「個人勝負からチーム勝負へ、業界変革から社会変革へ。」enechain VPoE 西村 洋一 氏の価値観の変遷とエネルギー業界への挑戦

2022-11-30

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*2024年9月30日時点

「Building energy markets coloring your life」をミッションに掲げ、国内最大のエネルギーマーケットプレイスを運営する株式会社enechain。 VP of Engineeringとして開発組織づくり、カルチャーづくりに奮闘する西村 洋一(Yoichi Nishimura)氏のキャリア形成、企業選択の軸に迫ります。

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西村 洋一(Yoichi Nishimura)
グリー株式会社、株式会社VASILY、株式会社bitFlyerにて、モバイルサービス開発に従事。暗号資産取引アプリ『bitFlyer』の開発・運用や、マネージャーとしての各種マネジメント業務を経験した後、2021年9月enechainに入社。エネルギートレーディングプラットフォーム『eSquare』のモバイルアプリの開発マネージャーとして従事した後、現在はVPoEとして、開発組織全体のマネジメント、採用、開発組織づくりを担う。

目次

  1. 「もっと自由に電力のトレードを。」enechainの事業内容とは
  2. プログラミングとの出会い、没頭するものづくり
  3. 役割の幅を広げることで芽生えた採用への情熱
  4. チームのアウトプットの最大化に向けて、本格的にマネジメント職を全うする
  5. いち業界に止まらず社会を変える。enechainに感じた魅力
  6. 組織マネジメントに向き合う弛まぬ努力と開発者としてのこだわり
  7. 社会を変える飛び道具はない、仲間と共にエネルギー業界の変革へ一歩ずつ

「もっと自由に電力のトレードを。」enechainの事業内容とは

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-- はじめに、enechainの事業内容について教えてください。

enechainは国内最大のエネルギーマーケットプレイスを運営するスタートアップです。エネルギーのフェアプライスを見える化する「価格発見機能」、フェアプライスに基づいて商品を売り買いし行き渡らせる「流通機能」を提供しています。具体的なサービスは、あらゆる企業が様々なエネルギー商品を売り買いできるオンライントレーディングプラットフォーム「eSquare」、世界中のマーケット価格を分析しやすい形で視覚化し、タイムリーに提供するアプリケーション「eCompass」 です。

2016年に電力自由化が行われて6年が経っていますが、今も大手電力会社の存在は大きく、完全な自由化に成功したと言えるにはまだ課題が残ると一般的にも指摘されています。enechainでは、フェアで透明性の高い様々なエネルギー商品のトレードを通じ、人々が自分の価値観に合ったエネルギーを自由に選択できる社会を目指してプロダクトを開発運営しています。

-- その中で、現在の西村さんの役割について教えてください。

VPoEとして、開発組織全体のマネジメントを担当しています。メンバーのオンボーディング、会社への定着率の向上をミッションに、採用にもコミットしています。特にエンジニアに気持ち良く働いてもらうための環境づくりは常に心がけています。

-- enechainにはエンジニアリングマネージャーとして入社し、直近VPoEになられました。どのような役割の変化がありましたか?

これまでは管掌範囲が小さい単位でしたが、今は開発組織全体を見るようになったという点で、入社当時から役割は大きく変わりました。また、我々はテクノロジーの力によってエネルギー業界の変革を目指しているため、テクノロジー文化を全社的に定着させることを常に意識しています。

-- 具体的にはどのような取り組みを行っていますか?

例えば、社内のオールハンズミーティングで私が話す機会がある時には、あえて技術の話を多くするようにしています。それは「エンジニアが活躍する会社」という社内PRの一環でもあり、enachainがITテクノロジーを活用してビジネスを展開している「テック企業」と胸を張って言える組織を目指しているからです。エネルギーテックカンパニーになるために、まだまだやれることはあると思っていて、まずはその一環で社内の環境づくりに力を入れています。

プログラミングとの出会い、没頭するものづくり

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-- 学生時代に遡ってお話をお伺いします。西村さんが最初にエンジニアリングに興味を持ったきっかけを教えてください。

