「ドローンによる課題解決が当たり前になる世界を」CLUE プロダクト開発部長 柴山 裕樹氏がスタートアップに舵を切った瞬間とは

2023-07-27

ドローンが当たり前に飛び交う社会を目指し、現在は建設業向けソフトウェアを展開する株式会社CLUE (以下、CLUE)。同社の執行役員・プロダクト開発部長として活躍する柴山裕樹(Hiroki Shibayama)氏のキャリア形成、企業選択の軸に迫ります。

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“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。for Startups, Inc. の橘 明徳(Akinori Tachibana)と申します。私たちが所属するfor Startups, Inc.では累計650名以上のCXO・経営幹部層のご支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。

目次

  1. ドローン×ソフトウェアで建設業界のリアルな課題解決に挑むCLUEの事業内容
  2. 大学院で研究テーマを選ぶときに意識したことは、2年間で形にできるか
  3. 社会に大きなインパクトを与えたいと選んだIBM
  4. 希望外だった最初のプロジェクトでの経験がキャリアの礎に
  5. IBMでの転機はたった3人の新チーム
  6. スタートアップでチャレンジしたい。新規事業開発チームでの活動を経て強まった想い
  7. いまなら踏み出せる。迷うことなく決めたCLUEへの入社
  8. そのチャンスは2度とこないかもしれない。少し背伸びしてでも手を挙げる事が重要
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柴山 裕樹(Hiroki Shibayama)
2012年、日本IBM株式会社(以下、IBM)に新卒入社。金融系システムのSEとしてKIOSK端末アプリケーションの設計や開発に携わる。
2018年4月よりIBM Digital Makers Lab.のHead of Product and Developmentに就任。世界初・業界初のソリューションコンセプトの立案や、AI・IoT・クラウドなどの幅広い技術領域を組み合わせたソリューションの設計や開発に携わる。2021年4月にCLUEに入社し、現職。

ドローン×ソフトウェアで建設業界のリアルな課題解決に挑むCLUEの事業内容

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-- まずはCLUEの事業内容について教えてください。

CLUEは「テクノロジーを社会実装し、世の中の不を解決する」をミッションに掲げ、ドローンを活用することで、危険な作業や過重労働など建設業界の抱える課題の解決を目指しています。

その一つの例が屋根点検の領域です。これまでは職人さんが屋根に登って点検する必要があり、年間数百名以上の滑落事故が起きていました。CLUEの「DroneRoofer」を使えばiPadの操作のみでドローンを誰でもかんたんに操縦でき、屋根に登る必要がなくなるため、屋根からの転落リスクがなくなります。また、ドローンで撮影した写真を元に屋根面積の計算や見積作成ができるため、点検から見積もり提示までの時間を大幅に削減することができます。

点検業務にとどまらず、事業そのものの成長を後押しするため、点検データの管理や報告書作成に加えて、SFAや分析機能も備えた「RooferCloud」というクラウドサービスも展開しています。

また、大規模な建設現場向けのドローン飛行アプリケーションの「ドローン施工管理くん」など、積極的にサービスの幅も広げています。

-- その中での柴山さんの役割について教えていただけますでしょうか?

現在はプロダクト開発部長として事業横断的にプロダクト全体のロードマップを引いています。

また、プロダクトマネージャーとして現場に近いところでどういうプロダクトにしていくかを考え形にしていくとともに、開発のマネジメントもしています。

大学院で研究テーマを選ぶときに意識したことは、2年間で形にできるか

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-- どんな幼少期を過ごされましたか?

千葉で生まれ育ったのですが、かなり自由に育ててもらいました。 勉強に対するプレッシャーを大きく感じることもなく、きちんと学校の宿題をやりつつ楽しく遊ぶ日々でした。要領は良いほうだったと思います。

高校の時の文理選択では、一つのことを突き詰めていくのが好きだったので理系を選択しました。理科の授業などでどんどん物事の裏側を明らかにしていくのが楽しかったので、文理選択で迷うことはなかったですね。

-- 理系に進み、大学ではどのような研究に取り組まれていたのですか?

