「日本のスタートアップが世界で通用しないジンクスをぶち破る。」Zeals 渡邉 雄介氏が語る、仕事のクオリティを一切妥協しないことで築き上げるキャリア

2021-08-31

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*2024年9月30日時点

独自開発したチャットボット技術により、一方通行だったeコマースの双方向コミュニケーション化や店舗接客のデジタル化を実現し「おもてなし革命」を目指している株式会社Zeals(ジールス)。同社のコーポレートストラテジーに就任した渡邉 雄介氏がZealsへ参画した背景と今後のビジョン、これまでのキャリア形成及び意思決定の軸に迫ります。

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渡邉 雄介(Yusuke Watanabe)/ コーポレートストラテジー
1999年、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2006年からペンシルバニア大学ウォートン・スクールに留学、MBAを取得。2008年、JPモルガン証券に入社。主に金融機関、総合商社、ファンド向けの資金調達やM&Aアドバイザリー案件に従事。アジア本部の香港拠点にも勤務し、2014年には「アジアパシフィックCEOアウォード」を受賞。2015年、日本金融法人クロスボーダーM&A責任者に就任。2016年からはモルガンスタンレー証券M&Aアドバイザリーグループに勤務。統合型リゾート(IR)推進法が国会で可決された事を受け、2017年からIR事業者大手米系2社で日本法人副社長兼日本開発責任者として、両社における日本法人1人目の社員としてチームを組成し活動を開始。シンガポールでマリーナベイサンズを開発運営するラスベガスサンズでは、日本企業とのコンソーシアム交渉にあたり開発計画を立案。そのほか事業・投資計画の策定、提携パートナーの選定、建築計画の立案、法律政令のロビイング、地方自治体との都市計画協議、広報活動などを統括。2019年7月に佐藤オオキ率いるデザインオフィス nendoにて執行役員に就任。その後、2021年に4月株式会社Zeals コーポレートストラテジーに就任。

目次

  1. スタートアップ業界への印象
  2. 東京三菱銀行でスタートしたキャリアと視野の広がりを得たウォートン・スクールへの留学
  3. 土台となる大きな礎を築いたJPモルガンでの経験とカジノ業界への転職
  4. 渡邉氏とZealsとの出会い
  5. 日本人であるという殻を破る。渡邉氏が思う、これから必要となる考え方
  6. Zealsで一緒に働きたい人物像

スタートアップ業界への印象

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-- 本日はよろしくお願いいたします。Zealsに入社されて3ヶ月が経過しましたが、これまでのキャリアとは毛色が違う環境、新たなチャレンジをされてどう感じていますか?

現在は、ファイナンスをメインに一部でコーポレートストラテジー、いわゆる戦略の部分を担当していますが、”時間の流れが早い”というのがZealsへの印象です。

Zealsは、他の国内スタートアップ企業と比較しても、とてもエマージングな事業を展開しています。その中でもチャットコマース「ジールス」はグローバルで見ても稀有なサービスであることが大きな特徴です。その反面、事業計画含め未来の姿を描く難易度が高く、またどう描くかによって今取り組むべきことが大きく変化していきます。

-- コロナの影響もあり、少しずつ同じような事業を展開する企業がちらほら出てきており、市場の状況が変化している印象です。

はい、この3ヶ月くらいで世界が動き出して、これまで先行していたZealsに市場の波が追いついてきました。日本でも少しずつ競争が見え始め、さらには世界で見るとライバル企業が100億円を超える調達をしています。海外戦略はどうするべきか、一方で国内のビジネスはどう守っていくのかという戦略を練り直さなければいけません。難しさを感じますが、同時にそこが1番面白いとも感じています。

-- 新しいビジネスをつくるということ、市場の変化が激しいというのはスタートアップならではかと思いますが、渡邉さんの世代ですとスタートアップを選ぶというキャリア選択はマイノリティだったのではないでしょうか。

そうですね。スタートアップに対しては馴染みの薄い世代のように思います。私自身もスタートアップは若い方たちがいく場所という考えも、正直なところありました。というのも、自分のケイパビリティを活かして世の中により大きなインパクトを与えられるのは大企業のM&Aに携わることだとずっと考えていたからです。

-- もう少し詳細をお伺いできますか?