大学3年生の時に、株式会社エニグモ(以下、エニグモ)にビジネスインターンに行ったことがきっかけです。当時のエニグモは規模が小さく、インターンでは仮想の事業立ち上げを経験しました。その時に「この業界は、ものづくりができないとだめなんだな」と強く感じたことが、エンジニアリングに興味を持つきっかけとなりました。

インターン後、プログラミングができるアルバイトを探していて、京都にある株式会社スプーキーズという会社で、実践的なプログラミングに触れました。メディア、ECサイトなどのプロダクト系の開発の一部を担当していたのですが、それがすごく楽しくて。大学生後半は、とにかくアルバイトに没頭し、教授に怒られながら大学を卒業しました(笑)。

-- その後、グリー株式会社(以下、グリー)に就職されますが、当時どのような背景でグリーを選ばれたのでしょうか?

私が企業を選ぶ上で一貫して大事にしていることは、成長産業に身を置くことです。私がグリーに入社した2010年頃は、ソーシャルゲームがとても盛り上がっており、まさに当時の成長産業でした。こんなに盛り上がっているなら、人も多く集まり新しいチャレンジができると思ったこと、また社会的に大きなインパクトを与える業界で仕事ができると思い、プラットフォーマーになる企業を受けようと考えました。

-- 実際に入社されていかがでしたか?

念願だったプログラミングが出来る環境で、毎日辛かったけど非常に楽しかったです。当時のグリーには一流のエンジニアが揃っていて、技術力の高い方が多く、仕事についてくのがやっとでした。

-- 大変な環境にいながらも、モチベーション高く事業に向き合えた理由はなんでしょうか?

とにかく周りがすごかったので「追いつくために成長したい」という気持ちが大きく、それが原動力になっていました。周りの役に立ちたい気持ちがあるのに、チームに価値をだせている実感を持てなかったのです。スキルが及ばないのであれば時間で賄おうとがむしゃらになっていました。

-- 西村さんは当時23歳くらいだったと思うのですが、その年齢で「自分が価値を出せているかどうか」という視点をお持ちだったのですね。

それぐらい周りがすごかったので、彼らについていこうとすると、本気で、がむしゃらにやるしかありませんでした。当時一緒に働いていた同僚は、今ではCTOとして活躍している方も多くいます。そんな周りの優秀なエンジニアを見ながら、自分で考えてできることを見つけて取り組むスタンスが磨かれました。

役割の幅を広げることで芽生えた採用への情熱

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-- その後、どのようなきっかけでグリーからの転職を考えられたのでしょうか?

私がグリー入社したのは上場直後のタイミングで、社員が150名ほどでした。在籍した3年間で約2,000名に増えており、これだけの急成長過程をグリーで過ごす中で、「古株の方たち、創業初期から事業をつくり、伸ばしている人たちがとてもかっこいいな」と思ったのです。そこから事業を初期から作ることに関心を持つようになり、スタートアップへの興味が一気に高まりました。そのタイミングで知人の紹介でご縁があり、27歳の時にグリーを退社し、女性向けのファッションアプリを提供する株式会社VASILY(以下、VASILY)へ転職しました。

-- 組織規模も大きく変わったと思いますが、VASILYでの経験はいかがでしたか?

VASILYに入社して衝撃的だったことは、プロダクトだけではなく、組織をつくっていくことが仕事になったことでした。社員の人数も少なく、部署や職種を越えて様々な仕事をすることが必要な環境で、それがきっかけで私も開発だけではなく採用に関わるようになりました。

当時は、女性向けのファッションアプリを作りたいエンジニアがとても少なく、現在もenechainで採用活動をしていますが、今の数倍のパワーをかけても、やっと1人か2人採用できるという状況でした。毎週末、逆求人イベントに行って、学生にVASILYのプレゼンを行い、とにかくできることはなんでもやるというスタンスで採用に奔走していました。この時の経験がなければ、今ここまで採用にコミットする情熱は持てなかったので、とても良い経験だったと思います。

-- そこから現在に至るまで、西村さんは採用、マネジメントにコミットしていらっしゃいます。組織を見ることによって、自身が開発に関わる時間がどんどん減っていくと思いますが、もともとものづくりに携わりたい思いがあった西村さんの中で葛藤はなかったのでしょうか?

