「舞台演出家として組織のパフォーマンスを最大化させる」ベルフェイス溝口 健治氏の慎重な性格だからこそリスクを取り、挑戦をし続ける理由

2022-12-20

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*2024年9月30日時点

BtoBのオンライン営業システムを開発するスタートアップ企業、ベルフェイス株式会社(以下、ベルフェイス)。同社で、執行役員 Director of Productとしてプロダクト組織の組織マネジメント全般を担う溝口 健治(Kenji Mizoguchi)氏のキャリア形成の軸に迫ります。

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溝口 健治(Kenji Mizoguchi)
SIerの会社で受託システムの開発・運用を4年半経験したのち、2007年、PwCコンサルティング合同会社へ入社。新規事業企画、PMO支援、業務改善などのコンサルティング業務に携わる。2010年、楽天株式会社へプロデューサーとして入社。開発チームのマネージャーとして活躍し、2014年にはシンガポールへ赴任。2018年5月、株式会社鎌倉新書へ入社。執行役員兼プロダクト開発部部長として、プロダクト開発組織のマネジメントをする傍ら、経営視点で、会社全体としての生産性を最大化するための取り組みを執行役員として推進。2021年3月にベルフェイスに参画。同年10月に執行役員に就任し、現在に至る。

目次

  1. セールスプラットフォームをつくるベルフェイスの事業内容と溝口氏の役割
  2. 10年先もマーケットバリューを発揮しつづけたい。幼少期から一貫しているキャリアの軸
  3. ビジネススキルの高い人材になりたいとコンサル会社へ
  4. マネジメントキャリアのスタート。意識すべきは相手に刺さる伝え方
  5. 執行役員を経験し、マネジメントの視座が高まった
  6. 今の自分は舞台演出家。ベルフェイスのゴールへ突き進んでいく

セールスプラットフォームをつくるベルフェイスの事業内容と溝口氏の役割

まずはベルフェイスの事業内容を教えてください。

ベルフェイスでは、オンライン営業システム(SaaS)を展開しています。
金融機関をはじめ、さまざまなお客様に導入していただいており、アプリケーションのインストールやURLの発行などが不要で、瞬時にオンライン商談をはじめられるのが特長です。

溝口さんは現在どのような役割を担っているのでしょうか。

主にプロダクトマネージャーが所属するProduct Grのマネジメントを担っています。メンバーは業務委託の方も含めて20〜30名ほど在籍している組織です。

入社から1年半が経とうとしていますが、実際に働いてみていかがでしょうか。

スタートアップ領域に参画するのが初めてなので、日々新鮮さや楽しさを感じながら業務に勤しんでいます。日々新しい経験ができているので、入社してよかったというのは強く思っています。

限られたリソースの中で、高い目標を達成するために、今のフェーズにおいて、何を優先し、何を後回しにするべきなのかという意思決定が、日々いろんな部分で求められ、それを同じ目線を持った仲間とスピード感を持って進めていく部分が何よりもエキサイティングだなと感じています。

また、会社の将来は自分たちで作るという感覚が、より大きいなとも感じます。

10年先もマーケットバリューを発揮しつづけたい。幼少期から一貫しているキャリアの軸

それでは現在に至るまでの溝口さんの過去を辿らせてください。どのような幼少期、学生時代を過ごされていましたか。

幼少期からずっとサッカーをやっていました。ポジションは中盤を担うことが多く、仲間が点を取るためのアシストをすることにやりがいを感じていましたね。

その経験もあってか、「自分が前に立つよりも周りをうまく活かして、チームで成果をだすことが好きだし、そういう動き方をすることが心地よい」と感じていた気がします。

前線のポジションをやりたいと思ったことはなかったのでしょうか?

性格が控えめだったこともあり、あまり思いませんでした。点を取って目立つことよりも、誰かが点を取ることをアシストする方が、目立たなくて済むし、でも勝利に貢献したということが実感できていました。

「目立ちたくはないけど、勝利には直接貢献したい」の答えがアシストだったんじゃないかなと思います。

周りからはどのように見られることが多かったですか?

