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行政DX(Govtech)とエンタープライズ企業向け生成AI事業を展開するグラファーで、Govtech事業の責任者を務める澤田淳氏。
澤田氏は新卒で外資系企業に入社後、一度はスタートアップへの転職を選択肢に入れつつもプロフェッショナルファームへ転職。その後、あらためてスタートアップという環境へ飛び込んだ経歴を持つ。
グラファーでは経営企画からキャリアをスタートさせたが、「抜擢文化」の中でCSや営業を経て入社1年半後には事業企画へ、さらに半年後には事業責任者へステップアップしてきた。
現在は培ってきたファイナンスやM&Aのスキルも活かしながら、「全人口の幸せ」に寄与すべく行政DXの大きな課題に真正面から取り組んでいる。
澤田 淳(Sawada Jun)
VP of Business(GovTech事業)(執行役員・Govtech事業担当)大学卒業後、スリーエムジャパン株式会社に入社し、ファイナンス部門にて予算策定や財務管理などのFP&A業務に従事。 その後、GCA株式会社(現Houlihan Lokey)でTMT業界を中心としたM&A/PMI、アライアンス戦略策定に携わる。2021年10月にグラファーに経営企画として参画。2023年12月より現任。
一番初めは学生時代、東南アジアにあるアドテクの会社でインターンをしたことです。そこでは激しい競争環境の中、30代前半のビジネスパーソンが月次で数十パーセントの成長を続ける会社でスピード感を持って意思決定する姿を間近で見て、ビジネスマンとしての「時間軸」が一気に縮まり、ビジネスに対する価値観の基礎となりました。
面接時「3Mはこう伸ばすべきだ」と率直に意見を述べたところ、面接官であった昆さんが興味を示してくれて。グローバルなイベントや大きなプロジェクトに参加させてもらい、本社トップが来日した際にはカバン持ちとして同行させてもらったりしました。ビジネスマンとしての所作や価値基準を学んだ重要な時期でしたね。
また、ファイナンスという軸を持つことで「非財務」に目がいくようになり、専門性を極めることで自分の中で一つのものさし(価値基準)ができることも分かりました。
ただ、3Mではファイナンスの専門性を高めたものの、日本ではM&Aの機会が限られていることには物足りなさを感じていました。「オーガニックに伸びないならM&Aで成長すべき」という考えを持ちながらもその権限がなかったことから、より大きな挑戦を求めてGCAへの転職を決意しました。
働き方すべてが異なり、最初のプロジェクトの会議では発言後に「黙れ」と制されました(笑)。自分はそれなりにできると思っていたところから、最初のいくつかのプロジェクトでは、圧倒的無能感を味わいましたね。
会社で最もハードなディレクターの下で徒弟のように働き、「毎朝論点ベースで答えるべき問いと仮説、具体的な検証アクションを合意して、夜23時から2時間フィードバックが毎日続く」という厳しい環境で鍛えられました。
でも、そんな「絶望」の中でもどこかわくわくする自分もいて。全能感と無能感の繰り返しの中で毎日のハードワークをとにかく楽しみました。不満は何一つなかったです。
GCAである種の「修行」をして得た最大の学びは「どれほど絶望的な状況に思えても必ず打開策はある」という確信です。プロとしてクライアントからの課題や要求にこたえるために高額で雇われるので、常にその期待を超えたアウトプットを出し続けるプロフェッショナリズムを叩き込まれました。
例えば数ヶ月間のプロジェクトの最終報告1週間前に、「アウトプットが全然ダメだから一からやり直せ」と言われても、期日の前日になっても勝ち筋が見えなくても、必ず打開策はあると信じることができる。常にポジティブでいる精神力を身につけました。
また、経営戦略を考える上での基本として、これは当時のMDに教わった瀬島龍三の表現なのですが「アリになれるか、トンボになれるか、それでも君は人間だ」という視座・アプローチも身につけました。
どういうことかというと、「一次情報の収集や地道調査・分析活動(アリ)」「複眼的な視野を持ち、第三者や顧客の動向、競合企業、市場全体の変化を俯瞰(トンボ)」「戦略全体のバランス感覚を持ち、多様な要素を踏まえた上での総合的な判断(人間)」という、経営戦略を考えるにあたっては、単なる部分最適ではなく微視的・巨視的な三つの視点を組み合わせつつ、最終的には人間としての総合的な判断力をもって意思決定を行うということです。