おっしゃる通り、最初は自らが開発に携わりたいと思っていましたが、採用を通じて考え方が変わりました。自分一人で出す結果よりも「チームで出すアウトプットが重要」という価値観に変わり、ある時から、周りのメンバーが結果を出す方が嬉しいと感じるようになりました。「仕事は個人ではなくチーム。チームでどのように結果を出せるか」に考え方が変わったのがちょうどこの頃でした。

チームのアウトプットの最大化に向けて、本格的にマネジメント職を全うする

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-- 自分が出せる価値にこだわってきた西村さんが、新しい役割を見出されたんですね。そんなVASILYから、なぜ次の転職を考えられたのですか?

VASILYでの仕事をやりきった感覚があり、新しいチャレンジをしたいと考えはじめていた2015年頃に、ビットコインに出会いました。毎日ビットコインに触れているうちにどんどん夢中になり、「これはもう仕事にするしかない」と思うようになりました。そこで、もともとサービスを利用していた株式会社bitFlyer(以下、bitFlyer)とご縁があり入社に至りました。私自身がビットコインに強い興味を持っていた事と、企業選定の軸にある成長産業に身を置くという観点から、業界を変革しうる環境だと思ったことが決め手です。

-- ご自身の興味と、新しいチャレンジが合致したわけですね。bitFlyerでのご経験はいかがでしたか?

bitFlyerでは初めてマネージャーになりました。当時、アプリエンジニアの採用に携わっていた私を見て、ある時、COOからマネージャーに推薦されました。言われた時はすごく驚きましたし、開発に関わりたい気持ちも多少はあったので最初は悩みましたが、周りのメンバーやその時の状況を考えて、自分がマネージャーになることがチームにとって最適だと思ったので、引き受けることにしました。

最近の若い世代はみんなとても優秀です。自分がプレイヤーとして開発するより、優秀なメンバーの活躍の総体で、どんなアウトプットを出せるかに注力することが私の1番の役割だと腑におち、マネジメントにコミットしようと覚悟が持てました。

-- そこからは開発はせず、マネジメント中心ですか?

最初はプレイングマネージャーとして一部開発にも関わっていましたが、自分で開発タスクを抱えていると細かいところに目がいきがちになり、全体を俯瞰して見るのが難しいと感じました。そこからは徐々に開発タスクを減らしていき、メンバーだけでは追いきれないタスクや緊急事態は自分がカバーするようにしていました。

いち業界に止まらず社会を変える。enechainに感じた魅力

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-- そんな中、弊社のヒューマンキャピタリスト町野 史宜が今回の転職をご支援させていただきましたが、bitFlyerにてマネジメントの職位を全うされている中、なぜ転職を検討されたのでしょうか?

bitFlyerで4年間、取引所に向き合っているときに、流動性を高めるビジネスの面白さを知りました。そんな中で町野さんからの紹介でenechainに出会い、エネルギートレーディングにもとても魅力を感じたのです。

-- 最終的にenechainへの転職を決意した決め手はなんだったでしょうか?

2つあって、ひとつは最終面接で代表の野澤の「エネルギー業界を本気で変えようとしている」という話がとても心に刺さったことです。実際、私が今採用していても「野澤さんの話が印象的だった」と話す候補者がとても多いです。

もうひとつは、流動性のあるビジネスモデルが面白いと思いつつ、社会を良くすることをしようというenechainのバリューの一つである「Social good」に惹かれたことです。トレーディングの価値を上げつつ、将来的にはカーボンニュートラルな社会の実装に貢献していこうというenechainのビジョンは、社会性が強く、この事業を通して世の中を変えることができると思ったのです。

もともとは「いち業界を変える仕事がしたい」と思っていたのですが、enechainの仕事を本気でやりきることができれば、いち業界だけではなく、社会、ひいては全世界の人が幸せになるなと。そこに事業的な大きさと魅力を感じたことが、決め手になりました。

組織マネジメントに向き合う弛まぬ努力と開発者としてのこだわり

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-- 事業やビジョンへの強い共感を持ってご入社された西村さんですが、現在、VPoEとして組織のマネジメントをする上で、大切にしていることやマイルールはありますか?

