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未来に向かって真っ直ぐに生きる。フェズ田中 友幸 執行役員の挑戦の根源とは

約140兆円の市場規模でありながら、データ活用率が約7%と課題の大きい小売業界。メーカー企業と小売店舗の間に立ち、「両社の売上アップに繋がるマーケティングを目指すOMOプラットフォーム事業」と、「売上が伸びる店頭づくりを目指す小売DX事業」を通して、小売業界の課題にアプローチする株式会社フェズ。同社の執行役員として活躍する田中 友幸(Tomoyuki Tanaka)氏のキャリア形成、企業選択の軸に迫ります。

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“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。for Startups, Inc.のヒューマンキャピタリスト久保田 匠海(Takumi Kubota)と申します。

私たちが所属するfor Startups, Inc.では累計650名以上のCXOを含むハイレイヤーや経営幹部クラスのご支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。

EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。

田中 友幸(Tomoyuki Tanaka)
東京都出身。東京工業大学大学院卒。1999年三井(現三井住友)海上火災保険株式会社にて、商品開発部門からキャリアをスタートした後、株式会社大広で約4年、株式会社電通で約13年、広告ソリューションの変革期を最前線で経験。特に電通時代は、大手流通企業を延べ10年担当し、クライアントの経営層と共に同社の広告戦略及びDX戦略をリード。また、電通グループにおけるBtoBマーケティングの新たな手法を開発し、大手電機メーカーの経営層を中心にコンサルテーションを実施し、大型プロジェクトも数多く推進。2018年にCriteoに転じてからは、日本のみならずグローバルパートナー戦略の立案、営業体制の再構築等にも従事。日本を中心として多くのパートナー企業とのジョイントビジネスを手掛ける。2021年4月株式会社フェズに参画。

小売業界の変革パートナー。フェズの事業内容とは

-- 本日はよろしくお願いいたします。まずは、フェズの事業内容と田中さんの役割について教えていただけますか?

フェズは小売業界の変革パートナーとして、実店舗での売上が本質的に上がるビジネスモデルをつくり、小売店・メーカーの皆様がWin-Winとなるプラットフォームを提供しています。小売店における売り場の状態やオフラインの購買行動をすべてデータで可視化することで、各種データに基づいた棚割り・商談が実施され、各チェーンごと・各店舗ごとに売上が上がる独自の売場が展開される世界観を目指しています。

私はその中で、パートナーである広告代理店の皆様との連携強化や、小売事業者へのアライアンス提案、オンラインとオフラインを組み合わせたソリューションの開発に携わっています。

人生はエネルギーの交換。正しく、そして楽しみながら生きる

-- 田中さんの過去を遡らせてください。新卒で三井住友海上火災保険株式会社(以下、三井住友海上)に入社されていますが、入社までの経緯を教えていただけますか?

三井住友海上に決めた理由は、「正しいことをする」という私が大事にしている価値観を、会社としても大事にしていると感じたからです。というのも、私の大親友が三井住友海上の会社説明会に遅刻してしまって、参加できなかったと聞きました。遅刻しても説明会に参加させてくれる企業もある中、学生に媚を売ることなく、正しく向き合う姿勢が私の生きるスタンスに似ていると感じたのです。

-- なぜ、「正しさ」を大切にされるようになったのでしょうか?

家庭環境が大きく影響していると思います。祖父は「正しさ」を体現している人で、亡くなって1年経っても、仏前で涙を流して帰る人が大勢いた、と母から聞きました。どうやら祖父は、困っている人を放っておくことができなかったらしく、他者のために自分ができることを真っ直ぐに実行する、まさに「利他の心」を体現した人だったと、母は誇らしげに語ってくれました。

その光景を思い浮かべ、私も祖父のように正しく生きたい、できることは「正しく」やろうと思い、生きてきました。

また、8歳年下の弟がダウン症という影響も大きかったと思います。弟がある日、近所の公園でいじめられて、泣きながら帰ってきたのです。私は中学生ながら、いじめた子どもの母親に公園で注意したこともありました。小さい頃からとにかく曲がったことが大嫌いでしたね。

--「正しさ」の他に、田中さんが大事にされてきた考え方はありますか?

「いかに人生を楽しむか」ですね。実は、高校1年生の時に命に関わる重大な交通事故に遭って、その時「意外と人はあっけなく死んでしまうんだな」と身にもって感じました。その時から「自分は生かされているんだ。一度きりの人生を楽しまなければもったいない」と考えるようになりました。

-- 正しく、そして楽しみながら生きる。とても素敵なスタンスですね。

私は、生きることの意味を「エネルギーの交換」と表現しています。いつも周りから知恵やアイデア、そして元気などさまざまなエネルギーをもらい、「楽しむ」エネルギーを周りに送っていく。そうやってエネルギーを交換しながら、自分の周り、その周りの人のさらに周辺、そして社会が成り立っていると思うんです。弟が生まれてきてくれたことも、交通事故に遭ったことも、この考えを持つことに大きな影響を及ぼしていると感じていますし、とても感謝しています。

順風満帆に思えたある日、ふと未来に目を向ける

-- 少し話は戻りますが、新卒で選ばれた三井住友海上はいかがでしたか?

