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「組織の成長×自分の成長」マッキンゼー、楽天子会社社長を経てSmartHRのCOOを務める倉橋隆文氏が語る成長の源泉とは

“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。for Startups, Inc.のEVANGE運営チームです。

私達が所属するfor Startups, Inc.では累計120名以上のCXO支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。
EVANGEは、私達がご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。

倉橋 隆文(Takafumi Kurahashi)
1983年生。東京大学理学系研究科修了。2008年よりマッキンゼー&カンパニーにて大手クライアントの経営課題解決に従事。その後ハーバード・ビジネススクールにてMBAを取得。2012年に楽天株式会社に転職し、社長室や海外子会社社長などのポジションで事業成長を推進。2017年7月よりSmartHRに入社、COOを務める。


人事と労務をテクノロジーでもっと便利に

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-- SmartHRの事業内容について教えてください。

SmartHRは、煩雑でアナログな人事労務にまつわる手続きや管理を効率化するサービスを提供しています。

社会保険制度自体は素晴らしい制度なのですが、お世辞にもその手続きは生産性が高いとは言えないのが現状です。

ですが、SmartHRを用いると入社手続きや雇用契約もペーパレスでカンタンに行えます。
個人情報を従業員に直接入力してもらえるので、担当者の負担も減ります。

また収集した従業員情報が社員名簿に集約されるのはもちろん、住所変更や扶養変更等の手続きを行う度に、従業員情報が自動で更新されるので、煩わしい思いをすることはありません。さらには、蓄積されたデータを活用して、社員名簿や人事レポートをカンタンに作成可能です。

おかげさまで累計25,000社以上で導入されております。

SmartHRは企業にある人事労務のアナログな業務を、テクノロジーと創意工夫でシンプルかつ便利にしています。


-- SmartHRにおける、倉橋さんの役割を教えてください。

現在はCOOを担っており、役割としては主に2つあります。

1つは、マーケティングやセールス、カスタマーサクセスを含むビジネスチームのマネジメント。具体的にはリソースの管理や今後事業として何を仕掛けていくか設計しています。

もう1つは、会社全体の戦略立案。中長期戦略を定め、この1年間どのようなプロダクトを開発していくかを開発チームと策定しています。

スタートアップにしては珍しいのですが、社長の宮田は「任せるスタイル」で事業にほとんど口を出してきません。

これがそのままSmartHRの「自律駆動型」文化になっていて、私自身も各チームに対してマイクロマネジメントしないようにしています。

スタートアップの経営を「100の難問を解くこと」に例えると、SmartHRは「社長が全て解くのではなく、専門性をもったメンバーが手分けして解く」というスタンスで経営しています。1人で100問解くよりスピードが上がるだけでなく、1問に対してトライ&エラーを重ねて正解に近づきます。そのため、経営陣はメンバーが自発的に難問を解けるように、環境や情報の整備が役割になっています。


-- 倉橋さんの過去を遡らせてください。新卒でマッキンゼー&カ⁠ン⁠パ⁠ニ⁠ー(以下マッキンゼー )に入社されていますが経緯を教えていただけますか。

学生時代、私は学者志望で物理学を専攻して大学院まで進学しましたが、修士過程の途中で自分が研究者に向いてないと気付き、キャリアを変えてビジネスの世界に飛び込もうと考えるようになりました。

就職については信頼できる友人に相談しました。もともと理系のバックグラウンドがあり、論理的に考えることが得意な私が一番活躍できるのはコンサルティングファーム(以下、コンサル)なのでは、という仮説に至り、1番最初に内定をもらったマッキンゼーに決めました。

その頃からなんとなく海外で仕事をしたいという思いがありマッキンゼーでも海外プロジェクトを志望していたのですが、入社したのがリーマン・ショックの年だったため、海外のプロジェクトに日本人を派遣することが一切なくなってしまったんです。そこで、入社する前から、マッキンゼーで一定の経験を積んでから、MBA取得もかねて留学しようと決意していました。


-- マッキンゼーでどんなお仕事をされていましたか?

クライアントの課題に対して、解決策を提案するために、調査や分析をしていました。時には解決策の導入・実行を、クライアントと一緒に進めることもありました。

通常のコンサルタントは、何十年もその道でプロとして活躍されてきた方に対して提案をします。そのため、早い段階で自分の専門領域を決めて、自らの専門性を高めます。しかし、私は留学すると決めていたので、専門領域を絞らずに約10の様々な業界プロジェクトに携わりました。


目先のお金より実業の世界に飛び込みたいという強い意志

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-- MBA取得のためハーバード大学に留学されましたが、その後のキャリアにどんな影響がありましたか?

