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ITベンチャーへの挑戦で開かれた新世界の扉。Cerevo 代表取締役 大沼 慶祐 氏が人生をかけて手にした”究極の自分事化”

「モノのインターネット」と訳されるIoT(Internet of Things)。従来はパソコンしか接続できなかったインターネットが今ではエアコンや冷蔵庫、オーディオ機器や家の鍵など、多くのモノに接続できるようになりました。

さらには日常生活以外にも農業や物流、インフラや医療などにも欠かせない技術となっており、ますますの業務効率化や快適性の実現が期待されます。これからもIoTを活用した新たなアイデアがサービス化されれば、より多くの人々が豊かな生活を送れるようになります。

そのようなIoTの領域で「実現したい未来に何が足りないのか」を考え、ハードやソフト、サービスの垣根を超えて今必要なもの、そしてこれから必要になるものを開発し、革新し続けることを目指す株式会社Cerevo。同社代表取締役として活躍する大沼 慶祐(Keisuke Onuma)氏の過去と現在に迫ります。

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“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。for Startups, Inc.のヒューマンキャピタリスト姫野 大喜(Daiki Himeno)と申します。

私たちが所属するfor Startups, Inc.では累計650名以上のCXOを含むハイレイヤーや経営幹部クラスのご支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。

EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。

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大沼 慶祐(Keisuke Onuma)
慶應義塾大学経済学部卒業。2015年株式会社経営共創基盤(以下、IGPI)入社、戦略コンサルタントとして全社のPDCA改善や新規事業立ち上げ等のハンズオン支援、クロスボーダーのM&A支援に従事。その後、YouTuberのマネジメント事務所 UUUM株式会社に入社。社長補佐や新規メディアの立ち上げ、海外アライアンスを担当後、DMM.com入社。経営企画室にてM&Aの出資検討や新サービスの営業支援を担当後、2019年9月よりDMM.make AKIBA事業部 事業部長を務める。2020年1月7日に株式会社Cerevoの代表取締役に就任。



Cerevoの事業内容と大沼さんの役割

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-- 本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、まずはCerevoの事業内容について教えていただけますか?

Cerevoの事業軸としてはふたつあります。ひとつがコネクテッド・ハードウェアの自社開発。もうひとつが、その領域の共同開発や新規事業開発です。

自社製品開発では、ライブ配信機材の開発や、TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』『攻殻機動隊 S.A.C.』『ソードアート・オンライン』に出てくる武器やロボットを、コネクテッド・ハードウェアを開発する技術を用いて劇中の動きを再現した「スマート・トイ」に注力しています。

共同、新規事業開発面においては、パナソニック株式会社や株式会社NTTドコモなど、大手企業を含め独自技術を持つ企業・団体と共に、企画から試作開発、量産まで、私たちの強みであるスピード感をもって新製品として世に出してきています。

-- その中で大沼さんはどのような役割を担っているのですか?

経営戦略や財務など会社全体を俯瞰して見ている立場で、それぞれの開発の製造責任を持っている者、営業の責任をもっている者、それらを束ねながら全体を経営しているような感じですね。

コンサルキャリアへの挑戦。生粋のビジネス好きが選んだ新卒1社目とは

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-- ご両親が自営業を営んでいたと伺いました。幼少期からビジネスが身近なものだったのではないですか?

両親は自営業で教材販売をしていました。会社に行って親の仕事が終わるのを待ったり、自宅に社員の方が食事に来てその日の営業成績の話をしていたりするような環境で、ビジネスが身近にある環境でした。ちなみに、私も手伝いの延長線上で小学生ながらテレアポをしたこともありました(笑)。

-- 小学生からテレアポとは...すごいですね!

私は帰国子女でオーストラリアの学校に通っていたのですが、夏休みに日本に帰国した際には、マニュアルを渡されてテレアポをしていました。

そういった物売りの世界にどっぷりと浸かっていたこともあり、遊戯王カードなどを日本で買ってきて、翻訳データ付きでオーストラリアの友達に売ることもありました。「学校でビジネスをするんじゃありません」と先生にこっぴどく怒られましたが(笑)。

-- そうだったのですね。ご自身でビジネスをしていたと聞くと、新卒で事業会社ではなく、コンサルティング会社を選ばれたことは意外な選択に感じます。なぜコンサルティング会社だったのでしょうか?

