「子供の頃からグローバルで戦いたかった」meleap冨田由紀治COOがスタートアップに見出した可能性と未来

2020-03-31

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冨田 由紀治(Yukiharu Tomita)
サイバーエージェント、オンラインエンターテイメント上場企業取締役を経て、2011年9月経営企画室長としてgloops入社。同年11月にサンフランシスコを拠点とした gloops International Inc. を設立し、同社 CEO に就任。クルーズ株式会社にてEVPを経た後、meleap 取締役COOに就任。

目次

  1. meleapの事業と冨田COOの役割とは
  2. “グローバルで挑戦する”という夢を胸に、初めて飛び込んだサイバーエージェント
  3. 転職の時は、パラダイムシフトの波に乗り遅れるな
  4. 上場企業で挑戦してわかった、グローバル展開の難しさについて
  5. 上場企業から、社員数一桁のmeleapに意思決定をしたワケ
  6. 大手の戦い方と、スタートアップでの戦い方の違い
  7. 冨田COOの働き方の軸とは

meleapの事業と冨田COOの役割とは

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-- 早速ですが、まずは事業内容についてお聞かせいただけますか?

我々は、HADOという新しいスポーツを作っています。ビジネスとしては2つに分けられます。一つ目はHADOを中心とするアマチュアリーグのHADOで、認知を高める役割があります。そして平行して行っているのが『HADO Xball』というプロリーグ事業です。来年の6月から、プロ選手を雇ってリーグを開始していきます。そこにおける私の役割はCOOとして、事業全体の管掌、福田と2人で行う資金調達、そしてコーポレート部門の管掌です。


-- 「COOはなんでも屋」とは聞きますが、本当に多岐に渡りますね。前職のクルーズではどんなことをされていましたか?

当時クルーズはゲーム事業を行っていたのでゲーム事業向けのIPライセンスを獲得してくることと、ロサンゼルスに駐在して、現地の有力なデベロッパーと組んで開発よりもパブリッシュを行っていました。

“グローバルで挑戦する”という夢を胸に、初めて飛び込んだサイバーエージェント

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-- グローバルの大学に入られた後、サイバーエージェントへ入社された際の意思決定までのストーリーをお聞かせいただけますか?

実は、子供の頃から「グローバルで活躍したい」と漠然とですがそんな憧れがありました。

-- グローバルに活躍したいと思っている中で、外資系への就職は考えなかったのですか?

大学生の頃、まさしく「グローバルなら外資系だ!」と思い外資系の会社でインターンをして、その際に、選択肢から外れたのです。日本にある外資系企業ってコミュニケーションは日本語が中心で、お客さんも日本がターゲットで、実際多少英語を喋るくらいで、日本以外のマーケットは狙ってませんでした。だから就職先としては外資系は考えていませんでした。


-- 外資系のイメージに流されるのではなく、ご自身の目で確認したのですね。新卒でサイバーエージェントを選ばれた経緯を教えていただけますか?

実は、サイバーエージェントに入る前にフリーランスのエンジニアをやっていて、サイバーエージェントの中に知り合いがいて、その方に誘っていただく形で入社しました。

当時のサイバーエージェントは上場して1年くらいの時。様々な新しい事業が立ち上がっていました。HTMLメルマガ(メールビジョン)が立ち上がっていて、私はその中に動画を差し込んで、動画でメディアを作っていました。例えばお笑いの方に、コンテンツを作ってもらいメールで配信していました。そしてお客さんが動画を開いて見る。そういう広告をやっていました。今のAbemaTVのはしりですね。当時から藤田社長は動画に非常にこだわりが強く、2000年当時からやっていました。

メールビジョンに入ってすぐに、MLB.comというアメリカのプロ野球のMLBの公式ライセンスを独占契約してメディア事業を立ち上げる社内公募があったので手を上げてMLB事業に入りました。そこからグローバルの事業に浸かるようになりました。

その事業は残念ながらたたんでしまいました。ライセンスで10億ぐらいかかり、オペレーションもかなりかかって、ブレイクイーブンに持っていくことさえとても難しく撤退しました。

転職の時は、パラダイムシフトの波に乗り遅れるな

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-- フリーランスを経た後すぐにグローバルに挑戦されたのですね。その次のキャリアも教えていただけますでしょうか。