自分のキャリアや人生について2年間真剣に考える時間ができましたし、MBAに通う学生達と青臭く「自分の人生を何に捧げるべきか」を語り合った機会は本当に財産になりました。

彼らとの対話の中で、「日本の経済を失速させない、沈めさせない」という自分自身の思いを再認識し、「プロの経営者になりたい」という気持ちが強くなりました。

それと同時に、このままコンサルで働き続けてはいけないと痛感しました。


-- コンサルで働き続けてはいけないと感じたのはどうしてですか?

MBAの授業はケーススタディと呼ばれる形式を取っていて、実際の企業で過去にあった重大な局面にバーチャルに身を置いてみて、自分が経営者ならどうするかという議論を繰り返します。

例えば、「トヨタがリコールで問題になりました、アメリカではかなり批判が起きています。あなたがトヨタの社長だとしたら、どういう行動をどの順番でやりますか」というお題を出され、生徒と先生が入り混じって議論を展開します。

疑似的に経営をひたすら毎日続けるうちに、ビジネスを成長させる要素は決してコンサルが行うプランニングだけではないと痛感しました。

プランニングは最初の1歩でしかなく、実際に行動に移してみると大体失敗し、そこから振り返って、修正して、また実行して、何度も軌道修正しながら最後に何とか結果が出るか、それでも失敗に終わる時もあるのがビジネスの世界なのだと学びました。

だからコンサルとして外部から企画を考えるだけでは、一流の経営者にはなれないなと感じました。

実際コンサルとして働いていた時も、クライアントに提案した企画が実行されたのか、実行されてどういう結果になったのかは知る由もありませんでした。そのため自分の仕事が世の中に貢献している実感がなく、世の中にとって価値があることなのか悩んでいました。


-- 留学から帰った後はどうされましたか?

留学中に芽生えた、実業の世界に飛び込みたいという思いが強くなり、マッキンゼーへの復帰をやめて楽天に転職しました。ただ留学はマッキンゼーの社費留学で行っていたので、支援いただいていた1,000万円を超える費用は借金して返済しました。

そのままマッキンゼーに戻って2年間働けば返済義務はありませんでしたが、30代というキャリアにおいて貴重な2年間を費やして、お金のためだけに戻るのはもったいないと考えたんです。目先の1,000万円より、実業の世界に飛び込むことが、将来の自分のキャリアに必ずプラスになると信じて転職しました。


新規事業で実感した「価値提供」と「自己成長」

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-- マッキンゼーからの転職先としてなぜ楽天を選ばれましたか?

理由は主に2つあります。

1つはITがすごく伸びていて、自分もITが好きで、その世界に身を置きたいと考えたからです。

もう1つは、泥臭くやる力をつけたかったからです。楽天は美辞麗句だけではなく、泥臭いことも気合いと根性でやり切るような組織で、自分が苦手だった能力が問われる組織でしたので、あえて飛び込みました。


-- 楽天で最初はどういうポジションからスタートされましたか?

社長室に配属され、各事業責任者の方に方向性を提案するなどコンサルのような役割を担っていました。

ただ、私はもう少し現場寄りの泥臭い仕事をしたかったので、半年経った頃に三木谷さんと2人きりになれる機会に直接「現場寄りの事業をやりたいです」とお願いしました。その半年後に海外の子会社の社長に任命されたんです。

従業員が50名くらいの会社で、私は業績不振の立て直しをするため、マネジメント経験ゼロで社長として入りましたが、結果は大失敗。自分の能力の無さ、不甲斐無さ、マネジメントの難しさを痛感しました。

その後、日本に戻って来て様々な仕事をやりました。辞める前の最後の半年間は、新規事業の旗振り役を担いましたが、それがかなり楽しかった。事業がどんどん成長し、世の中に新たな価値を提供する。その喜びに夢中でした。

しかし、新規事業を任されて半年が経つ頃、社長命令で違うことを任されてしまったので、転職を決意しました。

新規事業への挑戦が、世の中への価値提供と自己成長に繋がる実感があったので、転職活動ではスタートアップに絞ったんです。


転職を機に取り組んだ、人生のデューデリジェンス

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-- 転職活動で、他の企業からもオファーがあった中、SmartHRのどこに惹かれましたか?