大学生になってからもその勢いは止まらず、自分でビジネスをすることもありました。しかし、これから社会人レベルでビジネスをスケールアップするには、ファイナンスや法律など、多くのことを学ばないといけないと思いましたし、企業相手となってくると、その企業がどんな風に考えているのか、どんな仕組みで動いているのかなどを理解をしていないと、より大きなビジネスはできないと感じていました。

そんなタイミングで、ゼミの教授から「君のように口の上手い人はコンサルが合ってるんじゃないか」と言われたことがきっかけで、実際にコンサルティング会社で働くOBの方々と話していくうちに、身につけたいビジネススキルを習得できるのではないかと思い経営共創基盤(IGPI)への就職を決めました。

-- 実際に入社されたIGPIではいかがでしたか?

コンサルティングは外部からのサポートが主なので事業主体として当事者意識を持つことは難しいケースが多いのですが、IGPIに関しては、事業再生を得意とするハンズオン型のコンサルティングのため、事業への手触り感がありすごく面白かったです。


脱コンサル。ITベンチャーとの出会い

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-- 充実した時間を過ごされていた中で、転職を考えるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

きっかけは、ITベンチャー企業のクロスボーダーM&Aのプロジェクトに関わったことです。

IGPIではレガシー企業の案件が多い中、ITベンチャーの海外M&A案件がありました。私は英語ができたこともあり、若手だったにも関わらず、プロジェクトメンバーにアサインされました。

その時に、私とあまり年齢が変わらないベンチャー企業の社長が、立派なオフィスを構えて事業を営み、急成長している海外ベンチャーを買収して、さらなる事業成長をしようとしている光景はとても刺激になりました。

-- それでIT業界に興味を持つようになったのですね。

率直に「この急成長をしていく流れを体験してみたい」と感じました。IGPIの特性上、事業再生系の案件が多く、1→10、10→100フェーズの急成長期を当事者として関わることは難しいと思い、IT業界を色々と見始めました。

そんな中、ITベンチャー界隈の方々が集まるコミュニティと接点を持つようになり、そこで知り合った方にたまたまUUUM株式会社の鎌田さん(​​UUUM株式会社 代表取締役会長)を紹介してもらったのです。


ベンチャー企業の衝撃と価値観の広がり。YouTubeマーケットとYouTuberとの出会い

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-- 鎌田さんとの出会いはいかがでしたか?

一言でいうと、衝撃でした。正直なところ、鎌田さんに出会う前まではITベンチャーの凄さは分かっていたものの懐疑的な部分もありました。YouTubeに関しても「イケている」という感覚はあまりなく、むしろ少しナナメに見ていたと思います。

それが一気に自分の価値観がひっくり返るような気づきを得られ、本格的にITベンチャーに行きたいと思うようになりました。

-- 「価値観がひっくり返る」とは、どのようなお話をされたのでしょうか?

YouTubeが本当にビジネスとして成り立つのか、そもそもニーズがあるのかなど、自分が懐疑的に感じていた部分に関していくつか回答をいただきました。

-- どのような回答だったのでしょうか?

例えば「めちゃイケ」というテレビ番組があったじゃないですか。このテレビ番組を私たちの世代は凄く面白いと思って見ていたと思うのですが、実は、親の世代にはその面白さは伝わらないことが多かったのです。

それと同様のことが実際に起きているという話で、YouTubeも私達の世代にはまだ面白みが伝わらなかっただけで、それとは別にYouTubeを面白いと感じる世代が存在していて、その世代が将来的にチャンスに溢れている重要なマーケットだと教えてもらいました。

さらに鎌田さんのお誘いを受けて、急成長中のマーケットで伸びている会社に、経営の近くで見れる立場で参画できるということだったので、もういくしかないと思い、お誘いから1ヶ月くらいのスピードでUUUMへの入社を決めましたね。

-- UUUMで働く中で得られた気づきはどんなものでしたか?

事業会社ならではの熱量と真剣味です。毎週、役職者が集いPLやKPIなど数字をなめていく会議があったのですが、雷に打たれたような想いをしました。

資金調達をしてIPOという目標を掲げていて、事業目標を達成していかないといけないシビアな局面だったこともありますが、KPIをどうしても達成してやるんだ。という熱量と真剣味のレベルが違いました。

IGPIでも近しい会議を見てきましたが、究極的には自分たちの事業ではないこともあり、数字やアクションに対してそこまで責任を負わなかったのが実態で、改めて当事者になってその熱量と真剣味に圧倒されたことを記憶しています。

コミット力という点においては、YouTuberというパートナーからも多くを学びましたね。

–- どういうことでしょうか?