その時にD2Cさんからモバイル新規事業を立ち上げのお話があり転職しました。そこでメディア事業を立ち上げました。当時iモードという公式メニューを作って、その中にEC事業者向けのメディアを作り、その自社メディア部門のセールスのトップをしていました。

D2Cさんは大手企業さんからの資本が多く、当時上に行くにも天井みたいなものがあり、それでどうせだったらも経営寄りの仕事がしたいと思い、そこからケイブさんから役員候補の話をいただき転職しました。

そこで取締社長室長をしておりました。当時PCゲームをやっていた会社なんですけど、モバイルっていうのがまだやっていなくて、当時mixiがオープンプラットフォームをやった時、GREEやDeNAもプラットフォームやモバゲーなどをやってくるんじゃないかということで、事業部門と連動してサードパーティーとしてプラットフォームに入って新規事業をつくるという戦略を描き、そこからモバイルの売り上げが上がっていったという形です。


-- 冨田さんは役員という立場がありながらも、適宜環境を変えて成長著しい業界で常にチャレンジされているように見えるのですが、転職の際に大切にしている軸などありますか。

私は転職するタイミングでは、業種は変えずネット中心でやると明確に軸を決めています。ネットはまだまだ伸びると思っています。

役員であっても会社を変わるっていうのは時によっては必要かなと思っています。サイバーからD2Cに移った時もモバイルの波が来ていました。D2Cからケイブに移った時もモバイルゲームの波がありました。パラダイムシフトが起きている時に転職を考えるようにしています。

理由としては、パラダイムシフトが起きた時に乗っかれる会社が少ないからです。既存事業が成功していればするほど、イノベーションのジレンマが起きるからです。そういう時に外を見るようにしています。


-- なるほど、パソコンゲームからスマホのゲームにシフトが起きた時にgloopsに行かれたんですね。

その通りです。当時SAP(Social Application Provider:ソーシャルアプリを開発、提供している会社等を指す)のトップの会社がgloopsでした。グローバルにスタジオを作って、グローバルでゲームデベロップ事業、パブリッシュ事業を行いたいということで、ご縁があり入社して、サンフランシスコへの展開を進めました。

上場企業で挑戦してわかった、グローバル展開の難しさについて

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-- 幾度もチャレンジする中で体感された、グローバル事業の難しさについてお聞かせいただけますでしょうか。

1つ目は、日本でやっていればある程度形にするのは難しくないと思いますが、グローバルだとgloopsというブランドを誰も知らないので、信頼がない中で1から魅力を伝える難しさです。

2つ目は、当時gloopsは売り上げ250億規模の会社だったので、初年度から事業が10から20億くらいの規模でないと事業案が通らないという雰囲気もありました。

3つ目に、オペレーションやマネジメントの判断速度も日本の事業をベースにできているので、グローバル経験のまったくない企業である程度大きくなった会社で、グローバルの事業をゼロイチで進めていくのは非常に難しいなと感じました。

meleapは少数精鋭のスタートアップですが、1番意識しているのは売り上げがほぼない時期からプロダクト、チームづくり、オペレーション等をグローバルを狙うことに照準を絞って行っています。当初からの基本戦略が実り、現在では26カ国65カ所にフランチャイズを展開しており、売り上げの70%がグローバルです。それは最初からグローバルを狙ったオペレーション構築と経営陣の判断軸を作っていたからです。

-- オフィスに来た印象としても、社員さんも外国から来られた方が多いですよね。

そうですね。社員44名中10人が外国籍です。この10人はほぼ営業のメンバーです。今、エリアで日本、アジア、欧米で分けています。日本のメンバーは日本語だけのメンバーですが、アジアや欧米のメンバーは最低でも4ヶ国語喋れます。

多言語対応能力を求めた訳ではないですけど結果そうなりました。現地の人と交渉するのに英語だけでは通じません。中国語は必要ですし、中国国内だけでも大きく2つ言語があったりするので。


-- そういった方は転職市場でも引く手数多だと思いますが、meleapのどこに惹かれてジョインされるんですか?