惹かれた点は2つあります。

1つは、メンバーに任せる「自律駆動」の企業文化に惹かれました。

もう1つは、事業内容が圧倒的に良かったことです。

コンサル時代も楽天時代もいくつか企業買収案件に関わって、事業にどれくらいの価値があるか調べるデューデリジェンスの仕事をしていました。オファーを頂いている会社のうち3社くらいに絞って、それぞれとNDA(秘密保持契約)を結び、提供可能な情報を全て頂いて、自分の人生をかけたデューデリジェンスをした結果、圧倒的にSmartHRが魅力的だったのです。

手触り感のある価値を世の中に提供して、日本中長年ある課題を解決する新規的の高いサービスを展開して、実際にマーケットからも好評いただいて、実績もある。そして今のビジネスのその先でさらに面白い事業が展開できる。

入社手続き機能によって、従業員の情報が1番最初に登録され、人事情報が蓄積されていきます。

人事情報の価値は今後上がり続けていきます。なぜなら、日本の労働人口がこの先減少し続ける中で、「人」がもっとも重要な経営資源になっていくからです。「人」の情報を正確に把握できると、経営に関わる価値を提供できるなど、今後の事業発展性が高いと感じて入社に至りました。


-- 楽天と比べて、SmartHRでの働き方はどのように違いますか?

意思決定スピードが違います。楽天も企業規模からすると意思決定スピードはかなり早いのですが、SmartHRは圧倒的に早いです。

意思決定が早いので、実際に施策を実行して市場の反応を見て修正を加える作業をどんどん繰り返しています。意志決定の早さ、量の多さは自分の成長にも繋がっています。

ただし、楽天ほど人やお金などのリソースが潤沢にあるわけではないので、1つの施策が会社に及ぼす影響を考えつつ、意思決定を早くする経験には度胸も鍛えられました(笑)。


-- マッキンゼーでの働き方で今も役立っているところはありますか?

1つは、課題解決力です。事業を成長させていくと解かなければならない課題がたくさん現れます。課題を解く際の考え方や方向性、チームに相談された時のアドバイスの仕方はマッキンゼー時代に数多く経験してきたことが生きています。

もう1つは、マネジメントスタイルです。コンサルでは3ヵ月くらいでプロジェクトが変わり、上司も変わります。そのため、一流のビジネスパーソンのマネジメントを何パターンも学べてて、その中で1番目指したいマネジメントスタイルを自分なりに組み合わせて今も使っています。

-- 楽天での働き方で今も役立っていることについても教えてください。

三木谷浩史という経営者の近くで働けたことは大きな財産になっています。

社長室に配属になり、経営会議などにも出席させてもらって、組織の動かし方や意思決定の仕方、リスクの取り方を間近で見ることができました。変化の激しいIT業界で楽天が大きな規模になっても成長を続けている経営のやり方は、今でも参考になっています。

やりきる力が自分自身を成長させていく

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-- 倉橋さんが働く中で大切にしている価値観、軸を教えてください。

やり切ることですね。
楽天の組織コンセプトに「GET THINGS DONE」とあるように、考え込んだり、口で何か言ったりする前にとにかくやってみて、最後までやり切る感覚はかなり大切なことだと実感しています。これを、SmartHRでは「早いほうがカッコイイ」というバリューで表現されています。

責任感とプロ意識を持って、真剣に考えつつ、全力で行動を起こせば、良い結果が出やすくなることはもちろんですが、何よりも自分の成長に繋がるはずです。

スタートアップは組織の成長が早いので、自分が成長していないと今のポジションに対して力不足になってしまいます。そういう環境の中で常に全力で仕事を完遂するスタイルは自分に合っていますし、楽しいですね。


-- 最後の質問になりますが、どんな方とSmartHRで働きたいですか?

SmartHRでは、高い目標を追いつつも、遊び心を持ってチームで楽しみながら、事業も組織も成長しています。そのような環境で楽しみながら、事業を成長させてくれる方と一緒に働きたいです。

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EVANGE - Director : Kanta Hironaka / Creative Director : Munechika Ishibashi / Assistant Director : Yoshiki Baba / Assistant Writer : Ryosuke Ono / Photographer : Jin Hayato

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