YouTuberは動画上はとても楽しそうですが、裏側ではとてつもなく毎日忙しいのです。

彼らは毎日のように撮影と編集をこなしながら、誹謗中傷コメントも受けながら、再生数の伸びで悩みながら、中には廃れていくYouTuberもいれば、伸びていくYouTuberもいます。そんな人気商売の世界で、自分を晒しながら、必死に自分のチャンネル作りをしていて、シンプルにすごいと思いました。なかなかできることじゃないなと。

UUUMのメンバーが鎌田さんを筆頭に、極限まで当事者意識を高めて結果にコミットできるのは、YouTuberというパートナーの存在を敬って、一緒にマーケットを大きくしたいというスタートアップらしい熱さがあるからだと思いました。まだ未熟だった私に何かを達成していく厳しさやビジネスの所作を改めて教えてくれたUUUMには本当に感謝しています。それから私も仕事を通じて、よりハングリーに当事者としてコミットしたいと思うようになりました。

本当に成りたい自分を目指して。IoTスタートアップ・Cerevo代表に至るまで

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-– 凄く充実した環境であったと思いますが、そんな中でなぜ合同会社DMM.com(以下、DMM.com)へ転職することになったのでしょうか。

UUUMで事業を推進していくうちに、もっとオーナーシップを持ってやっていきたい気持ちが強くなりました。もっと経営に近いポジションで、極端な話、多少エクイティが持てるぐらいのレベル感で事業に携わっていきたいと思いました。

ただ、色々と探したものの、なかなかしっくりくるところが無かったところ、フォースタートアップスでヒューマンキャピタリストをしている森 心之介さんにDMM.comを繋いでいただいて興味を持ったのです。

-- 森を通じて、DMM.comに興味を持ったのはなぜでしょうか。

今はこういうことをやっていて、次こういうことをやろうとしているから、こういう人材が必要で、だから大沼さんのここが合うと思いますよと、DMM.comの現状とこれからの点と点をちゃんと把握して、ストーリーとして話してくだったのです。聞いていてイメージも湧きやすく、単純にわくわくしました。

面接を含め色々と聞くとDMM.comでは、事業毎の部長がひとつの中小企業の社長ぐらいの決裁権があるような会社で、私の探していた環境に非常にマッチしました。

-- 実際に入社したDMM.comはいかがでしたか?

私は経営企画室の所属だったのですが、DMM.comは事業部が強い環境だったこともあり、事業部に入り込むことには苦労しましたね。

-- たしかに経営企画から事業部に入り込むのは大変そうですね。どんな工夫をされましたか。

直接的な業務の繋がりが無い中だったので大変でしたし、時間もかかりましたが、徐々にメンバーの信頼を獲得するところからコツコツ頑張りました。

そもそもの始まりは、事業部の1つでなかなか改革が上手く行かないところがあり、翌週から営業支援に行ってきてほしいというお達しでした。

ヘルプに行った事業部からすると経営企画室から来た若造がいるなという感じでしたが、黙々とテレアポをして、淡々と営業に行って、一緒に営業同行もしてもらって事業の売上に繋がるようなことを地道にコツコツとやり続けました。

一通り信頼してもらえるようになって、メンバーとのコミュニケーションも増える中で、事業の課題感みたいなものが段々分かるようになりました。

それらをまとめて経営企画にレポートしていく過程で、改革すべきことを検討するのですが、誰がやるかという話の中で私が担当することになり、結果的に入社半年くらいのタイミングで経営企画室と事業部の副事業部長を兼任していました。

-- 現在はCerevoで代表を務められていますが、どのような経緯で着任されたのですか。

結局そこから、入社8ヶ月くらいの時にモノづくりシェアスペース「DMM.make AKIBA」の事業部長になりました。さらに1年ほどかけて業績も回復させたのですが、その間も並行でCVCの担当をやらせてもらったり、新規のコンサルティング事業が立ち上がるタイミングで責任者をやらせてもらったりと多くのミッションを担っていました。

そんな中、DMM.make AKIBAの立ち上げにも関わっているハードウェア・スタートアップCerevoの改革を行っていきたいという相談を受けました。当時はCerevoの存在を認知していたくらいの感じだったのですが、代表という立ち位置で改革を進めるという挑戦をしてみたいと思い受けることにしました。話があったのがクリスマスぐらいで、翌年の1月初週くらいには代表着任というスピード感でした。

MBOの選択。代表としての挑戦と新しい決意

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-- 組織の代表という立場はオーナーシップもあって、念願の機会だったのではないでしょうか。

そうですね、オーナーシップを持って組織を見るという観点では、それまで会社の事業理解をして改革を進めてきた立場からもう1段上がったポジションで、まさに念願でした。

さらに会社の代表としてマーケットを見ることが非常に重要になってきますので、そこはIGPIやUUUMで学んだことも活かしつつ、まず出来ることからやっていくということで、今もなお沢山のチャレンジをしている状況です。

-- 新しい立場となってからどんなチャレンジがありましたか?