真面目なタイプだと思われていたと思います。小さい頃から、学校に遅刻するようなことはなかったですし、誰かに迷惑をかけるようなことはできないタイプで、幼いなりにかなり慎重に人生を歩んでいた記憶があります。

その後、時を経てIT業界でキャリアを積まれることとなりますが、いつからIT業界を意識し始めていたのでしょうか?

学生時代からIT業界について認識はしており、大学では情報システムの分野を専攻していました。

当時はまだiPhoneもない時代でしたが、今後ITが社会を大きく変化させるだろうという考えを持っていたので、当時からIT業界でキャリアを積んでいくことを決めていました。

幼少期から慎重な性格だったというお話がありましたが、なぜ当時はまだ未知な領域であったIT業界への挑戦を志されたのですか?

当時は言語化できていなかったんですが、今思い返すと私が思う“慎重さ”は、「10年、20年先も市場価値のある人間になれるかどうか」だったのだと思います。

確かに目先の慎重さを重視すれば、安定した堅い業界に就職するのがいいのかもしれません。でも、今後トレンドになってくるであろうIT業界でチャレンジすることが、将来的な安定につながるかもしれないと考えたのです。

むしろ「将来的に安定した道を進めるのなら今リスクを負っておくべきだ」「今挑戦しないことのほうがリスクだ」という考えもありました。

この考え方は昔から軸としてありましたし、この先のキャリア選択でも大切にしていました。

そういった思いを持ったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

父親が公務員で市役所に勤めていたのですが、「将来的にITや英語が必要な世の中になってくるから意識しておいたほうがいい」という話を聞かされていたこともあり、就職先を選ぶ時も少なからず頭の中で意識していたと思います。

ビジネススキルの高い人材になりたいとコンサル会社へ

新卒ではITフロンティアに入社されましたが、当時はどのような業務をしていたのでしょうか。

SIerのPMとして動いていました。当時は某コンビニエンスストアのポイント管理及び購買情報分析システム開発のプロジェクトを担当し、先方とのコミュニケーションをとったり、自社のエンジニアと相談したりしながらプロジェクトの進行や調整役を担っていました。

最終的には先方の会社内に常駐し、IT部門の一員として動いて、マーケティングの部長とかと会員向けのポイントを絡ませた企画を考えたりと、事業会社の中で実質動くような経験をしていました。

常駐までされていたのですね。そのような中で、ご転職をしようと思った背景について教えてください。

自分よりもはるかにキャリアを積んできた人たちと会話をする中で、自分のビジネススキルが圧倒的に足りないと感じたことが大きかったです。ビジネススキルを短期間で習得するためにどうすべきか考えた時、「コンサルティング会社にいけば優秀な人たちの中でビジネススキルを効率的に習得できるんじゃないか」と思い、コンサルティング会社への転職を決意しました。

実際に、PwCコンサルティングに転職されていかがでしたか。

異業種への転職でしたので、とにかく必死に頑張って、当時あまり持ち合わせていなかったロジカルシンキングやビジネススキルを習得しました。また、いくつかのプロジェクトを経験する中で「ロジカルは重要だが、使い方を間違えると諸刃の剣になる」ということも学びましたね。

人を動かすためには、ただロジカルに整理した的な意見をぶつけるだけではいけない。相手に気持ちよく動いてもらうために、どうやってロジカルに整理した考えを伝え、ポジティブに理解し動いてもらうのかというコミュニケーションもとても重要であることを学べた良い経験でした。

マネジメントキャリアのスタート。意識すべきは相手に刺さる伝え方

PwCコンサルティングから楽天に転職されることとなりますが、その背景にはどのような思いがあったのでしょうか。

元々ITフロンティアでの常駐時代に多種多様なキャリアの方々とお話しする中で、「事業会社っておもしろいな」と感じていました。ITフロンティアもPwCコンサルティングも外部から企業を支援する形のビジネスなので、事業を伸ばすためにどんな企画を考えるのか、どのようにプロジェクトを進めていくのかを実際に経験していきたいと考えました。