M&Aの現場で「新しい産業を作っていく、産業の構造を変えていく」という経営者の情熱に触れ、自らも当事者として事業に責任を持ち、携わりたいという思いが強くなっていきました。
また、それまでに携わっていた仕事は戦略策定レイヤーのものが多かったのですが、実行局面に進むにつれて仮説が進化していく様を見ていると、企業価値を向上させるためには実行への関与も必須だと感じていました。
戦略は企業の未来に関する仮説で、実行は顧客や競合の反応を通じて仮説を検証し、誤りを修正し、仮説を進化させるという行為。本来、戦略と実行は切り離すべきではなく、当時は戦略と実行現場が遠く感じられ、戦略策定時の段階で少しのもどかしさ、実行局面への飢えのような感覚がありました。
僕がスタートアップを志したのは、「大きな変革の瞬間に立ち会い、変化を起こす側でありたい」という20代の頃からの思いがあったからです。
なので3Mからの最初の転職活動時にも選択肢にはありましたが、まずはGCAで3年間「修行」をすることを選びました。
実は、その転職活動の際、後にグラファーを紹介してくれたヒューマンキャピタリストの村上さんとも一度面談をさせてもらったのですが、まだ自分の心を動かすようなワクワクするスタートアップ企業を捉える目を自分が持てていませんでした。当時はファイナンスの専門性以外に自信がなく、視野が狭かったです。
はい。村上さん(写真右)は個社よりもまず市場の外観から丁寧に説明いただけたので、多面的に個社を理解することができました。
また、受ける企業を迷っていた際に教えていただいた「ピボットとトラベリング理論」も印象に残っています。転職の変数としては「業種と職種」の二つの軸があるとき、入社後の立ち上がりを考えると(業界は変わるので)職種は経験がある経営企画で一定固定した方が良いのではないか、という考え方です。
総じてキャリアについて深い議論をすることができ、自身の進むべき道を見出していきました。なので「村上先生」と呼ばせていただいてます(笑)。
その中で紹介されたグラファーは、自分で作っていたロングリストの一社でもありました。初めて話を聞いた際には意義のあることをやっていると直感的に感じ、CFOとの議論を通じて「貢献できるのではないか」と思いました。
シリーズBくらいの企業を中心に見ていましたが、決断基準は「会社が倒産しても後悔しない挑戦ができるか」です。向き合っている不が大きく、かつ、健全でいかに世の中的意義を感じるか。行政のDXは、全ての人が課題に感じていますよね。
ジェフ・ベゾスの「後悔最小化フレームワーク」にもありますが、自分自身が80歳になったときを想像して、そこから振り返った時にやらないと後悔するかどうかを重視しています。折角の人生なので、振り返った時に大きな挑戦ができた、といえるような人生でありたいですね。
選考時に自分を誘ってくれたCFOから、Day1に「辞める」と言われて。予想外の展開で焦りました。昼休みにオフィス向かいの公園で「どうしよう...」とリクナビに再登録しました(笑)。
さすがにビビりましたが、入社前からスタートアップ界隈の人と交流を持って話を聞いていたし、会社が向き合っている「課題」に重きを置いて意思決定していたので、「いっちょやってみるか」と気持ちを入れ直すことできました。
「抜擢し、具体的な実行を思い切って任せる姿勢」、「意志を尊重する」、「自分が何とかするという気概を持つ人の割合が多い」といった特徴を感じています。
経営陣は癖が少々強めですが(笑)、いい意味で変なこだわりがなく、とてもフェアだと感じています。だからこそ自分も経営企画から入社したのにCS、営業などさまざまな業務に挑戦する機会を得られました。
「毒を飲む覚悟(リスクをとれるか)」が必要ですね。ハレーションを生まないと、組織は衰退してしまう。日々の小さな意思決定一つとっても、その毒(=リスク)を自分が飲めるかが常に試されています。
職員の方の「価値を住民に届けたい」という真っ直ぐな思いに触れる機会が多く、感銘を受けています。私自身は行政・自治体で働く方々に寄り添い、デジタルを通じた環境・基盤作りを通じて彼らの思いを住民へ届ける手助けをし続けたいと思っています。
