほどの山田の英語の話もそうですが、「戦略30点、実行100点」と「戦略100点、実行30点」だったら、実行100点の方が良いと思う僕の価値観の一つが大きく影響しています。

実際に経営に携わって感じた、これまでとの違いはありますか?

Micoworksは累計調達額は約63億円と大きな調達をしているのですが、調達ってこれまで頑張った事へのご褒美ではないわけですよね。将来の成長への期待の表れなので、その期待に応えることが何よりも大切です。そういう意味ではとてもエキサイティングですし、楽しいですし、大変です。スマートニュースにいた時は、僕自身が株主の方と話すことは無かったのですが、今は「私がプロダクトのトップで、こう考えております」という報告や議論をすることもあります。やりがいも大変さも両方あると思います。

小越さんのキャリアの思考法

キャリア形成について意識していることを教えてください。

僕はキャリアについてのビジョンは考えていなくて、その時に求められていることで成果を出すことが重要だと思っています。僕がどうやってキャリアを形づくってきたかというと、結局目の前にいる人の期待に応えるとか、 お客様の期待に応えるとか、会社の期待に応えるってことをやり続けてきたことだけです。

今やっているプロダクトマネジメントは自分自身がやりがいのあるポジションだと思っていますし、メンバーと一緒に大きな成果を出すということが自分に合っていると思うのですが、これもたまたま見つかった場所なんですね。その源泉がなんだったかというと、常に目の前の仕事に全力で応えてきたからだろうと思います。

最後にスタートアップのCXOを目指す人へのメッセージをお願いします。

キャリアをビジョンで作る人と、波乗りした結果として作る人っていうのがいたとして、僕は明確に後者です。CXOという役職にもこだわる必要はなく、業務にこだわりを持ってやりきっていたら、結果的にそういう地位に行くような気がしています。よく成功者は「ビジョンを持て」と言うのですが、無い人が無理やり持つぐらいだったら、誰かからの期待に100パーセント、出来れば120パーセント応えることがあなたにとっても、周りの人にとっても、将来の自分にとっても良い結果になるのではないかと思います。

編集後記

小越さんと初めてお話したのは2023年6月1日。当時は転職前提という温度感でもなく、小越さんからは今グローバルに進出していなくても良いが、グローバルな組織を作ろうとしているチームのグロースに貢献したいというお話をいただいたことを今でも覚えています。もちろんプロダクトの強さや事業のユニーク性を大事にされていることは前提でありながら、経営を体現する組織がどうあるべきかという想いを強く抱かれている方だなという印象を受けました。同時に我々も人が企業を創ると考えており、思想という点でも重なることが多いのではと思いました。Micoworksさんへご入社前にランチもご一緒させていただいた際に、プライベートのお話も伺いましたが、スープからラーメンを作ったりされているとのこと!プライベートでのユニークな一面に惹かれながら、仕事でもプライベートでも非常に拘りを持たれている姿に一貫性を感じました。

- 山本 英嗣(フォースタートアップス株式会社 シニアヒューマンキャピタリスト/マネージャー)、山下 太一(フォースタートアップス株式会社 シニアヒューマンキャピタリスト/マネージャー)

小越さんをご支援したヒューマンキャピタリスト

山本 英嗣(Eiji Yamamoto)
マネージャー / シニアヒューマンキャピタリスト
フォースタートアップス株式会社 タレントエージェンシー本部
大学卒業後、2013年に新卒で積水ハウス株式会社へ入社。千葉県エリアにて住宅およびアパートの営業に従事。その後2016年より株式会社マイナビへ転職。人事部新卒採用課へ配属となり、それからHRに身を置くこととなる。2019年より大阪へ転勤となり同時に課長へ昇進。2名のメンバーマネジメントを行いながら、大阪採用に従事し、プライベートでは同年に結婚。ライフスタイルの変化もあり、転職することを決め、2020年1月〜indeed Japan株式会社へ。前回の転職活動中にスタートアップへ触れることがあり、スタートアップのように志に向き合い、企業の成長に携わりたいという思いから2020年9月より現職へ。フォースタートアップス株式会社へ参画後2021年7月シニアヒューマンキャピタリストに昇格。2022年8月よりマネージャーに昇進し、現在シニアヒューマンキャピタリスト兼マネージャーとして活動中。
山下 太一(Taichi Yamashita)
マネージャー / シニアヒューマンキャピタリスト
フォースタートアップス株式会社 タレントエージェンシー本部
シリコンバレーにおける滞在経験をもとに、日本の成長に危機を感じ、2017年9月より、日本の成長産業支援をミッションにしていたfor Startups(旧:NET jinzaibank)に参画。新規事業の提案、「STARTUP DB」の立ち上げに関わり、スタートアップ1000社以上の企業情報、ファイナンス情報などをリサーチ。その後、新卒第一号として入社し、ヒューマンキャピタリストとして活動。1年目で月間売上トップを記録し、社内表彰などを受賞。直近ではマネージャーとしてマネジメントに従事し、全社に対して大きな貢献をしたPJTに向けて表彰されるプロジェクト大賞受賞。BizReach 「UNDER 30 MATCHING AWARDS 2021」ファイナリスト。
EVANGE - Director : Kana Hayashi / Creative Director : Munechika Ishibashi / Interviewer : Eiji Yamamoto・Taichi Yamashita / Writer : Kozue Nakamura / Editor:Daisuke Ito / Assistant Director : Makiha Orii / Photographer : Shota Matsushima

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