また、色々な事業会社の中でも、IT業界にバックグラウンドを戻したいという思いがあり、楽天に転職しました。

楽天ではどのような業務を担っていたのでしょうか。

プロデューサーとして入社しました。わかりやすく言うと、プロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーを足して2で割ったようなポジションですね。

プロデューサーとして2年ほど経験を積み、ちょうど私がいた組織のマネージャーが異動になったタイミングでマネージャー業務を引き継ぐことに。

ここから私のマネジメントキャリアがスタートしました。

幼少期から人の前に立つよりも後ろから支えたいとの思いがあった溝口さんですが、マネジメントキャリアをスタートする中で、そのパーソナリティは活かせましたか。

マネージャーは一見、前に立っているように見えるのですが、どちらかというとメンバーの強みを活かして、組織としての成果を最大化することが主な役割です。もちろん組織の責任は私にありますが、実際に動いてくれるのは組織のみんなであって、私はあくまでも後方的に支える立場であることを実際にマネジメントを経験してみて感じたことですね。

そういう意味では私のパーソナリティとの親和性も高かったように思います。

マネージャーとして、メンバーを動かす上で意識していたことはありますか。

失敗もたくさんありますが、ただ自分の思いや会社の思いをストレートに自分の考えでぶつけるのではなく、メンバーの思いに紐付けたり、メンバーに響くような伝え方をすることです。

実際に「組織としてこうあるべきだ」と私の意見を発信するだけでは理解してくれないメンバーもいます。メンバー1人1人が納得感を持って、モチベーション高く業務に臨めるように伝えることが必要なんだと気づいたのです。組織として同じ方向に進む必要はあるけれど、そこに行き着くためのプロセスや思いは同じである必要はないと考えています。

そこから2年ほどシンガポールへ駐在されています。国籍も様々なグローバルメンバーのマネジメントはさらに難易度が高かったのではないかと思いますが、いかがでしたか。

メンバーもさまざまな国籍の人が在籍していて、価値観や考え方も異なる人がたくさんいたので初めは少し戸惑いました。

ただし、結局のところそれぞれのメンバーが納得して仕事に臨むためにマネジメントするという軸は何も変わらなかったですね。

日本のメンバーだから海外のメンバーだからというのではなく、その人がどんな性格で、何を大切にしていて、どういう気持ちで仕事をしているのかを理解する。その人が納得できるような言葉で伝えて、マネジメントしていくことが1番大切です。言葉の壁こそあったものの、相手に納得してもらうことさえできれば、あとは日本でもシンガポールでも大きな変化はなかったです。

執行役員を経験し、マネジメントの視座が高まった

その後、鎌倉新書にキャリアを移されましたが、 8年間勤めた楽天から転職を決めたきっかけは何だったのでしょうか。

楽天は非常に大きい会社なので、ネームバリューがあるゆえに出来ていることがたくさんあるのではないかと思い始めました。例えば、採用においても多くの就職希望者が集まりますし、募集に困るといった課題は当時あまり感じませんでした。

もし世間的にネームバリューがない企業にいた場合、今の私の経験やスキルはどこまで通用するのだろうと考えるようになり、楽天という環境を離れ、全く別の環境で新しくチャレンジしてみたいと考え、転職を決意しました。

鎌倉新書を選んだ理由としては、前職の時に優秀だと思っていた役員の方が社長をされていたこともあり、また抱える課題として「開発組織がまだまだ弱くて、なんとか立て直してほしい」という話があったので、自分がこれまでやってきた経験を活かせるのではないかと考えたことが大きかったです。

鎌倉新書では、プロダクト開発部の部長として入社したのち、執行役員にもなられています。その点でマネジメントにおける視座の広がりや気づきはあったのでしょうか。

経営会議に出る機会があり、会長や社長の視座・視点での経営課題を把握し、課題解決のために一緒に議論して方針を決めていくことが増えたので、より企業経営への責任感を持つようになりました。

