「難しい環境で意志決定が出来ることが、スタートアップの魅力」セーフィー CPO 白石 久也氏が追求する課題解決

2023-03-15

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*2024年9月30日時点

「映像から未来をつくる」をビジョンに掲げ、クラウド録画サービスを軸にこれまでにない課題解決を提供していくセーフィー株式会社(以下、セーフィー)。同社のCPOとして活躍する白石 久也(Hisaya Shiraishi)氏のキャリア軸に迫ります。

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白石 久也(Hisaya Shiraishi)
大学卒業後エンジニアとしてSIer に入社し金融系システムの開発に携わったのち、2002 年にヤフー株式会社(以下、ヤフー)に入社。Yahoo!メールやYahoo!プレミアムなど20以上のサービスのプロダクトマネージャー・事業責任者を担う。2018 年からは株式会社GYAO(以下、GYAO)の取締役となり、映像サービスGYAO!のプロダクト責任者として開発部門を管掌。その後、ヤフーとLINE株式会社(以下、LINE)のエンタメ部門を統合したZ Entertainment株式会社(以下、Z Entertainment)のCPO室長として、同社のエンタメ領域のプロダクト戦略立案等をリード。2022年6月にセーフィーに入社。2023年1月からはCPOとしてセーフィーのプロダクト全体を統括。

目次

  1. 防犯カメラはソリューションの一部。映像プラットフォームとして事業を展開していくセーフィーと白石さんの役割
  2. 2002年当時のヤフー
  3. Yahoo!メールやYahoo!プレミアム。名前を覚えてもらうことが指名につながる
  4. 一番大事にしているのは「目線合わせ」
  5. ヤフーを出ようと思ったきっかけ
  6. セーフィーに感じたのは圧倒的な課題解決領域の広さ
  7. 白石さんにとってスタートアップで働く魅力とは

防犯カメラはソリューションの一部。映像プラットフォームとして事業を展開していくセーフィーと白石さんの役割

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まずはセーフィーの事業内容と白石さんの役割について教えてください。

セーフィーはクラウド録画サービスを提供しています。防犯カメラが提供例としてわかりやすいですが、それはあくまでソリューションの一部。

事業としては、テキストよりもはるかにリッチな映像というデータ領域においてセーフィーがスタンダードとなる映像プラットフォームとしての姿を目指しています。

その中で私はいまはCPOとしてセーフィーのプロダクト全体を統括し責任を持つ役割を担っています。

プロダクトサイドにはVPoPとして植松 裕美さんもおられますが、お二人の役回りの違いはどのようなところにあるのでしょうか?

重なる部分はすごく多いのですが、大枠は私がプロダクトに対して責任を持ち、組織運営を植松さんが見ている形となります。

私はもともとヤフーから来ていて、Webサービス領域は強いと思っているのですが、逆にハードウェアなど得意ではない領域は植松さんにお任せするなど、それぞれの得意不得意でも役割を分けています。

2002年当時のヤフー

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白石さんのキャリアで印象として強いのがヤフーでのご経験ですが、ヤフーへ至るまでについて教えていただけますでしょうか。

高校時代から理系で、大学も工業大学だったこともあり「ものを作れるスキルを持って世の中に出たい」と、1社目は社員数が1,000人規模のSIerにエンジニアとして入社し、当時は大規模金融システムを開発していました。

ただ、既に仕様が決まったシステムを数百人で開発していると「部品」をつくっている感覚で、世の中に対してどういう価値を提供できているのか実感しづらかったこともあり、もっとお客様への提供価値が実感できるものづくりがしたいと考えるようになっていきました。

ヤフーに転職することになったのはちょうどそのようなことを考えていた頃です。先にヤフーに転職していたSIerの先輩からお誘いを受けたのですが、Webサービスは世の中で使われている実感が得やすいものづくりができると思い、入社しました。

白石さんが入社された当時のヤフーの様子について教えて下さい。

私がヤフーに入社した2002年当時は社員数400名規模ながら100プロダクトを展開。前年度150%成長が当たり前の急成長期でした。

今振り返ってものちにIT業界で名を馳せる方が社内に数多くいて、元Facebook Japan代表の児玉太郎さんや、現在は暗号資産取引サービスの「Coincheck」を提供しているコインチェック株式会社のCTOである松岡剛志さんら、多くのタレントが在籍し切磋琢磨している状況でした。そのようなタイミングを経験できたことはラッキーだったなと思います。

Yahoo!メールやYahoo!プレミアム。名前を覚えてもらうことが指名につながる

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ヤフー入社後最初に担当された仕事はなんだったのでしょうか。

一番最初にアサインされたのが、サブではあるものの、いきなりYahoo!メールのプロダクトマネージャーでした。

当時のYahoo!メールは、ユーザーにYahoo! JAPAN IDを作成いただく一番のきっかけになっており、会社としてもマイクロソフトのHotmailに追いつけ追い抜けというスタンスで力を入れていましたが、あまりにも手が足りておらず、声がかかったという背景です。

Yahoo!メールは、インターネットの歴史に残るほどの大きなサービスだと思います。その分大変だったことも多かったのではないでしょうか?