日本企業のM&Aも大型化してきており、例えばですが会社の利益が100億円くらいでも、4,000億円の買収を行ったりすることもあります。これは会社の利益の40年分の投資、すなわち何万人もの社員が一生懸命働いて稼いだ40年分の投資にあたります。

そしてそのM&Aの意思決定をしているのは、それこそ40年間勤務し、社内の競争を勝ち抜いて社長のポジションに辿り着き、与えられる4年程度の短い任期の中でそれまで温めてきた大きな変革を起こそうと考えている生え抜きのサラリーマン社長だったりします。あとから周りにいろいろなことを言われてしまうかもしれないですし、そのM&Aも成功となる可能性は100%ではありません。

私自身、ATMにお金を詰める現場からキャリアをスタートしている身として、そしてこれまでのアドバイザリー経験から、そのようなサラリーマン社長が行う意思決定に伴う責任の重さ、そして彼らの気持ちがよくわかります。

だからこそアドバイザリーの仕事に対して責任感と誇りを持って取り組んでいましたし、その仕事を通して日本経済を変えられると考えていました。

東京三菱銀行でスタートしたキャリアと視野の広がりを得たウォートン・スクールへの留学

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-- そんな渡邉さんがどうしてZealsに入社するに至ったのか、ますます気になります。先ほど、「ATMにお金を詰めるところからキャリアをスタートした」というお話がありましたが、新卒で入社された東京三菱銀行(現:三菱東京UFJ銀行)ではどのような業務をされていたのですか?

それはもう壮絶でした(笑)。

始めの半年は、ATMの管理がメイン業務でした。開店前までに全てのATMにお金を詰めて、日中もATMでトラブルがあるとすぐに対応する仕事をしていました。

その後は支店の窓口の仕事から法人取引の業務を数年したあと、店舗統合もあり本店への異動となりました。

-- 異動先の本店ではどのような業務を担われたのでしょうか?

デリバティブをやっている部署で営業をしていました。当時は本店で研修を3ヶ月ほどすると、通常はどこかの支店へ配属され、支店でのデリバティブの営業がスタートするのですが、その際に当時の部長に気に入っていただき、本店の一番大事なお客様を担当するチームに配属いただけました。

-- 本丸の部署での業務となられたのですね。そこでのご経験が、その後のウォートン・スクールの留学へと繋がったのでしょうか?

そうですね。本店での業務に少し慣れてきた時に日本初のデリバティブを仕込んだ金融商品を自分で作って、1人で年間10億円ぐらい売り上げていました。

若手としては、おそらく飛び抜けた売り上げではあったので、その実績も認められて留学できたのかと思います。

-- ウォートン・スクール(※ペンシルベニア大学のビジネススクール)は多数のCFOを輩出していることで有名ですが、実際にいかれてみていかがでしたか?

やはり視野が広がりましたね。特にウォートン・スクールはファイナンススクールとして有名なので、ファイナンスバックグラウンドでウォートン・スクールに入れるアメリカ人は非常に優秀でした。「やばいな。世界にはこんな優秀な人がいるのか」と感じたことを記憶しています。

また、どのようにマージャーモデルを作るかであったり、2つの会社を合併して会計を綺麗にしていくような非常にプラクティカルな授業を通して、根気強く数字をいじるなどの地道な作業も得意であると感じました。自分ができること、得意としていること、できないことにも気づくことができた貴重な機会でした。

土台となる大きな礎を築いたJPモルガンでの経験とカジノ業界への転職

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-- ウォートン・スクールを経て、入社されたJPモルガン証券株式会社(以下、JPモルガン)はいかがでしたか?

本当に人の巡り合わせが素晴らしかったです。現在、大手金融機関で投資銀行部門のヘッドや世界的な投資ファンドの日本法人会長を務めている方々のもとでの業務は非常にハードではありましたが、仕事に対して一切のクオリティの妥協をしなくなりました。

その中でも特に1人目の上司だった本内一生さん(現UBS証券株式会社 投資銀行本部 Head of FIG)の、仕事に対してクオリティの妥協を一切しない姿勢からは多くのことを学びました。

プレゼン前日の深夜2時までかかった資料をその時点から本内さんがチェックをはじめて、強烈なダメ出しと共に1から資料を作り直していくようなことを「俺もやるから、お前もやり直そうぜ」と一緒になって、本当に毎日やっていました。

-- JPモルガンでのご経験が働く上での土台を形成されたのですね。

そうですね。今があるのは、JPモルガンでの日々のお陰だと思います。このような本当にやりきるチームで10年弱勤めていたので、自分が係るものには全部「自分の名前がついている」、だから胸を張って自分の仕事と言えるだけのアウトプットを出すという意識を持ち、仕事のクオリティにとてもこだわるようになりました。

-- その後、モルガン・スタンレー証券株式会社(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)を経てシーザーズ・エンターテインメント(以下、シーザーズ)へご転職されておりますが、業界としては異なる業界へのご転職であったと思います。どんなきっかけで入社されたのでしょうか?