「企業経営において何を課題と捉えているのか」を間近で知ることができ、とても視座が上がった経験だったと感じます。

今の自分は舞台演出家。ベルフェイスのゴールへ突き進んでいく

執行役員としても活躍されていた鎌倉新書を離れ、現職ベルフェイスに参画したきっかけを教えてください。

鎌倉新書では執行役員という役割をいただき、自分なりに視座も上がったと感じていたんですが、もう少し厳しい環境に身を置いてみたいと感じたことが大きいですね。より高いレベルを求められる環境で働くことが今の自分に必要なのかもしれないと思い転職を決意しました。

その頃からスタートアップの業界はすごく盛り上がっていましたし、今まで働いた経験がなかったので興味はあったんですね。

また、スタートアップはできることも限られている中で、高いパフォーマンスを発揮する必要があります。スピード感のある中でいろいろな意思決定が求められる環境に身を置くことで、また新しい視点が身につくかも知れないと思い、ベルフェイスへの参画を決めました。

より困難な環境に身を置きたいとチャレンジをする背景には、どのような思いがあるのでしょうか。

突き詰めると、「リスクを取り、挑戦し続けることが安定への道」という思いが変わらず背景にあります。

大変な環境下で組織とメンバーのことを考え抜く経験は、後々自分の血肉になり、マーケットバリューに結びついていく。

そこは昔からブレることはなく、ただひたすらに努力していきたいですね。

ベルフェイスでマネジメントをする上で意識していることはありますか。

ベルフェイスは素晴らしいメンバーに恵まれているので、メンバーの強みをどう活かして、どうパフォーマンスを発揮してもらうかという点を大切にしつつ、「選択と集中」を意識しています。

組織全体でモチベーションを維持しながらメンバーに高いパフォーマンスを出してもらうには環境を整えることが重要ですし、短期間で成果をあげるにはみんなの目線を合わせなければいけません。

でもスタートアップではできることが限られている。だからこそ、選択と集中を意識する必要がありますし、難しいと感じる部分ですね。

溝口さんは今後、ベルフェイスでどのようなことを成し遂げていきたいですか。

私の役割を言語化すると“舞台演出家”がぴったりなんじゃないかと思うんです。

今、ベルフェイスには能力の高い人がたくさんいます。誰がみても主役を張れるような人もいれば、主役じゃないけど絶対に必要な人もいる。「こういう役だと、この人は最高に輝くんだよな!」みたいな人がたくさんいるんです。

今までの経験から個人としてというより、組織として成果を出せる組織にすることが会社全体のアウトカムを引き上げるために重要だという考えがあり、1人1人の能力をしっかりと見極めて、その人が最も輝ける役を演じてもらう。

役者たちには今の演目をより良い形で終えることに集中してもらいつつ、私は一歩後ろから次の舞台について考えるみたいなことが、今の私に求められていることだと思います。

その舞台演出家としての役割を自分の組織だけでなく会社全体に発揮していくことが、今の私の目標です。

舞台演出家。表現は違えど、幼少期にサッカーで周りへのアシストにやりがいを感じられていた溝口さんらしい表現ですね。溝口さんのキャリアとして考えるベルフェイスでのゴールはどこなのでしょうか。

今の段階では、ベルフェイスの価値が顧客に届いて、それが売り上げにつながり、事業として成功することですね。そのために私が何を成し遂げるべきかというところが大きなチャレンジなので、そのゴールに向かって突っ走っていきたいですね。

もしかするとそのゴールを成し遂げた時に自分なりの新しい目標が見えてくるかも知れません。

最後にスタートアップに挑戦するには勇気が必要だと考えて慎重になっている方も多いと思いますが、慎重な性格だった溝口さんから同じような方に向けて、あらためてメッセージをお願いします。

経験のない領域に踏み出すことはとても勇気がいることですが、その分自分の幅を広げるチャンスであるとも言えます。

自信のある軸をベースにしながら、少しでも自身の価値を広げられるような自分なりのチャレンジができれば、その積み重ねで自身の市場価値を広げていくことはできると思います。

「人生やったもん勝ち」だと思うので、迷ったら勇気を持って踏み出しましょう!

勇気を持って1歩踏み出したからこそ、見えてくる世界がそこにはあると思いますし、その世界が自身の価値を高めてくれると思います。

EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Tomoda / Editor:Shota Noda / Photographer : Shihoko Nakaoka
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