マネジメントする上で大事にしていることの一つに「同じことを5回言う」を意識しています。以前の職場の上司が、人の行動を変えるには5回インプットされないといけないと言っており、私もそれには納得感がありました。メンバーの改善点があれば、オーバーコミュニケーションにならないように期間を空けたり、言い回しを変えたりして5回は言うようにしています。

それと同時に、メンバーにアドバイスをする為には、自分の考えや知識を常にアップデートし続けなければならず、それが今一番苦労していることでもあります。毎日、成長痛に真正面から向き合いながら、組織と共に私自身も成長の真っ只中という感じです。

-- 役割が上がっていくにつれて、人に相談したりフィードバックをもらう機会がどんどん減ってしまうと思うのですが、西村さん自身が迷われた時は、どのように解決を図っていますか?

なにか壁にぶつかった時は、CTOの須藤にすぐ相談しています。良い壁打ち相手になってくれますし、話すことで自分の中に新しい考えをインプットすることもできるので、とても助かっています。

また、細かい事になるのですが、可能な限り全Slackチャンネルを見るようにしており、社員の情報・意見を取り入れる様にしています。そして何か思考する時には「ボードメンバーだったらどう考えるだろう」と、自分がいるレイヤーの1つ2つ上の目線に立って物事を考えることを意識しています。

フィードバックについては、積極的に現場メンバーからの意見を取り入れるようにしており、建設的な意見をあげてくれる環境もenechainの組織の魅力だと思っています。メンバーからの意見にハッとさせられることもあり、日々の些細なコミュニケーションから現場との目線を合わせるように意識しています。

-- エンジニアのメンバーとコミュニケーションをとる中で、意識されていることはありますか?

「なぜ作るのか、何を作るのか」ということは、全員に確実に自分の中で腹落ちしていてほしいので、常に「why・what」を意識してほしいと伝えています。エンジニア自身の中で「why・what」の意識が薄れてしまうと、社内受注的になってしまい、開発がひとつの作業になってしまいます。そうなると、開発に携わるエンジニア自身が面白みを感じられなくなるので、それは組織をつくる上で避けたいと思っています。

-- その他、なにか工夫されていることはありますか?

enechainの全エンジニアが「主戦場+アルファ」を見つけられる環境をつくることを意識しています。エンジニアには自分の限界を決めずに、フロントエンドエンジニアだからフロントエンド開発だけに携わるということではなく、どんどん越境していってほしいと思っています。

主戦場とするところ以外にも1つ2つ得意な事を見つけることで、エンジニア自身のスキルをどんどん高めていけるし、能動的にものづくりに携われると思います。私の役割は、そのような環境を整えることだと思っています。

社会を変える飛び道具はない、仲間と共にエネルギー業界の変革へ一歩ずつ

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-- 最後になりますが、今後の西村さんのミッションと、そのミッションを叶えるためどんな方にenechainに入社してほしいか教えてください。

一年間働いて思ったのは、社会を変える仕事には飛び道具はないということ、地道にやっていくしかないと思っています。 「Building energy markets coloring your life」という会社のミッションのために、プロダクトを拡充し、あらゆるエネルギーマーケットの立ち上げを粛々とやっていくことが、中長期の私の役割です。

そんなミッションに共感して、泥臭く推進してくれるエンジニアが入ってくれると嬉しいですね。作りたいものはたくさんありますし、エンジニアをサポートするために、技術トレンドは随時取り入れているので、エンジニアとして成長したい、そして社会を大きく変えうる事業に関心がある方には、ぜひご一緒していただきたいです。

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EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer:Kozue Nakamura / Editor : Hanako Yasumatsu / Photographer : Shihoko Nakaoka

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