当時、シーザーズはチャプター11(※米国における代表的な再建型の倒産法制である「米連邦破産法11条」のこと)をしていたこともあり、紹介を受けた時は「ナシ」と即答でした。ただ、日本企業と組んで、日本のためになるIR(Integrated Resort)を作りたいという話を聞き、息の長い10年プロジェクトだけれどもこれをやり切ったらすごいことだなと感じ、チャレンジしてみたいという気持ちになりました。

また、1番のリスクであったチャプター11については、会社の状況も聞き、自分でもデューデリジェンスをする中で、抜けられそうだと思ったので入社することを決心しました。

-- カジノ業界としては、シーザーズとラスベガス・サンズ(以下、サンズ)の2社をご経験されていますが、その経験を通して考え方に変化はありましたか?

1から何かを立ち上げるということの面白みが少しわかりました。日本法人の登記から始まり、事務所を借り、1人目の採用まで様々なことをやりました。

また、ロビイング活動、年間10数億円規模のPR活動、コンソーシアムをつくるための動きも行い、何も無いところからエンターテインメントの事業を数人のチームで1から作り出していくことの面白さを知ることができました。

ただ、シーザーズはチャプター11を抜けたタイミングでM&Aによるマネジメントチェンジが起き、経営方針の転換により日本撤退。サンズも最終的には日本撤退となってしまったこともあり、nendoへ転職しました。

-- 金融業界、カジノ業界を経て、当時も多くの会社からお声がかかっていたと思いますが、nendoに入社された背景はなんだったのでしょうか?

ブランド力を高めたら日本はもっとやれることがあると考えていて、nendoを通して日本企業を変えていくことができると思い入社しました。

-- どういうことでしょうか?

日本における課題は、適正価格を取れていないことだと考えています。良いものはたくさんあるものの、ブランドを構築できていないから適切なプライシングができておらず、安売りしてしまっている。

その状況を変えるためには、ブランドの構築が必要です。アートはある意味ブランドの極みですし、まずは、アジアを中心に海外の富裕層や財閥のオーナーなどに日本のデザインの価値を認めてもらい新しい試みを沢山広げて、それから日本企業を変えていくことを長期的な戦略として考えていました。

私は外国人への交渉が得意なので、これまでの人脈や経験も活かせると思い入社しましたが、新型コロナウイルスの影響で現地に行けなかったこともあり、外の世界を見始めました。

渡邉氏とZealsとの出会い

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-- そのタイミングで弊社シニアヒューマンキャピタリストの町野 史宜にお会いいただいたのですね。

外を見始めたタイミングで、外資系のコンサルティング会社や元上司からもお誘いをいただいていましたが、これまで経験していないキャリアを見てみたいと思っていたことと、投資銀行時代に昔一緒に働いていた仲間が、スタートアップのCFOとして活躍している人が増えてきていることもあり、まず話を聞いてみようと思いZeals含めスタートアップ企業を複数社ご紹介いただきました。

-- Zealsの最初のインタビューは清水CEOだったと思いますが、その時の印象はいかがでしたか?

当時のホームページが”日本をぶち上げる”というコピーから始まっていた会社なので、代表はどんな方なのだろうと思っていましたが、とてもいろいろなことを深く考えていて、勢いだけの人ではない点が印象的でした。

特に、「世界に打って出たいんだ」という強い想いを持っている点、そしてビジネスモデルのユニークさがあって、エマージングな事業を行っているこに一番惹かれました。

-- Zealsの事業のユニークさはどのような点でしょうか?

チャットボットというと、お問い合わせ対応やノーコードでボットが作れるサービスが一般的だと思います。

それに対し、Zealsの場合は会話構造で勝負していて、本当に商売を成り立たせるチャットコマースとなっている点が特徴で、ユニークなサービスです。

私は現在Zealsでファイナンスを担っている手前、国内外たくさんの投資家に会っていますが、投資家からの評価としてもビジネスのユニークさを1番評価いただいています。

-- そのようなZealsならではのユニークさはどのように生まれたのでしょうか?