大学では物理工学を専攻して、量子力学の神秘にどっぷりとはまっていました。大学院では画像解析系の研究室に入り、ブックフリッピングスキャニングという、書籍のページめくり中に紙面の動きを止めることなくスキャン時に発生する歪みを推定・補正し、連続的に書籍を電子化する技術について研究していました。

その中でも、私はiPhoneなどの身近なカメラを使って手軽に電子化を実現することに取り組んでいました。

-- なぜその研究テーマを選ばれたのでしょうか?

大学院で研究室を選ぶ時点で、2年間大学院で過ごした後は就職をすることをなんとなく決めていました。博士課程で自分よりも優秀な先輩方が研究に打ち込みながらも、簡単に成果がでるわけではない世界を目の当たりにし、そこで勝負するよりも、より成果が見えやすい環境でチャレンジしたいと考えていたためです。

2年間で一定の成果を形にできる研究に取り組みたいという視点で研究室とテーマを見た際に、形にできそうだと感じたのがブックフリッピングスキャニングでした。

共同研究としても進めていたため、研究室として優先度が高いのは高機能カメラによるスキャン技術でしたが、形になるまでの時間軸を意識して私は身近なカメラによるプロトタイピングの研究を選択しました。

社会に大きなインパクトを与えたいと選んだIBM

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-- 大学院卒業後、社会人としてスタートされます。どのように1社目を決められたのでしょうか?

大学時代は本当に社会を知らず、正直世の中にどんな会社があるのか全く知りませんでした。

就職活動のタイミングで、先に就職をしていた大学時代の友人にアドバイスを求めたのですが、その中で「柴山に合っていると思う」と勧められたのがIBMとの最初の出会いでした。最初はIBMがなんの会社かも理解していなかったのですが、IBMが社会の大きなITインフラに向けて価値を提供していく企業であることを知り興味を持つようになりました。

私自身、社会に対して大きなインパクトが与えられる仕事がしたいと考えていたこと、加えてOB訪問で話を聞いたIBMの社員さんがかっこよく、こういう人がいる会社で働きたいと思えたことがIBMに決めた大きな理由です。

ーそのIBMの方の何が印象的だったか教えていただきたいです。

話し方がとてもロジカルだったこと、そしてなにより自分がやっていきたいことについてとても情熱をもって話されていたことが印象的でした。

他企業の説明会にも参加したのですが、その方が一番情熱的でしっかりと考えを組み立てた上で意思決定をされていたのがかっこよかったですね。

-- IBM以外は検討されなかったのでしょうか?

実は学生時代にベンチャー企業でインターンをしていて、最終面接のタイミングまでその企業とどちらにするか悩んでいました。

-- IBMという大手IT企業とベンチャーではかなり性質が異なりますが、なぜ迷われ、最終的にIBMに決められたのですか?

ベンチャーで働いている知人に聞くと「やりたいことができていて充実している」と話す方が多く、自分もベンチャーが合っているのかなと思う場面もありました。

ただ、社会に大きなインパクトを与えるなら大企業の方が出しやすいという思いがその時は強かったです。

また、子供の頃から自分の価値観として、「人の言っていることを鵜呑みにせず自分で試してから判断したい」というところがあり、「自分次第で大企業で好きなことをやるやり方もあるんじゃないか」と思い、IBMでチャレンジすることに決めました。

希望外だった最初のプロジェクトでの経験がキャリアの礎に

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-- IBMに入社されてみていかがでしたか。

優秀な人や個性的な人がたくさんいて、刺激をたくさんもらうことができました。一方で最初にアサインされたのは希望外だった金融系のプロジェクト。はじめは気が進みませんでした。

ただ、ラッキーだったのはそのプロジェクトで一緒に働くことになったメンバー。他のプロジェクトと違い、協力会社の熟練のエンジニアが多く関わるプロジェクトでした。

-- なにがラッキーだったのでしょうか?

そのプロジェクトでシステム開発に必要なスキルやマインドを幅広く学べたことです。例えば障害が起きた時、新人だった私はどうやってお客様に謝るかを考えがちでしたが、それよりも考えるべきことややるべきことがあると教えてもらいました。

他にも、プロジェクトマネジメントやエンジニアリングなど、技術面でもマインド面でもITサービスづくりのすべてを最初にたたきこんでもらい、それがいまでも自分のキャリアの礎になっています。

IBMでの転機はたった3人の新チーム

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-- IBMでの転機について教えてください。

転機は社内異動です。
当時、会社自体は好きだったのですが、担当プロジェクトの内容に変化を感じなくなったことや、ライフステージが変わって自分のやりたいことを見つめ直した時に「自分が良いと思うものを作りたい」という想いが強くなってきました。

転職も視野にいれていることを上司に相談したところ、社内で新設された新規事業をつくっていくチームで仕事をしないかと言っていただき、そのチームに参画させていただくことになりました。

-- 新規事業開発のチームではどのような取り組みをされていたのでしょうか?