プロダクトを見て「単純に面白そうだな」って言ってくれるある意味「面白いコトに惹かれる」人間が多いですね。単純に事業だけならうちじゃなくてもいいんですけど。日本発で世界に届けるということに面白さを感じてるメンバーが集まっています。1ポジション80〜100人程面接して通る一人採用するくらいこだわって採用しています。

上場企業から、社員数一桁のmeleapに意思決定をしたワケ

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-- グローバルの難しさについてmeleapさんの事例も合わせて教えていただきありがとうございます。少し話を遡らせてください。gloopsからクルーズに行かれる際には何があったのですか?

gloopsがネクソンに買収されて会長がいきなり退任して、どうしようかなって思っていた時期にクルーズから、サンフランシスコに展開してパブリッシュ事業をやっていきたいんですが、一緒にどうかというお話をいただきました。人の巻き込み力、人を気持ちよくさせる力が半端ない小渕宏二社長に惚れてしまい、会ったその日に「いきます」と返事をしました。

ただ、イノベーションのジレンマがありました。クルーズは当時売り上げが200億ほど。特にゲーム事業が波に乗っていて、初年度から売り上げ10〜20億が求められる雰囲気の中で、グローバル事業ってなかなか最初から伸びにくいんです。また、オペレーションや判断軸が全て日本向けになっているので、このまま伸ばすのは難しいかなと感じていました。

やはり子供の頃からの夢でグローバルで挑戦したいという気持ちがあったのと、長年雇われ役員だったので株主兼取締役というキャリアへの憧れがだんだんと強まっている時期でもありました。外を見始めた時にfor Startupsのヒューマンキャピタリストの泉友詞さんに会ってお話しをした際、meleapを紹介していただき、CEOの福田に会いにいきました。当時は社員5人くらいでした。福田は非常にピュアでビジョン先行型で、「これで世界を取りたい」「HADO拳で世界を席巻したい」「サッカーを超えるマーケットを創るぞ!」と吠えていました(笑)。

そのビジョンが面白かったのと、当時プロダクトができていて、プロダクトのデモ体験をさせてもらって、グローバルで受け入れられそうな感じがしました。ドラゴンボールやストリートファイターは世界中で多くのファンがいて、誰もが子供のころから憧れて「波動拳」を出したいと思っているので、それが「HADO」だと実現できる!となるとそれを出したくない、なんて思う人はいないですよね?(笑)

日本は人口1億2000万人で平均年齢40代中盤。30年もすれば1億人を割り込んでいく。マーケットが縮小していくことは目に見えているので。グローバルに目を向けると人口が70億人で、アジアは平均年齢が30歳前後。伸びるしかない。HADOは若手向けのプロダクトなので、伸びるマーケットでビジネスをやるのは戦いやすいと思いました。HADOをどうしたらグローバルに広げていけるかなと考え始めたらワクワクし始めて、それでジョインする決断をしました。

また、今までは雇われる立場として役員をしていましたが、今回は資本参加もOKということで、次のキャリアでは資本参加して経営者兼株主としてジョインしたいと思っていたので、そこが合致したのもよかったです。今までは雇われ役員ということで業績をあげてもほとんど影響がない。その意味では業績を本気であげるインセンティブが弱かったと感じていました。そういった中で株主になることで、自分のパフォーマンスがダイレクトに企業価値に反映されるというような緊張感の中で仕事をしてみたい、とずっと思っていたのでまさに今回は自分のキャリアを高める上でとてもチャンスだと思いました。

ただ当時のmeleapはキャッシュが豊富ではなく、待遇的な部分で制限がありました。一方、私も家族がいてそこまで年収を下げられないということで、もう一社で取締役COOとして役員をやっていました。2社から役員報酬もらって生活を担保する。そのようにして嫁ブロックを回避しました(笑)

大手の戦い方と、スタートアップでの戦い方の違い

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-- 前職と今での働き方の違いがありましたら教えていただけますでしょうか?