冒頭、”時間の流れ”の話をしましたが、Zealsという会社は、これまでその時の機を逃さずにかなりアジャイルに事業展開をしてきているので、言葉を選ばすにいうと会社としての進み方は真っすぐではないです。
ただ、真っすぐには進んでこなかったからこそ、前例のない事業展開に繋がっていると思います。

ビジネスモデルについて、Zealsと比較すると当初からよく考え抜かれた事業を展開をしていて真っすぐにビジネスが流れているスタートアップはたくさんあると思います。ただし、注意深く見てみるとその企業がなぞっているのは海外では既に存在しているモデルだったりもします。やはり前例があるものをなぞってしまうと、海外に打って出ることは難しくなる。

その点、真っすぐには進んでいないけれど、前例がないモデルでエマージングな事業を展開できているので、Zealsにはこの先大きく化ける可能性を感じました。

-- Zealsはグローバルな組織となってきていると思いますが、外国人エンジニアが入社されているのも、ユニークな事業を展開できていることが大きく影響していそうですね。 余談ですが、最終的にZealsに入社を決められた際には、スタートアップのCFOを務められている方に話を聞きにいかれたのでしょうか?

はい、私自身はM&Aバンカーではありますが、投資銀行でアソシエイトの頃は資本市場案件を多く担当していて、グローバルオファリングを累計4.2兆円も経験しました。そのため、オファリングについての知識は一定程度あるのですが、IPOは未経験者です。

そこで、JPモルガン時代の後輩で現在メドレー株式会社の取締役CFOを務めている河原さんやENECHANGE株式会社 執行役員CFOの杉本さん、CFOではないですがCoral Capitalの澤山さんにスタートアップやIPOについて、「何が大変で、どこに注意するべきなのか」などの体験談を聞きにいきました。私と同じくウォートン・スクールを卒業されているラクスル株式会社 取締役CFOの永見さんにも上場後の事業計画の考え方についてご意見を伺いました。

日本人であるという殻を破る。渡邉氏が思う、これから必要となる考え方

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-- これまでのキャリアを遡らせていただきましたが、キャリアを考えていく上で大事にされている考えはありますでしょうか?

日本という枠組みにとらわれすぎないことは大事だと考えています。私もこれまでのキャリアで日本の金融を変革していきたいなど、ベクトルを日本に向けて考えていましたし、今でもそう思うこともあります。ただし、日本にこだわる考え方はやめなければいけないなと思っています。

銀行員時代に出会ったアジアの方から「日本人であるというこだわりを捨てた方が良い。そんな風に殻にこもっていたら大物になれないぞ」と言われたことがありました。

当時は言っている意味は理解できていませんでしたが、実際に今シンガポールや香港、インドネシアなどにいる優秀な人たちはそのようなこだわりを持っている人はいないですよね。

-- 海外の優秀な人たちは常にグローバル基準で考えているので、日本の枠組みにとらわれすぎず、広い視野でキャリアも考えていかないといけないということですね。

そうですね。あとは、自分がやるからには責任をもって仕事をするということ。東京三菱銀行でもちゃんと仕事をしたからこそ、ウォートン・スクールへの留学のチャンスもいただけたと思います。JPモルガンでも私の仕事を評価してくれるお客様がいらっしゃって、モルガン・スタンレーへの転職に繋がったと思いますし、シーザーズ、サンズ、nendoも同様です。

ちゃんと努力して一つ一つの仕事に責任をもって、クオリティに妥協せずに取り組む。そして、最後は関わった方に褒めていただける仕事をすることはすごく大事にしてきましたし、これまでのキャリアに繋がっていると思っています。

Zealsで一緒に働きたい人物像

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-- ありがとうございます。それでは、最後にどのような方にZealsに来て欲しいかお伺いできますか?

素直さと生意気さを兼ね備えた方ですね。生意気さは成長する上では重要な要素であると考えていますが、人の話は聞けないと駄目なので、素直さは必要だと思います。

-- 渡邉さんと一緒に働く機会もあると思いますが、どのような経験ができますか?

それでいうと私は一緒に働く仲間を後悔させない自信はあります。その人のキャリアを考えた上で、やった方がいいことのアドバイスはもちろんですし、人望を作っていく方法などもビジネスをする上では非常に大事で、これまでの経験からたくさんのノウハウ、スキルを持っているので、教えてあげられると思います。

あとは、英語ができて、国際的に活躍したいということであれば、その点でも教えてあげられることがあります。

これからのZealsには新しくチャレンジできる機会がたくさんあると考えていますので、一緒にグローバルでも勝てるサービス、会社をつくっていきたいですね。

-- これからのZelasが楽しみですね。本日はありがとうございました。

・・・

EVANGE - Director : Kanta Hironaka / Creative Director : Munechika Ishibashi / Assistant Director : Yuto Okiyama, Koki Azuma, Akinori Tachibana, Tomotsune Amuro / PR : Hitomi Tomoyuki / Photographer : Hayato Jin

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