入社当時はかなり苦戦して、新人研修時に毎日壁に貼り出される成績は、全体の下から4番目がほぼ定位置でした。ただこの研修が、学びつづけることの大切さを実感する良い機会になったことは間違いありません。そういう意味では、社会人スタート時から非常に貴重な経験を積むことができました。

また、「大企業では、若いうちは仕事を任せてもらえない」という定説も払拭されました。

2年目で配属された商品企画系のセクションで、私が対応したものがそのまま商品に反映されたことがあり、大企業でも若手に重要な仕事を任せてもらえることを知りました。

ただ、これには裏話もあって、「本当に大丈夫ですか」と上司に尋ねたら、「事前に全箇所、細かく確認しておいたから大丈夫」と言われて、上司の懐の広さも感じましたね。(笑)

-- それでも、そのまま三井住友海上に居つづける選択肢は無かったんですよね。

はい。ある日、この仕事の楽しさはこの先もつづくのだろうかと一抹の不安を覚えました。そこで、自分がスタープレイヤーだと感じた先輩約20人に、会社に居る理由をインタビューしたのです。その時の回答が、私が描きたかった像と離れていたこともあり、転職を考えはじめました。

関わる全員を幸せにするため、未経験の広告の世界へ

写真右中央:電通時代の田中さん

-- 当時は、どのような転職活動をされていたんですか?

元々広告代理店に興味をもっていたこともあり、広告代理店に絞って転職活動をしていました。マーケティングの支援を通じて、消費者へ有益な情報や価値を届け、クライアントの利益を向上し、結果として広告代理店もその恩恵に預かる、というWin-Win-Winのモデルに携われることがとても良いなと感じていたからです。

また、当時は金融再編の中で、広告代理店が金融機関出身者を熱量高く採用したいという情報もまことしやかに囁かれており、タイミングが重なったことも大きかったです。若さゆえの自信満々な私を受け入れてくださった大広に懐の深さを感じ、大広への転職を決めました。

-- 全く違う業界への転職でしたが、入社されていかがでしたか?

想定していた通り、ビジネスがWin-Win-Winなモデルで、自分の介在価値を感じることができました。

また大広では、「自分たちが介在し、付加価値を創ることで高く売る」というビジネスの基礎を学ばせてもらいました。あるソリューションやサービスを提案する際、外部協力会社を使って企画立案するのではなく、自分たちが関わることで「独自性のあるアイデア」を実装し、報酬をいただく。「高く売る」とは、自分の介在価値を発揮できた証であると学びました。

-- その後、電通に入社されてますよね。

はい。電通に転職した理由は2つです。1つは、コンペティションでいつも多くの案件を受注しており、そのからくりを解き明かしたかったこと。もう1つは、そんな電通で自分がどれくらい通用するのか力を試したくなったからです。

-- 実際に入社されていかがでしたか?

電通は日本で1番仕事をする会社と感じましたね。「仕事をする」というのは、仕事量はもちろんそうですが、「クライアントの期待値を超えることが当たり前」という仕事の取り組み方そのものを指しています。

電通社員は「クライアントのビジネスを成功させたい」「消費者に有益な商品価値や情報をタイムリーに届けたい」という計り知れない想いを持って仕事に取り組んでいました。クライアントの課題を中長期的に解決しながら、一方で短期的に消費者へ良質なコンテンツや情報をお届けする。電通では本当に良い経験をさせてもらいました。

「自分は一体、何ができる人間なのか」大学院に通いながら自問自答しつづけた日々

-- 電通ではすごく充実した日々を過ごされていたのですね。当時、何か成し遂げたいことなどあったのでしょうか?

実は、これと言って思いつくものはありませんでした。むしろ、40歳になった時に「何ができるか」を強く意識しながら、とにかく幅広い経験を積むことに注力しました。大広に比べると業務領域が非常に広かったこともあり、電通でしか得られない経験は多かったと思います。

その中で、ありがたいことにクライアントからお褒めの言葉をいただくこともありました。ある時、そのクライアントに「あなたは稀有な経験をしているよね。さまざまなノウハウが蓄積しているから、これから一層活躍できますね」と言われたことをとても印象的に記憶しております。

ただ当時は、一体自分は何ができる人間なのか、蓄積したノウハウなんてあるのか、と褒められた理由が分かりませんでした。それを解明するために、これまで培ってきたノウハウを言語化し、体系的に整理したいと思い、電通で働きながら大学院に通うことを決めました。

-- 実際に大学院に通われてみていかがでしたか?

当初は、これまでの経験を言語化し、体系的に整理することにこそ意義があると考えていましたが、私にとってそれ自体に大きな意義はないと気づかされました。あくまで私の見解ですが、論文や研究は、その多くが「過去」の出来事を体系化したものです。私は未来に向かって生きるビジネスパーソンであり、ただ体系化するだけではなく、そのノウハウを活用し実社会にどのように貢献ができるかが大事だと考えるようになりました。

-- 田中さんの考えが大きく変わる転機になったんですね。「実社会への貢献」に向けて、田中さんはどのように事業への関わり方を見出したのでしょうか?