スタートアップに来て1番苦労しているのは資金がないことです。今までの会社はプロジェクト毎に予算はありますので調達の心配はない。役員会を通せばプロジェクトがgoになる。うちの会社だとプロジェクトがgoとなっても、「お金をどうするのか」ってところがついて回ります。

あと人がいません。だから営業するにしても自分で0→1をやる。そこはかなり意識してやりました。納品で海外行くときも部下はいないので一人で行って納品して、お客さんに説明して帰ってくる。これをつい数ヶ月前までやっていました。ゼロから事業を作っているのでそこ自体は楽しい。

ただ、0→1はある程度自分で走ればなんとかなるのですが、1→10にするとき重要になってくるのが組織づくりです。人をどう採用して、どういうチームを組むか。

今ボードメンバーとして一緒にやっているCBO(Chief Business Officer)のリムは猛烈アタックして入社してもらいました。彼はもともとある大手エンタメ企業の中国事業の立ち上げをしていて、転職媒体を通じて日本で会って何度か会食して、まだ中国にいるということだったので、中国に3日間行って、毎晩会食して口説き落としました。

-- 最後は執念という感じですね。採用という面で大事にされていることを教えていただけますでしょうか。

HADOは世の中に他には存在ない事業です。コンペティターがいないというのは良い風に聞こえるかもしれませんが、逆に、この事業が成長するかどうか証明するのが難しいです。「この事業伸びるんですか」と言われた時に論理的に答えることが難しい。なので、判断基準でいうと、先が見えないものの将来性に賭けて一緒にやっていく心意気や考え方があるかどうかがひとつ重要かなと思います。

採用面でいくと私が持っていないスキルはいっぱいあるので、そこを持っていると感じさせてくれる人を採用するようにしています。


-- 未だ無い市場を切り開いている事業だと、前例が無いため資金調達も大変そうですが、どのような事を気をつけられましたか?

まずは、ファクトとして今までの実績がこうやって積み上がってます、というところ。売り上げだけではなく、プレイヤー数、展開国数の拡大などのKPIを置いて、これを伸ばすために資金をこのように使いますという重要部分を一生懸命丁寧に説明する。あとは数を当たっていましたね。

-- ファクトで置いて進めていたのですね。ちなみに、HADOのマネタイズをどうしているのですか?

今の売り上げの立て方は、フランチャイズの権利などライセンスを売り、スポンサー収入、一般の人からのチケット収入を得ています。来年から行うプロリーグに関しては放映権の販売を行っております。あとはアプリ課金、投げ銭ですね。

ビジネスモデルとして近いのはライブエンターテイメントです。ライブイベントを実施しスポンサーについていただいて、アプリ課金をしてもらうことです。

冨田COOの働き方の軸とは

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-- 具体的な質問にもお答えいただきありがとうございました。ところで、前職までに、冨田さんには師匠のような存在はいらっしゃいましたか?

僕が勝手に師匠だと崇めているのがクルーズの小渕社長ですね。小渕社長のすごいところは判断力と胆力です。次の主力事業を大きく育てる目的でその時々の主力事業(2009年人材事業、2010年広告事業、2016年ソーシャルゲーム事業など)を売却してでも、事業ポートフォリオを組み替える判断力・胆力は、普通ではできない判断なのかな、と思っています。

「強いものが生き残るのでなく、変化できるものが生き残る」というのを体現されているすばらしい経営者だと思います。


-- ありがとうございます。素晴らしいビジネスマンに感化された冨田さんの『働き方の軸』を教えてください。

自分の気持ちが乗らないビジネスはやらないほうがいい、という事です。自分の気持ちが乗るビジネスに乗った方がいいですね。「人生」という「時間」は限られているので、その貴重な時間を使うなら自分が前のめりでできる事業に乗る方が成果が出しやすいと思います。


-- 最後になりますが、スタートアップを検討することを躊躇している大企業の方へ何かメッセージがありましたらいただけますでしょうか。

大手の企業に行くのもチャンスがあっていいと思いますが、何か事業を0→1でやりたいという想いを持った人。事業を作る、人を作る、資金を作る、経営アセット全てを作るってとこがやってみたいと思う方はスタートアップは最高の環境だと思いますよ。

怖いところもありますけど、決めたら飛び込んで、あとは自分で形にするしかないです。あとは数こなす。それだけです。

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EVANGE - Director : Kanta Hironaka / Creative Director : Munechika Ishibashi / Assistant Director : Yoshiki Baba / Assistant Writer : Ryosuke Ono, Ryohei Watanabe / PR : Hitomi Tomoyuki / Photographer : Jin Hayato

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