そうですね。Yahoo!メールは注目度が高い分、経営層からの要望も非常に多かったです。

また、入社した当時はWebサービスについての理解が浅かったためエンジニアから信用されておらず、作った仕様書にダメ出しをされては作り直してという連続。なんとか食らいつくという状況でした。

しかしながら社内の優先度が高いサービスだったこともあり、やっていくうちに新人ながらも担当していることで社内で顔と名前を覚えてもらうことができました。

私はヤフーではどちらかと言うと、自分自身で狙ってキャリアを取っていくというよりは、アサインされたプロジェクトで成果を出して次のプロジェクトに指名されるというタイプでしたが、成果を出して顔と名前を覚えてもらうことはチャンスを掴む上で大事なことだと思います。

具体的に顔と名前を覚えてもらったことでチャンスを得たというエピソードがあれば教えていただきたいです。

例えば2014年に当時も約1000万人のユーザがいて年間数百億円の売上を生み出していた「Yahoo!プレミアム」の事業を立て直す担当にアサインされたことはまさにそうでした。

1つ前に川邊健太郎さん(現・Zホールディングス株式会社代表取締役)と取り組んでいたのが「Yahoo!みんなの政治」というサービス。

規模感は大きくないながらも川邊さんが仕事ぶりを評価してくれていて、当時Yahoo!プレミアムの責任者だった田中祐介さん(現・ヤフー執行役員)が川邊さんに「信頼出来るディレクターが欲しい」と相談した際に川邊さんが私を推してくれたことがYahoo!プレミアムという大きなサービスの担当にアサインされたきっかけでした。

一番大事にしているのは「目線合わせ」

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Yahoo!プレミアムなど、誰もが経験できるわけではない大きなプロジェクトを形にしてこられたと思いますが、白石さんが仕事を進める上でのコツはあるのでしょうか?

目線合わせを一番大事にしています。

例えばYahoo!プレミアムの立て直しは、ヤフオク!、Yahoo!ショッピング、ソフトバンクの連携がカギだったのですが、当初はそれぞれが自分たちにメリットがあるように調整や交渉をしているような状態でサービス全体としてなかなか良い形で進んでいきませんでした。 その中で、同じ方向に向かっていけるよう目線合わせを実施した結果、全体としてよい方向に進むことができた、というエピソードがあります。

目線合わせにあたり、ときには現場に苦言を呈することもあるのではと思いますが、簡単ではないと思います。そのようなときはどの様に伝えているのでしょうか?

何をやりたいのかを確認しながら「そのやり方だったら、こういう結果になりそうだから、こういうやり方にしませんか?」と話すようにしています。

例え間違っていても発言力が強い方の意見が正になってしまうこともあれば、エンジニアの方の開発優先度が現状ニーズと合っていないケースもあります。

でも、みんな基本的には事業を成長させたいんですよね。どうしても目先のhowの違いで議論しがちですが、実は「何を実現したいか」を共通認識として持てれば、howの方向性も擦り合っていき自ずと同じ方向性に向かって進むことができますし、その方が断然成果として形になりやすい。

私はZ EntertainmentでヤフーとLINEの統合、つまり日本と韓国という言葉も文化も異なるチームをどうひとつにしていくかという課題も経験しましたが、例え通訳を通したコミュニケーションになったとしても、同じ方向に向かってひとつになるためのカギが目線合わせであることは変わらないと思います。

ヤフーを出ようと思ったきっかけ

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白石さんはどちらかというと「アサインされた場所で力を発揮するタイプ」という話もありましたが、なぜヤフーから出ようと思われたのでしょうか?

今までチャンスをいただいた場所で成果を出すというスタンスでいたため、自分から新しい場所に行こうと考えたのはセーフィーへ転職するタイミングが初めてだったかもしれません。

きっかけは、楽に仕事ができてしまうことに気づいたことです。

Yahoo!プレミアムのあとにGYAOに行き、組織を立て直すところまでは目の前の課題解決に面白さを感じていたのですが、段々と一見難易度が高くとも長くヤフーにいたことによる社内の関係値を使うと解決できてしまうケースが多くなってきて、もっとひりひりする環境で仕事をしたいと思い、ヤフーを出ることにしました。

その時にコンタクトしていただいたのが山下太地(フォースタートアップス シニアヒューマンキャピタリスト)だったと思います。白石さんなら他の転職相談ルートや知人のビジネスパーソンとの接点も多いのではと思いますが、山下に支援を預けていただけたのはどんな理由からですか?

