「ポジションや役割よりも、本当に成し遂げたいことを」経営者を目指してきたestie VPoP 久保 拓也 氏がスタートアップでエクセレント・カンパニーを目指すまで

2023-02-09

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*2024年9月30日時点

「産業の真価を、さらに拓く。」をパーパスに掲げ、商業用不動産領域のSaaSプロダクトを展開する株式会社estie(以下、estie)。同社のVP of Productsとして活躍する久保 拓也(Takuya Kubo)氏のキャリア形成の軸に迫ります。

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久保 拓也(Takuya Kubo)
2011年に新卒で株式会社博展に入社し、主に新規開拓営業を担当。その後、2013年に株式会社リクルートキャリア(以下、リクルート)に転職。エンタープライズ向けのメディア営業に携わり部門MVPを獲得するなど活躍したのち、マネージャーとしてSMBマーケットの営業戦略構築に従事。2020年にユアマイスター株式会社に転職し、社長室 兼 VP of Productsとして同社事業とプロダクト全般の戦略立案と実行を担う。その後2022年8月にestieへ参画。現在はVP of Productsとして同社のマルチプロダクト戦略を推進する。

目次

  1. 商業用不動産領域にアプローチするestieの事業内容と久保氏の役割
  2. 経営者になることを決意、ファーストキャリアの方向性
  3. リクルート時代に肌で感じた経営者のスタンス
  4. 企業に引っ張ってもらう形ではなく、自分が主となり動く必要がある環境へ
  5. 自分が成し遂げたいことで選んだestie
  6. 久保さんにとってスタートアップで働く意味とは

商業用不動産領域にアプローチするestieの事業内容と久保氏の役割

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まずはestieの事業内容を教えてください。

estieは「産業の真価を、さらに拓く。」をパーパスに掲げ、商業用不動産、特に企業による価値創造の心臓部であるオフィスのデジタルシフトを推進しいます。

サービスとしては主にオフィス賃貸業務に必要な情報を集約した商業用不動産データ分析基盤「estie pro」と、賃貸オフィスマッチングサービス「estie」を展開しています。

その中で久保さんの役割を教えてください。

VP of Productsとして、複数のプロダクトの推進に関わっています。

estieは、複数のプロダクトを同時並行で作りながら、プロダクト間のシナジーを最大化する「Whole Product構想」を掲げています。オフィス領域のバリューチェーンに存在する多様かつ深淵な課題を解決するプロダクトを新たに生み出すと同時に、オフィス以外の物流施設や商業施設など、複数のアセットタイプに対応できるよう展開を進めるのが私のミッションです。

経営者になることを決意、ファーストキャリアの方向性

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久保さんのキャリア軸に大きな影響を与えた最初の原体験を教えてください。

最初の原体験は父が起業したことです。当時父は50歳でそれまでサラリーマンしか経験がありませんでしたが、大学受験の前日に突然父から「起業する」と連絡があり、思わずその場で声を上げたことを今でも覚えています。

それまで私は経営に興味はなかったのですが、父が起業した会社の従業員や売上の話などを聞くうちに、「将来は私も起業したい」「経営者になりたい」と漠然と思うようになりました。

新卒で入社された博展は歴史ある企業ですよね。一見すると経営者になりたい久保さんのキャリア軸と合致しないようにも感じたのですが、なぜ選ばれたのでしょうか?

当時、大学を卒業してから10年後に経営者になるという目標を立てていました。目標達成に対して逆算したときに「スピード感があり、新しい取り組みに積極的」な環境に身を置くことが必須だと考え、その軸で企業を探していました。

たしかに博展は歴史のある会社です。一方で当時は、第二創業期を迎えており新しい取り組みを次々に進めていました。また、面接で「うちはハードだけど頑張れるか?」と真っすぐに目を見つめられて問われ、他の企業以上にベンチャーマインドを感じたため、入社を決めました。

入社後、主力事業であったプロモーションや展示会の受注獲得のためにテレアポや飛び込み営業を繰り返したり、大手企業のマーケティング責任者を相手に億単位の仕事をして成果を上げた経験は自分の基礎になっており、今振り返っても当時の選択は間違いではなかったと思います。

リクルート時代に肌で感じた経営者のスタンス

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なぜ次の転職先としてリクルートを選ばれたのでしょうか?