そのチームは3人体制で、先端技術を活用したイノベーション創出をミッションに、5年後・10年後を見据えて新しいソリューションのプロトタイプを構築する特殊チームでした。

例えば小売系のソリューションを形にしていくなら、市場調査などをしながらソリューションのコンセプトを固めて、関連する部門にアプローチして活動予算をつけてもらい、プロトタイプを作って一緒にお客様に提案して案件化に繋げる、という動きをしていました。

それまでやっていたものづくりは「お客様の想いを形にする」ものづくりでしたが、ここでの「抽象度の高い課題を自分で設定してそこからプロダクトに落とし込んでいき自分で広めていく」というのは全く異なる動きで新鮮でしたね。

スタートアップでチャレンジしたい。新規事業開発チームでの活動を経て強まった想い

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-- CLUEへの転職を検討した時のことについて教えてください。

新規事業開発のチームでの仕事は非常に楽しかったのですが、目にみえるビジネス的な成果を出すところで苦労することもありました。

その後社内異動によって元の事業部に戻るという話になった時に、これまでの経験を活かして新しいチャレンジをしたいという想いがあり、スタートアップへの転職を検討することにしました。

-- スタートアップの方が想いを実現できそうと感じられたのですね。

新規事業開発のチームでサービスを形にしきれなかったことにはいくつか要因があったと考えていますが、一番のボトルネックはプロトタイプのサービスを提案したとしても、最終的にどれくらいしっかりと予算をつけて本格展開を目指していくかはお客さん次第になってしまうことです。

自社サービスを持つ企業、特にスタートアップであればお客さんの課題解決に最後までこだわって自分のスキルを最大限活かせるだろうと考えました。

-- スタートアップも様々な領域の企業があります。当時の転職軸はなんだったのでしょうか?

技術面では、今後伸びてくる領域で知見を深めたいという想いがあったので、ドローンやIoT、VRなどの領域で探していました。

また事業面では、ただサービスを売るだけでなく、しっかりと社会実装を見据えて課題と向き合っている会社で働きたいと考えていました。

-- 柴山さんが転職を検討される際にご相談いただいたのがフォースタートアップスのシニアヒューマンキャピタリスト町野 史宜だったと思います。町野との接点について教えていただきたいです。

町野さんと出会ったのは実はCLUEへの転職を検討する5、6年前からになります。最初にお会いしたときは転職先としてどんな選択肢があるのかも転職市場における自分の市場価値も分かっていませんでしたが、町野さんは親身になって一から相談にのってくれました。

-- 町野とのやりとりで印象的だったことはありますか?

一番印象的だったことは、会社をご紹介いただく際に、それぞれの会社へ入社した場合にどういったリスクがあるのかなどを含めてご紹介いただいたことです。

また、知り合い経由で紹介していただいた会社があることをお話した際には、フォースタートアップスからの紹介でないのにも関わらず、その会社についての相談に乗ってくださったことも記憶に残っています。

町野さんとは長くお付き合いがあり自分のことをよく理解してくださっていたので、IBMから本格的に転職を検討する際、他のエージェントは使わず町野さんにだけご紹介をお願いしました。

いまなら踏み出せる。迷うことなく決めたCLUEへの入社

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-- IBMの次の選択肢として企業を検討された中で、なぜ最終的にCLUEを選ばれたのでしょうか?

