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医療データの利活用を促進し、医療業界の社会課題の解決を目指す株式会社Yuimedi(以下、Yuimedi)。同社の経営企画担当執行役員として活躍する浅山龍文(Tatsufumi Asayama)氏のキャリア形成、企業選択の軸に迫ります。
浅山龍文(Tatsufumi Asayama)
大学院修了後、2018年に中外製薬に入社し、アソシエイト・メディカルマネジャーとして、メディカル関連業務に従事。医療データの利活用に課題感を持つ。その後2019年に経済産業省に入省し、通商政策およびクロスボーダーなオープンイノベーションを支援する政策を推進。スタートアップの勢いとロマンに魅了され、医療データ×スタートアップという軸で2022年に株式会社Yuimediへ入社。
Yuimediでは、「データを通じて必要な医療を必要な患者さんに届ける」をミッションに掲げ、医療をアップデートするデータ利活用インフラの構築に取り組んでいます。
現状、日常の診療行為等で取得される医療データは多くが形式の整った「構造化データ」になっておらず、うまく利活用されていません。その社会課題に対してYuimediは、医療に特化したデータ変換ソフトウエア、いわゆるETLツールの提供から、医療データが病院と企業の間で活発にやり取りされるプラットフォームの構築までを目指しています。
一言でいうと、事業戦略を達成するための環境づくりです。
具体的には、事業戦略を考えることから始まり、HR、ファイナンス、PR、IRといった幅広い業務を担当しています。
Yuimediは、定型業務に捉われることなく、会社のためになることであれば新しい仕事を生み出すことを推奨してくれる環境があります。そのため、まだ入社して1年も経っていませんが、自分で自分のポジションを作り出し、アグレッシブに仕事に取り組むことができています。
幼いころから強く大事にしているのは「人と違うことをして目立ち、周りからクールと思われたい」という想いですね。
1つは、父に「人と違うことをやりなさい」と幼いころからずっと言われ続けていたこと。
もう1つは母が中国人なので、そもそも周りと違うことが当たり前だったこともあり、人と違うことをすることに恥ずかしさを感じることがなかったことです。
そのため、小学校の頃には挙手制で決める役割、例えば合唱コンクールの指揮者などを積極的に取りに行き、とにかく人と違うことをして目立つことを徹底していました。
そうやって人と違うことをしていると目立つ存在になり、結果的に集団の中でリーダー的役割を任されることが多かったです。小学校時代は学級委員を、中高時代は生徒会を担いました。
さらにはある企業から出資をもらって他校を巻き込んだ学生団体を立ち上げたりもしました。
そうですね。ただ、いずれのリーダー経験も成功体験とはいえず、自分自身で内省をした際に「リーダーは何かしらで長けた部分がないと成功には至らないんだな」と感じました。そこで大学生活では勉強で尖ることを決めました。大学生はサークルや部活を頑張る人は多いですが、勉強を徹底的に追求している人は少ないと考えたのが理由です。
私にとっては、それがクールであり、何かしら長けた部分を身につけることに繋がっていました。
まさにその通りです。大学および大学院時代は勉強や研究で長け、国際学会で賞をいただくなどしましたが、修士課程に入ると周りも研究をすることが当たり前になるので、「あれ、もしかしたらこれはクールではないかもしれない」と感じはじめます。つまり、研究の道に進むことが自分のValueと合わないと考え、就職活動に踏み切ることにしました。
就職活動では、マスコミや銀行、商社など幅広くみていたのですが、いずれも自分のValueにフィットせず、とても悩んでいました。
そんな中、中外製薬がメディカル部門で初めて新卒を募集するという情報が入りました。その部門で新卒を募集することは業界としてもおそらく初の試みであり、「この職種であれば自分のValueにフィットする」と考え、中外製薬に入社しました。
また、メディカルという職種が担う役割が私のWillとも一致するポジションであったことも、この決断をした理由のひとつです。
私が持っているWillとして、環境づくりで社会課題の解決にコミットしていくことが挙げられます。
契機となったのは、大学院時代において研究室のリーダー的役割を担ったタイミングです。
大学院の研究室は学生主体であるので、仕組みづくりが特にされておらず、オペレーションがとても悪かったのです。そんな中、制度や仕組みをつくってみると、研究室のオペレーションが劇的に改善しました。
仕組みや仕掛けを作って環境づくりをすることが課題解決に繋がるという経験をし、その面白さを感じたとともに、初めてのリーダーとしての成功体験でもありました。
メディカルという部門は医師の先生方と一緒に治療ガイドラインを作り上げていく部署でした。まさに医療の環境づくりの一部に貢献できると考え、ValueだけでなくWillにもフィットした感覚がありました。
会社としても伸びているタイミングで入ることができたので貴重な経験をたくさんさせていただきました。
特に当時の部長が、私の成長意欲や興味関心を丁寧に聞いてくださる方で、1年目から社内のタスクフォースチームにアサインくださるなど多くの機会を提供いただきました。
ちなみにYuimediの事業内容である医療データには、タスクフォースチームの業務で出会い、医療データがもっと利活用されれば、より良い社会が作れるかも知れないと感じていました。
つまり、今Yuimediにいることはその時の部長のおかげかもしれませんね。
携わっている業務はとても面白かったのですが、仕事をしている中で「Push Up」という新しいValueが芽生えはじめていました。
若手の頃から自分のポジションと裁量をもって、新しい仕事をダイナミックにどんどん生み出していきたかったのですが、「新卒1年目の見えない壁」のようなものにぶつかっていきました。