短絡的かもしれませんが、経営者になるためにも、より経営者の傍で仕事がしたかったからです。博展では裁量を持って仕事をさせていただきましたが、業界特性もあり、顧客の経営者と直接仕事をする機会はありませんでした。

リクルートはサービスの軸が採用になることから、お客様のカウンターパートも企業の経営層になるケースが多いことに加え、社内に経営人材が揃っている点に魅力を感じました。

実際に入社してみていかがでしたか?

リクルートで事業の責任を担っている方は、本当に経営者そのもので、一緒に働くことで自分自身もそういった方々に近づくきっかけになった時間だったと思います。

その中で特に印象に残っているエピソードを教えていただけますか?

競合にシェアを奪われていたとあるSMB領域(中小企業領域)のサービス立て直しを行ったプロジェクトが印象に残っています。

イメージにあるかと思いますがリクルートには抜擢文化があり、私はそのプロジェクトにアサインされました。それからは、立て直しのために毎週末のように上司と合宿を実施しました。

ひたすらホワイトボードに書きながら、競合分析や営業戦略、プロダクトのバリュープロポジションなどありとあらゆることを分解し、どうすべきか1つ1つ見直しました。短期間のうちにある意味もう1度サービスの価値を問い直すような経験はドラゴンボールにでてくる「精神と時の部屋」のようでもあり、今までのキャリアの中でも上位にあたる濃密な時間で、一緒に仕事をすることでそれまでのいち営業プレーヤーから経営者に近づくことができたのではないかと思います。

久保さんがリクルートで「この人は経営者だ」と感じた方の共通点はありますか?

いい意味で自分が正しいと信じた価値観で判断するということです。リクルートにいる間、幾度となくそういったシーンに出会いました

例えば、なにかを判断する際に、私がどちらかというと「課題解決の合理性」で判断するのに対して、彼らはそういった合理性も踏まえた上で、最後の決断のシーンでは「こうあるべき」という価値観で判断を下していました。その様子を見て「経営とはこういうことなのか」と肌で感じました。

企業に引っ張ってもらう形ではなく、自分が主となり動く必要がある環境へ

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そこまで経営者と思えるような人がいるリクルートからなぜ転職しようと思ったのでしょうか?

リクルートに残ってそういった方々に近づく道も確かにあります。しかし、あくまで上の人から引っ張り上げられるかたちであり、どこまで行っても彼らに追随する存在にしかなれないと感じたため、自分が主となって動ける環境であるスタートアップに行こうと決めました。そして、その中でご縁があったユアマイスター株式会社(以下、ユアマイスター)に転職しました。

ユアマイスターに入社して、いかがでしたか?

新設社長室のリーダーとしてジョインし、最初は新規事業の立ち上げや中期経営計画の構築、資金調達などに携わりました。半年後、セールスやマーケティング主導の経営方針を、プロダクト中心のビジネスモデルに転換すべく、VP of Productsとしてプロダクト開発の強化にも取り組みました。

これまで営業やマーケティング領域が主だったところからプロダクトマネージャーを担うことに違和感はありませんでしたか?

実はリクルートでのSMB領域の立て直しプロジェクトの際に営業プロセス全体の構造を分解し再構築した経験が、プロダクトマネージャーに求められる課題解決の要素と共通点が多く、そこまで違和感はありませんでした。とはいえ、もう1つ必要な要素であるプロダクト・プロトコル、いわゆるシステム開発の知識や経験はなかったので、さすがにそこはキャッチアップが必要でした。

役割が変わることで新しい知識や経験が必要になることはよくあることですが、久保さんはどのようなことを意識してキャッチアップしていったのでしょうか?

開発知識の不足がボトルネックにならないよう、必死に勉強しました。まずは、本を読み漁りながらベース知識と思考フレームを身につけて、新たな知識をインプットできる枠組みを作りました。そして学んだことは即アウトプットするサイクルを繰り返して、知識を頭に定着させていきました。

また、当時のユアマイスターでは、技術顧問として元YahooのCTO・明石信之さん(現・株式会社スタンバイCTO)が参画していました。私がプロダクトマネージャーをやるようになってからの2年間、明石さんと毎週のようにプロダクトディスカッションをさせてもらった経験も大きいです。このディスカッションは、自分自身の至らなさや経験不足を強烈に実感しながら研鑽を積む非常に得難い機会になりました。

ユアマイスターを退職する際、明石さんに「同じように教えても、ものにならない人もいるけど久保は一人前のプロダクトマネージャーになったと思うよ」と声を掛けてもらえたことは、私にとって確かな自信になっています。

セールスサイドからプロダクトサイドまで経験できるというのは、スタートアップならではの体験だと思います。今後もスタートアップで同じように職種をまたぐ人も増えてくると思いますが、そのような人に向けたアドバイスはありますか?