代表着任当初の状況は凄くチャレンジングでした。というのも、先ほどお話しした経営企画部としての事業改革のケースとは違って、今回はCerevoのメンバーと関係値が全く無い状態から代表就任となっています。さらに取締役も前身の4名がいる状態で「どうしよう。ヤバい。なにからしよう。」と感じたことを記憶しています。

そんなところから、まずそれぞれが何をやっているのか把握することから始めて、その次に経営体制を整えたり、コスト構造の見直しで製品を絞っていく改革をしていったりとで、結果的に業績も上がっていきましたね。

その時は、1年ほど走り続けて「こんなに会社って変わるんだな」と思いましたし、会社のメンバーも頑張ってくれて、その頃には各メンバーとの絆もできていました。

-- 次のチャレンジとしてMBOを選択することになったのはなぜでしょうか。

元々2008年にできた会社で、歴史がある会社だったので、ここに価値を感じているメンバーも一定いたのです。そのことを考えた時に、業績が上がったからDMM.make AKIBAに戻りますというのは少し違うなと感じました。経営企画としてのサポートでもなく、事業部長としてでも無く、代表取締役として入ったからこそ、今いるメンバーに対する責任はちゃんと取りたいなと思い、出資元企業に話をしてMBOすることにしたのです。

究極の自分事化。大沼氏が目指す理想の組織とは

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-- 改めて、代表取締役になったご自身の中でこれまでを振り返ってみて一番の収穫は何だったのでしょうか。

一番は、究極的に自分事として事業を捉えられるようになったことだと思います。代表取締役だと最終的には自分が意思決定をしないと何も前進しません。当然その分の責任があるのでヒリヒリした感じはあります。

替えが一番効かないポジションであることや、全ての戦略的な方針も自分を通して行われます。それは代表取締役にしかできないポジションで、まさに「究極の自分事化」だなと思います。

-- 大沼さんは今後Cerevoを通じてどのようなことに取り組んでいきたいですか?

まだ明確にこれというものが固まっているわけではないのですが、私自身の経験とCerevoという事業を通して社会への貢献を強めていきたいです。

Cerevoはこれまで事業をなんとか大きくしていくことに必死だったりしたこともあり、社会への貢献軸を強められる体制ではありませんでした。ですが、徐々に足元が固まってきた中でCerevoの社会に対しての意義、明確なビジョンを考えていきたいです。

-- 最後に今後どのような方々と一緒に働きたいか教えてください。

エンジニアがメインの組織にはなりますが、基本的には探究心を持っている人が向いている組織だなと思います。会社という組織である以上、会社の方針に沿って日頃の業務に取り組むことも大事ですが、私は個人のクリエイティビティを重視したいです。当たり前のことをやる中で、同時に自分がやりたいことが何かを考えて、そこに対して真剣に取り組める人に来てほしいです。

-- 軸のある方ということでしょうか。

そうですね、これが実現したら面白いとか、例えばこういう機能があったらいいよねとか自由に考えていただきたいです。そして最後まで自ら責任を持って実行できるような方を求めています。常に新しい価値を生み出していくようなチームを創りたいですね。

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姫野 大喜(Daiki Himeno):大分県出身。大分大学経済学部在学中、フィンランドのタンペレ応用科学大学に約 1 年間留学し、自然観光学などを学ぶ。大学卒業後は大手旅行代理店にて法人営業に従事。その後、成長産業への投資により日本のイノベーションを牽引するビジョンに共感してフォースタートアップスに参画。ヒューマンキャピタリストとして、スタートアップへの挑戦者と日々向き合い伴走し続けている。趣味は写真とバスケ。
Twitter : @daiki_himeno

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EVANGE - Director : Koki Azuma / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Daiki Himeno / Editor : Koki Azuma / Photographer : Takumi Yano

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