実社会に目を向けたときに、日本の会社は技術力が高く、目の付け所もいいのに、ビジネスとしてうまくマネタイズができていない「技術と経営の結びつき」に課題があると感じました。

たとえば、東芝がつくった羽のない扇風機は、製品化せず特許を失効させ、その後、ダイソンが近しい見た目の商品を発売して新たなマーケットを開拓していたり、日立アメリカが特許を出願した技術が、後にGoogleの検索エンジンのベースになったのは、技術をビジネス化できていない事例と言えます。

その課題に気づいた時、大学院で研究した「技術経営*1」の領域とこれまでの経験をもとに、「素晴らしい独自技術や開発力」を「マネタイズする」ビジネス視点で自分の介在価値を発揮できるのではと考えました。日本が持つ素晴らしい技術をビジネスと接続することで、技術を社会に実装し、さらには日本の企業が世界で戦っていくことに貢献したいと思うようになりました。

*1 技術に立脚する事業を行う企業・組織が、持続的発展のために、技術が持つ可能性を見極めて事業に結びつけ、経済的価値を創出していく経営

これまでの経験を日本の企業のために。自らの介在価値を発揮できるステージへ

-- 自分が何者かを問いつづけた結果、田中さんの目線が実社会、日本へと向いたのですね。その想いに気づいたとき転職活動を始め、弊社のシニアヒューマンキャピタリスト町野 友梨とお会いいただきました。

町野さんの目は本気でした。大学院での学びを経て、私の中で芽生えた「日本企業のために貢献したい」という思いを伝えたとき、「フェズという会社を知ってますか?」と、ものすごい熱量でフェズを紹介してくださいました。他のヘッドハンターとは、何か違うものを感じましたね。

-- 実際にフェズとお話しされてみて、いかがでしたか?

フェズは消費を活性化することで「日本の経済の底上げ」に向き合っており、まさに私が思い描いた手段で介在価値を発揮できる環境だと感じました。

また、テクノロジーカンパニーという側面だけではなく、時にはアナログな手法も交えながらソリューション開発を行っている点もフェズの魅力だと思っています。デジタル化が進むこの社会の中で、何がなんでもテクノロジーで解決することに拘らず、地域を元気にするためにテクノロジーとアナログを柔軟に併用し、スピード感を持って解決策を提示する事業は非常に共感できました。

-- 実際に伊丹さん(フェズ 代表取締役)とお話しされた印象はいかがでしたか?

ミッションを本気で実現しようとする伊丹の真っ直ぐな思いも、フェズへの決め手の1つでした。「社会に変革を起こすんだ」と本気の思いが伝わってきたことは、入社を決める後押しになりましたね。

実際に入社するまで、細かく何をやっている会社かはっきり理解できていませんでしたが(笑)、同じ志を持った仲間に支えられて、今では正しくコトに向かうことができています。

「消費」そして「地域」を元気に。田中さんが目指す未来と一緒に働きたい人物像とは

-- 今後、田中さんが取り組みたいことについて教えてください。

フェズという会社はまだまだ発展途上で、今後さらにダイナミックな成長をしていく会社だと強く感じています。

そのような環境の中で、小売事業者、メーカー、消費者のWin-Win-Winモデルを追求したソリューションの開発と、それに耐えうる組織にするために、日々進化し、成長しつづける組織づくりに全力で取り組んでいきたいと思います。

-- 最後に、どんな人と一緒に働きたいか教えてください。

1つは、変化を喜び、変化を楽しめる人に来てほしいですね。スタートアップは特にそうですが、とにかく変化が速い。スピード感のある変化に適応しながら、楽しめるような人と働きたいと思っています。

もう1つは、ざっくりですが大企業出身の方にも来ていただきたいですね。より多くの方に私たちのソリューションを届けるには、必然的に大企業の方と接する機会が増えてきます。そのため、大企業の中で培ってきた経験はフルに活かせる環境だと思っています。前述の変化の激しさの中でも、楽しく挑戦できる環境がスタートアップ、特にフェズにはあるので、最初は戸惑いもあると思いますが、ぜひ一緒に働きたいですね。

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久保田 匠海(Takumi Kubota):高校在籍時、日本の教育に課題を感じ、大学では教育学を専攻。在学中は、大学と社会の接続をメインテーマに、複数のNPO団体で学生のキャリア支援に従事。その後、"業界自体を変革する壮大なビジョン"に感化され、新卒でウェディング業界のスタートアップに入社し、法人営業に従事。経営統合のタイミングで退職し、「スタートアップでのキャリアを選択し、挑戦する人を増やしたい」という思いでフォースタートアップスに参画。ヒューマンキャピタリストとして、スタートアップへの採用支援を行い、オウンドメディアのEVANGEを担当。
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EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Takumi Kubota / Editor:Shota Nakamura, Hanako Yasumatsu / PR : Hitomi Tomoyuki, Megumi Miyamoto / Photographer : Takumi Yano

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