真っ先にやるべきは、プロダクトに関わる人との共通言語を理解することです。自らプロダクトビジョンを掲げ、エンジニアやデザイナーと共に実現するのがプロダクトマネージャーの役割なので、当然言葉が分からないと意思疎通がはかれません。メンバーと同じ方向を向いてものづくりを進めるために、共通言語の理解は重要なポイントだと思います。

自分が成し遂げたいことで選んだestie

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その後、estieへと転職されるわけですが、estieとのご縁をつなぐにあたり、六丸 直樹(フォースタートアップス 専門役員 )が支援させていただきましたが、六丸に対する印象はいかがでしょうか?

六丸さんとは、リクルートからユアマイスターに転職する際に現ココナラCHROの佐藤邦彦さんから紹介されて以来の付き合いで、絶大な信頼を置いています。

絶妙なタイミングで「最近順調ですか?」とご連絡をいただき、こちらが何か話をしたら「こうすべき」と決めつけるのではなく、フラットな目線でアドバイスをいただけます。客観的に自分を見つめ直す健康診断のような機会になっており、非常にありがたいと感じています。

六丸さんへは転職を検討するタイミングで意見を聞きたくて連絡したのですが、そのときにご紹介いただいた企業の1社がestieでした。転職を検討していた当時、私には明確に「取締役」というポジションへのこだわりがあり、最初に紹介された時点ではestieに興味を持つことができませんでした。実はその後も何度かお会いすることを断っていたのですが、普段の自分を長く知っている六丸さんが薦めるならきっと何か理由があると思い、estieの話を聞いてみることにしました。

最初は興味をもてなかったestieに、なぜ面白さを感じるようになったのですか?

魅力に感じたポイントはいくつかありますが、大きく分けるとマーケットと人の側面が大きかったです。

正直にお話しすれば、最初はestieの打ち出すプロダクトが、PMF(プロダクトマーケットフィット)しているのかどうか、そのビジネスモデルに半信半疑な部分もありました。しかし、CEOの平井に話を聞いてみると、マルチプロダクト戦略などの話を含め、estieには大きな市場で影響力を発揮していく野心的な目標と明確な勝ち筋があることを実感しました。

また、平井もそうなのですが選考を通じて会うメンバーがみんな優秀で「estieのパーパスを実現させたい」という熱量の高さを感じられたことがよかったです。選考中に平井と取締役の束原と3人で、ビジネス領域のディスカッションをした時は本当に盛り上がりましたし、白熱した議論で飛び出したアイデアを誰かに渡すのではなく、自ら実行したいという気持ちにどんどんシフトしていきました。

選考の場で一転して、estieへの熱量が高まったのですね。

そうですね。この時、私の転職軸は「ポジションや役割から、成し遂げたいことへ」と大きく変わったタイミングだったと思います。

思い返すと、リクルートから転職するときから「いつか自分自身がリクルートのようなエクセレント・カンパニーを作りたい」という思いを抱いていました。そう考えたときにポジションはエクセレント・カンパニーを作るためのマストな条件じゃない。そう判断し、ひとりのメンバーとしてestieを本気でエクセレント・カンパニーにしていこうと、入社を決めました。

久保さんにとってスタートアップで働く意味とは

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最後に、久保さんにとってスタートアップで働く意義を教えていただけますでしょうか?

不確実性の高さがある分、得られるリターンも大きいのがスタートアップだと捉えています。

手堅くリターンを得たいなら、大企業で一部の領域にフォーカスしたほうが確実だと思います。スタートアップは事業面や収入面などあらゆる面で不確実性が高いですが、だからこそ市場に大きなインパクトを生み出す可能性があり、個人としても様々なことに挑戦が出来ます。そして、その不確実性を乗り越えた結果、最終的には大きなリターンを得るチャンスが広がっていると考えています。

私自身ずっとリクルートにいたら、おそらくプロダクトマネージャーをやることはなかったと思いますし、職域の幅を広げ新たな成長機会を得られることがスタートアップの魅力です。あらゆることを経験し大きなリターンを取りにいくならスタートアップだと私は思います。

EVANGE - Director : Hanako Yasumatsu / Creative Director : Munechika Ishibashi / Writer : Yuko Kondo / Editor:Akinori Tachibana / Photographer : Shihoko Nakaoka
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