ドローンという世の中に新しいインパクトを与えられる成長領域であることに加え、取締役の榊原をはじめ、社内に自分と同じようにSIer出身者がいたこともあり、一緒に働くであろうメンバーと価値観が近いことが大きかったです。

また、実は金融系システムのSEをしていた頃にも転職を検討したことがあり、そのときたまたまWebサイトで目にして気になっていた企業が当時まだマンションの一室がオフィスだったCLUEでした。自分と同じ年代のCEOの阿部がビジョンを持って突き進んでいることに衝撃を受けたことを覚えています。

その時の自分にはまだチャレンジする勇気と動機がありませんでしたが、今度は「いまなら踏み出せる」と思い、入社を決めました。

-- CLUEへの入社前と後で、ギャップはありませんでしたか。

それまでの自分の感覚は通用しないだろうと覚悟はしていたのですが、想像以上のスピード感には驚きました。これはいいギャップだったと思います。

IBMの時は、事案の検討が決まったら打ち合わせは1ヶ月後ということも多かったのですが、CLUEで「来週あたりに打ち合わせ設定かな」と考えていたら「それ今話そう」と言われたのは衝撃でした。スピードが速いのは予想していましたが、本当に想像以上で、このスピード感で行かなければいけないのだと身が引き締まりました。

--ネガティブなギャップは全くなかったのでしょうか。

会社に対してではないのですが、自分の実力や経験に対して感じることはありました。

それまでもIBMの活動の中で事業計画などきちんと考えてきていたつもりでしたが、CLUEに入ってビジネス寄りの感覚や経験が全然足りていないことに気づいたのです。これまで以上にそういった知見が求められる役割でもあったので、成長の必要性を強く感じました。

-- 現在は執行役員として、そしてプロダクト開発部長を務められていますが、どういった経緯で現在の役割に至ったのでしょうか。

プロダクト全体を見るという形でジョインさせていただき、プロダクト単位での開発計画を考える中で、事業計画の考慮やすり合わせをする必要がありました。

その流れで他のマネージャーたちと話す必要性が増え、マネージャーに昇格。そしてドローン市場が刻々と変化している中で、より中長期的な目線を持って動く必要が増えてきたことからプロダクト開発部長に昇格することになりました。

そのチャンスは2度とこないかもしれない。少し背伸びしてでも手を挙げる事が重要

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-- 柴山さんのこれまでの経験から、これから成長産業でのキャリアを狙っていくニューエリートに対して言えることをぜひ教えていただきたいです。

キャリアにおいて、やってきてよかったと思うのは要所要所で少し無理をしてでも背伸びをしてチャンスを掴んできたことです。

例えばIBMで初めてシステム開発のプロジェクトリーダーを担当したときは、システムについての理解も浅い中でプロジェクトリーダーに立候補しました。手を挙げた時点でできないことのほうが多いことはわかっていましたが、先輩に「わからないことばかりなので助けてください!」とサポートをお願いしながらもチャレンジしたことで成長のスピード感が早まったと思います。

チャンスというのはそう頻繁には回ってきませんし、もしかしたら同じチャンスは2度とこないかもしれない。だからこそ、後悔しないよう手を伸ばせば掴めるかもしれないチャンスがきた時には、少し無理をしてでも覚悟を持って挑戦していけば道は開けると私は思います。

-- 最後に、そんなCLUEで、今後柴山さんが実現したいことや目標としていることがあれば教えてください。

CLUEに入社して本当によかったなと感じるのは、CLUEで一緒に働くメンバーです。全員が謙虚で建設的な議論ができ、同じ方向を向いて一緒に前に進もうとする姿勢を持っているので働いていて心地よさを感じています。

ドローンという世の中に必要とされている成長産業で、そんな仲間と一緒に課題解決に取り組むことができています。この2つが重なった環境にはそうそう巡り合わないと思いますので、この場所で取り組めている自分は幸せだなと感じます。

私たちはドローンが当たり前のように飛び交い、様々な課題解決をしていく社会を目指しています。ただ、まだまだ当たり前の状態には至っていません。目指している理想とのギャップに対してもどかしく感じることも多いのですが、これからもCLUEの仲間と共にドローンによる課題解決が当たり前な社会の実現を目指していきます。

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柴山さんをご支援したヒューマンキャピタリスト

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町野 史宜(Fumiyoshi Machino)
フォースタートアップス株式会社 タレントエージェンシー事業本部シニアヒューマンキャピタリスト

福岡県出身。大手放送通信業者に新卒入社。その後、オーストラリアの大学院にて市場調査・分析に従事、修了後帰国。IT系ベンチャー企業レバレジーズにてエンジニア/クリエイターの転職支援を中心に、エンジニア教育事業の立案やアライアンスなどを推進。2016年8月より フォースタートアップスに創業メンバーとして参画。

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