もっと新しい仕事を生み出していきたいと思った時に、このままでは難しいと感じることが増え、部長にも相談したところ、「転職した方が浅山さんのキャリアのためにもなると思う」と転職を後押ししてくれました。
経産省を選んだ理由は3つあります。1つは大学院生の時に国家公務員総合職試験に受かっていて経産省で働くために必要な資格を既に持っていたこと。2つ目は新たなValueを含め、2つのValueにフィットするカルチャーが経産省にあると感じたこと。そして3つ目として、製薬業界は国が考えるロジックが大事な業界でもあるため、国のロジックを知ることが今後のキャリアに役立つと考えたからです。
加えて、世の中の枠組み・環境を整備していくことは、当たり前ですが私のWillともフィットすると考え、経産省への入省を決めました。
Push Upの文化は求めていたものではあったものの、それまでの環境と大きく異なったことから最初はかなり苦戦し、自分の不甲斐なさに転職は失敗だったかもと思った時期もありました。
再び前向きに仕事に取り組めるようになったのは、オープンイノベーション関連政策に携わる部署に配属され、スタートアップと出会ったタイミングでした。
これまでの経験で、組織の持つカルチャーが個人に与える影響は大きいと感じ始めていた頃にスタートアップの世界と出会い、こんなにもカラフルなカルチャーを持った世界があるんだと興味を持ちました。そして、この世界に自身が携わることにどんどん面白さを感じるようになっていきました。
特に私は、スタートアップの中でもシリコンバレーや深圳でもなく、アジア新興国スタートアップを担当していたので、先人も携わっている人も多くなく、大事にしているValueである「人と違うことをして目立つ」に見事にはまり、業務にのめりこんでいったのです。
その姿勢を見た上司は私に自由に成長できる機会を提供くださり、もうひとつのValueである 「Push up」 にもフィットする環境となりました。これによってポジティブなフィードバックが回り出し、強力に業務を推進していきました。
2つのValueとWillにもフィットしており、成長意欲に対する機会提供も充分にあった環境だったのですが、唯一のモヤモヤを挙げるとすると、業務の規模が大きすぎることにより、クイックに改善サイクルを回せないことでした。
例えば、私が立ち上げ期に携わった政策であったとしても、その後の改善を私が担当することはほとんどないのです。また、立ち上げた政策を数ヶ月でコロコロと改変することも難しく、自分がつくった環境というものをクイックにScrap and Buildして改善することができないもどかしさが、私個人としてはありました。
お話しした通り、ほんの少しのモヤモヤがあっただけで転職意欲は全くなかったものの、知り合い経由でたまたまフォースタートアップスの町野さん(町野友梨、シニアマネージャー)と安室さん(安室朝常、マネージャー)を紹介していただきました。
お2人が丁寧に私のモヤモヤやValue、Willを聞いてくださり、間違いなくフィットするから一回話してみて欲しいとYuimediを紹介してくださったのです。
端的に言えば、グライムス(Yuimedi 代表取締役社長)と話をする中で、きっとこの人は私と同じ課題感を持っているんだろうなと感じました。
Yuimediであれば中外製薬時代に抱いた社会課題である医療データの利活用に取り組むことができる点、スケールは経産省より劣るものの医療業界および会社という組織において、スピーディーな改善サイクルで環境づくりにコミットできる点に惹かれ、転職を決意しました。
アーリーなスタートアップだからこそ環境づくりが強く求められていると感じると同時に、Yuimediのミッション達成に向けて必要な環境づくりを進めていくことへの難しさも感じています。
現在のYuimediには様々なバックグラウンドを持ったメンバーが集まっているので多様性はありますが、組織としての力が弱いと感じています。
自身のこれまでの経験から、カルチャーフィットさえ起これば推進力が自然と生まれることを知っているので、広いロールの中でもValueやカルチャーフィットによって社員全員が強力な推進力を生み出せるような環境づくりに特に取り組んでいます。
主には制度企画と組織開発の両面で取り組みを行っています。
まず、制度企画ですが、Yuimediのミッションに向かって全員が組織の一員として、然るべき形で業務を推進できるような人事制度の構築を行っています。ここにおいては、作って終わりではなくクイックに改善サイクルを回していくことが肝心なので、その点を重視しています。
そして組織開発面においては、ファーストステップとしてValueの浸透を目指した仕掛けをしています。直近では「朝Slack」を導入し、ボードメンバーが日々考えていることやValueについて発信できる機会を作りました。
その他、部門別予算やバディ制の導入など様々な試行をしていますが、引き続きScrap and Buildでクイックに改善サイクルを回していければと思っています。
カルチャーフィットはもちろんのことですが、目の前の仕事を自分事に昇華できる人と一緒に働きたいです。
実際、口酸っぱく部下に言っていることでもあるのですが、目の前の仕事をただのタスクとして捉えて進めていくのではなく、自分のMust、Can、Willの全てと紐づけて仕事をすることを意識してほしいと思っています。
そうすることで、成長速度はもちろん、成長意欲も大きく高まっていくと考えています。
Yuimediは組織のミッション達成とandが取れる部分で、最大限個人のWillに寄り添った成長機会を提供するようにしています。私も丁寧に部下のWillを聞きながらマネジメントすることを心がけています。自身のキャリアゴールに対する成長意欲の高い人と一緒に働けるのを楽しみにしています。
EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Karen / Editor:Koki Azuma / Photographer : Shihoko Nakaoka