民間企業の中にデジタルデータが蓄積されていることを前提としてDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいますが、まだまだ紙文化である行政は紙をデータ化するところから始める必要があります。そして、特定の業務を自動化し、そこからオペレーション全体をDX化していくという、2段の非連続な変革を職員と共に実現していくことができ、ポテンシャルしかない領域なんです。その変革に立ち会えることにはやりがいを感じます。
「グラファーだけでどれだけ市場の割合を獲得できるか」という視点だけではなく、行政DXを前進させていきたいという意志がある企業と連携を高めながら、コンソーシアムとして相互創客の仕組み構築やバリューチェーンの拡大などに取り組み、職員の業務負荷削減、市民サービスの向上につながる変革を実現していくことを目指しています。
将来的には行政からの「一方通行」ではなく、行政と住民の間によりインタラクティブな世界を実現していきたいです。
二つの特徴があって、一つは「ラストマンシップ」を持っている人です。これは「自分が最後の砦であり、ここで崩れたらすべてがダメになる」という覚悟を持つこと。「組織の立場上、業務全体の最終責任を負っていなくとも、「もし自分が全体を背負っているとしたら?』という視点で考え、行動できるかどうかです。
ラストマンシップを持たない人は、自分の担当業務を遂行することに終始し、プロジェクト全体に問題があっても「自分の仕事ではない」と見過ごしてしまいます。しかし、真に価値を生む人は担当範囲を超えて全体を見渡し、必要な行動を起こします。
もう一つは「チャーム(打算なき愛嬌と素直さ)」です。シンプルに素直な人の方が成長し易いですし、あとは議論していて気持ち良いですからね。
今を楽しむことが、結果として最強の武器になると思います。
もちろん、目標達成のために準備期間が必要なこともあります。でも、そのプロセス自体を楽しめるかどうかが、結果に大きく影響するのではないかと思うんです。
超一流のアスリートもみんな練習を愛しているように、本気で何かに打ち込む人は、そのプロセスさえも楽しんでいるはず。前職ではアウトプットが出なくて深夜まで悩んだり、土日を返上することもありましたが、「好きなことをしている」という実感があると、それほど苦ではなかったんですよね。
「好き」になるには、面白いんじゃないか、と興味を持つことから始めたら良いと思います。
情熱を持ち、夢中になれるものを見つけ、それを全力で楽しんでください。その姿勢が、未来の成功につながるはずです。
変革を起こす側であり続けること、そして今というプロセスを楽しむことーー。
澤田さんは、スタートアップでの挑戦を考える人々へエールを送る。
澤田さんとの付き合いは、遡ること7年前の2018年3月からになります。当時から、働く場所は違えど、共に進化の中心へ歩んでいる大切な仲間の一人です。彼と出会った当初から、スタートアップ業界で志を燃やし、業界を牽引する仲間になってほしいと考えていました。その理由は、彼が学生時代に海外のベンチャー企業でインターンを経験しながらも、新卒では大手企業に入社した経緯を持っていたこと、そして何より私と同世代であり、近い境遇や価値観を共有できると感じたからです。
そのため、短期的な転職支援ではなく、長期的にキャリアビジョンを共に達成するという考えで澤田さんに接していました。結果として、3年越しにグラファーへの転職を支援することとなり、彼が会社の経営を支える中心人物になったことを本当に嬉しく思います。
直近の会話を通じて、彼の視座や視点が現場社員のものから経営者としての目線へと変化していることを実感し、1年前からの目覚ましい成長に感動を覚えました。スタートアップは、それほど環境変化が激しく、濃密な時間が流れる場であり、個人の急成長を実現できる環境であると私たちは信じています。
本インタビューをきっかけに、スタートアップへの挑戦を志す方が一人でも多く増えれば、これほど嬉しいことはありません。
村上 修一
タレントエージェンシー本部 シニアマネージャー
プリンシパル
早稲田大学卒。クラウドソーシング事業を手掛けるクラウドワークスに入社。ソリューション営業・新規事業立ち上げに従事。2017年12月にフォースタートアップスに入社。2023年5月より、タレントエージェンシー本部シニアマネージャー。エンジニア組織の組閣支援や、急拡大する組織の採用コンサルティング支援実績あり。
・リクルート主催『GOOD AGENT AWARD 2022』ベンチャー/CxO部門 金賞受賞
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