山下さんの熱意とレスポンスの速さです。

お会いした際の「この会社の良い所はここです」というプレゼンが熱く、山下さんが紹介してくれると、その会社に興味が沸きましたし、その会社の人でもないのにこんなに「良い」と言えるってすごいなと思いました。

いろんな方にお会いしましたが、ここまで企業のことを熱く話してくれる方は他にいませんでした。 また、すごくマメに連絡をいただき、レスポンスも心地よかったです。面談が終わったタイミングで必ずメッセージをいただきました。その際に「今こういうことを考えています」という自分の考えを伝えていたのですが、いつも客観的な視点で意見をいただきました。

すぐに考えを整理したいホットなタイミングでのやり取りが、自分の意志を整理することにもつながり非常にありがたかったことを覚えています。

セーフィーに感じたのは圧倒的な課題解決領域の広さ

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他企業からも引き合いあるなか、なぜ次の挑戦先としてセーフィーを選ばれたのでしょうか?

ソリューションの提供可能性の圧倒的な広さです。

それまでどちらかというとオンラインに閉じたWebサービスを扱っていましたが、やっていくとECにしろアプリにしろ、課題解決の手段としてのサービスも打ち手もどこか見たことがあるものになってきます。

それに対しセーフィーの「映像×ソリューション」領域であれば、例えば混雑状況に応じたサービスなどWebサービスだけでは提供できない課題解決ができる。可能性しかないなと思いました。

また、私はプロダクトのよさにこだわりたいタイプ。入社後、CEOの佐渡島がミーティングの度に「これは本当にプロダクトとして誇れるクオリティなのか」と話しているのを耳にしますが、経営陣がプロダクトを大切にしていてプロダクト目線で議論ができることもセーフィーがよいと感じている要素です。

白石さんにとって、よいプロダクトとは、どういう状態のことを指しますか?

シンプルに「そのスペックで欲しいと思えて、実際触ってみても"いいね!"となり、買ってもすごく満足」と、自然と売れる状態になっていることです。

こちらが良くないと思っているものを営業力だけで半ば強引に売っていると、売れるのだからいいだろうとプロダクトを良くしていくことから離れていきがちですし、お客様にも失礼。無理やり売って使ってもらうのではなく、胸を張って「いいものです!」と言えるプロダクトをつくっていくことにこだわりたいです。

白石さんにとってスタートアップで働く魅力とは

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白石さんにとって、ヤフーという誰もが知る企業で実績を残されてきたなか、それ以上にスタートアップやセーフィーで働く魅力はなんでしょうか?

私はこの先もずっと、働く限り成長していきたいという気持ちを持っています。

お金を稼ぐという目線ももちろんありますが、出来るだけ長く人に対して貢献していきたい。人から頼られなくなったときは自分がダメになるときだと思っているのですが、そのためにはずっと成長し続ける必要があります。そして成長する為に一番良いのは、整っていない環境で働くこと。その中で自分で意志決定をすること。それを繰り返すことで成長できるのだと考えています。

逆に言えば、激動の状況にいたって、言われたことしかしていない人は伸びない。難しい環境で意志決定が出来ることが、スタートアップの魅力だと思います。

セーフィーに入ってから、実際にプロダクト面でも組織面でも課題にたくさん直面していますが、私自身それを望んでここに来たこともあり、逆に課題が発生すると「きたきた!」という気持ちになります。課題を解決出来ることは面白いですし、解決の引き出しも増えて経験値が上がっていくことをまさにいま感じていますね。  

最後に、白石さんが考えるプロダクトとしてのセーフィーの面白さと可能性を教えて下さい。

セーフィーに意志決定した理由にも通じるのですが、課題解決領域と学べることの多さです。セーフィーはWebサービスもあって、デバイスもあって、ネットワークも詳しくないといけない。AI領域の知見も必要です。

また導入先も店舗や建設現場など環境要因もたくさんあるので、とにかく変数が多い。幅広い知見が得られて、ソフトウェアだけでは解決できない課題解決が可能です。

ビジネスチャンスしか無い環境でいつまで経っても終わらないくらい学ぶことややることがあり、長く楽しめることがセーフィーの魅力だと思います。

白石さんをご支援したヒューマンキャピタリスト

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山下 太地(Yamashita Taichi)
フォースタートアップス株式会社 シニアヒューマンキャピタリスト 兼 MGR
大学在学時のアメリカ滞在経験をもとに、日本の成長に危機を感じ、2017年9月より、日本の成長産業支援をミッションにしていたフォースタートアップス(旧:NET jinzaibank)に参画。国内最大級のスタートアップデータベース「STARTUP DB」の立ち上げに関わり、企画、データベース運営、起業家インタビューや、スタートアップ分析の記事など幅広く経験。2019年より、ヒューマンキャピタリストとして活動し、「STARTUP DB」立ち上げの際に得た国内の成長産業領域の情報をもとに、スタートアップへの採用支援に従事。現在はシニアヒューマンキャピタリストへと昇格し、MGRとして育成、マネジメントに従事。BizReach 「UNDER 30 MATCHING AWARDS 2021」ファイナリスト。
EVANGE - Director : Hanako Yasumatsu / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Kozue Nakamura / Editor:Akinori Tachibana / Assistant Director : Makiha Orii /Photographer : Hideaki Ichikawa
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